2016.06.15

ビジネスの原則に立ち返って日本のスポーツビジネスを変える…元NFL JAPAN代表 町田氏が語る/前編

サッカー総合情報サイト

インタビュー・文/池田敏明
写真/小林浩一

 スポーツ先進国であるアメリカで、最も人気のある競技として知られるアメリカンフットボール。高度な情報分析と複雑な戦術を駆使しながら、高い身体能力を備えた屈強な男たちが戦うアメフトの最高峰NFL。目の肥えたスポーツファンを虜にし、その優勝決定戦であるスーパーボウルは国民の半分がテレビ視聴すると言われるほど注目度が高く、それゆえに放映権料やスポンサー契約料などで莫大な金が動く。

 そんなNFLが、1990年代後半に日本への進出を目指し、オフィスを構えたのを皆さんはご存知だろうか。そのプロジェクトにおいて中心的な役割を担い、日本で設立されたNFL JAPAN Link 代表、そしてNFL JAPAN 株式会社 社長を長年に渡って務めたのが、町田光氏だ。

 町田氏はアメフトはおろか、本格的なスポーツ競技経験はゼロ。スポーツビジネスに関しても全くの門外漢だった。しかしアメフトの日本普及と人気拡大についてしたためたレポートが好評を得て責任者に抜擢され、日本での市場開拓に向けて奔走した。

 そして、その手腕が評価され、現在はJリーグマーケティング委員としても活動している。草創期こそ大ブームを巻き起こしたJリーグだが、近年は観客動員が落ち込み、地上波での放送もほぼなくなるなど、苦闘の中にある。その理由はどこにあるのか。そして、今後どのような方向を目指せばいいのか。日本のスポーツビジネス界の「トリックスター」を自称する町田氏が、その極意を楽しく語る。

こういうことなのか…NFLからすべてを学んだ

――まず、ご自身の経歴を簡単に教えていただけますか?
町田 光 今はスポーツビジネスの世界にいますが、大学では文学部です。太宰治や坂口安吾が好きで文学部に入ったのですが、入学後は日本やフランスの古い映画に目覚め、卒論はある日本の映画作家論を書きました。一方でずっとロックバンドをやっていたので、スポーツとは全く無縁の生活を送っていて、というよりも当時はスポーツというものは、明確に私の「敵」だったんですよ。

――「敵」とはどういうことでしょうか。
町田 光 僕自身、実はもともと足が速くて、中学時代はずっと学年で1番でした。そしてサッカーなども昔からテレビで見てはいたのですが、スポーツ的なもの、もっと言えば体育会系的なもの、スポーツが持っている精神性や文化みたいなものとは対極にいたと思っています。とにかく人と群れるのが好きじゃなかった。「皆で心を一つに」とか言ってるのを見ると「嘘だ!」とか思っていました。盛り上がるっていうのが大嫌いでした。一人でいて、孤独を感じながらあれこれと考えを巡らし、妄想しながら何かを作ったり、壊したりしていく人間だと自分のことを思っていました。

――そんな町田さんが大学卒業後、どのような経緯からスポーツ業界に身を投じることになったのでしょうか。
町田 光 卒業後、就職が嫌で嫌で、仕方なく1社だけ受けた小さな就職情報会社に入って営業や情報誌の企画や編集、そして事業全体の企画などを10年と少しやりました。その後バブル経済が崩壊した92年頃、新規事業を立ち上げる担当者に指名され、今度はテレビの番組企画から、観光地の宣伝広報や集客、地域開発事業などいろいろなことに頭を突っ込んでました。そんな中95年の秋頃社長から「アメリカンフットボールを日本で流行らせたいと言っている人がいる。アイデアをほしがっているから、研究しろ」と、いきなり言われたんです。社長には「いや、僕がスポーツ好きじゃないの知っているでしょ? アメフトなんて見たことないですよ」って言ったのですが、業務命令なのでやらざるを得ませんでした。

――当時、アメフトに対してどのようなイメージを持たれていたのですか?
町田 光 体の大きな選手たちがガンガンぶつかり合うというのは知っていましたが、1チーム何人でプレーするのかも知らなかったですし、頻繁にプレーが止まったり、そのたびに作戦を立てたりといったことは想像もしていなかったです。

――それで、どのように調査したのでしょうか。
町田 光 大学の図書館に行って本を読んだり、新聞やテレビのスポーツ担当者やアメフトをやっている人や好きな人にいろいろと話を聞いたりしたうえで、自分の考えをまとめてレポートにしました。「あいまいさを大切にする日本の文化と徹底した合理主義のアメフトの文化は本質的に真逆だから、アメフトは日本では人気は出ない」という内容です。すると1カ月半後ぐらいに社長から「ではどうすれば日本でアメフトを流行らせることができるのか、レポート書いてよ」と言われて(笑)。もう一度、いろいろな人に話を聞いたり、本を読んだりして、そこに自分の中に少しづつ出来てきた「スポーツってこうなんじゃないかな」という考え方を注ぎ込んでまとめたものを提出したら、年明けに「お前に会いたいという人がアメリカから来る」と。「実はNFLが日本にオフィスをオープンしてビジネス展開を行うことになって、そのエージェントになれる会社を探している。電通と博報堂とウチの3社でコンペだ」と言われ、(勝てるわけないじゃん)と思いました(笑)。僕は英語もできないし、外国で暮らしたこともない。スポーツビジネスなんてやったこともないし、アメフト自体も知らない。「無理ですよ」と言ったのですが、「いや、町田君のレポートがすごく好評価なんだよ」と。

――そして実際にNFLの関係者が来日したのですね?
町田 光 96年の3月に5人ぐらい来ました。朝9時から夜8時まで11時間ぐらい、食事中も含めてずっとミーティング兼面接ですよ。通訳入れて。そして、結果的に僕の企画が採用されました。それがスポーツの世界に入るきっかけです。

――そうは言っても、全くの未経験で運営に携わることなどできるものなのでしょうか。
町田 光 確かに運営は僕一人ではできないし、ウチの会社にもノウハウはなかった。どうするのかと社長に聞いたら、僕の作ったプランを、電通をパートナーにして運営する、ということになったんです。そして96年4月に準備室を開き、僕がいた会社から僕が専任になり、電通からも担当を1人迎え入れ、他に新規で4人を採用してNFL JAPAN LinkというNFLの代理オフィスをスタートさせました。いろいろ実績もできてきた4年後、NFLが僕らの活動を認めてくれて、2001年にNFLの資本でNFL JAPAN 株式会社が設立されました。僕はNFL JAPAN Linkの時も代表だったんですけど、NFL JAPANでは社長に就任し、12年9月まで、結局16年間もNFLやっていました。

――NFLには、日本でもビジネスを拡大できるという勝算があったのですね?
町田 光 そうですね。NFLって日本でも一定数のコアなファンがいるんですよ。年齢層が高めでアメリカへの関心があり、いろいろなスポーツを見てきた方にとって、最も面白いスポーツがアメフトだと。戦略性が高く、パワー、スピード、技術のいずれにおいても、あらゆるスポーツの要素を極限まで高めていると言われているので、目の肥えたファンがいらっしゃった。NFLが働きかけをしなくても、ある程度の顧客がいたわけです。また、当時は2年に1度、日本でプレシーズンゲームをやっていたので、テレビ放映権やスポンサー獲得など、ビジネスになる可能性もありました。そこにNFLが乗り込んで、主体性を持って日本の人々にNFLの魅力と素晴らしさを伝えるために、オフィスと人材を確保した。これはビジネスで言うところの「顧客を創造する」ということなんですよ。アメリカで徹底的に実践していたことを日本でもやることにした。僕はスポーツビジネスは全くの専門外だったけど、NFLのやることや、私へ指示することを見ていて「ああ、こういうことなんだな、普通のビジネスと基本同じだ」と思いました。

――12年9月までNFL JAPANの社長としてご活躍されたということですが、現在はどのような活動をされているのでしょうか。
町田 光 04年頃にJリーグのGM講座に講師として呼ばれて以来Jリーグと繋がりができ、そのGM講座がきっかけで立命館大学と早稲田大学で講師、14年からはJリーグのマーケティング委員も務めています。また、昨年から、Jクラブの改革コンサルタントとして特にマーケティング面の改革を担当しています。またスポーツブランディングジャパンという企業のシニア・ディレクターとして、海外スポーツや日本のメディアなどとのビジネス開発のお手伝いを行っています。アメフトに関して言えば、小学校の学習指導要領にも載っている「フラッグフットボール」という、アメフトを簡略化させたスポーツの協会を設立し、専務理事として活動を行っています。

――Jリーグマーケティング委員とは、具体的にどのような活動をしているのでしょうか。
町田 光 発足したのは2年前で、Jリーグのマーケティング全般にかかわる外部のアドバイザーです。Jリーグは近年ファンの固定化や高年齢化が進み、全体的に観客動員数が落ち込んでいて、それは収入の伸び悩みに直結しています。そんな状況を打破するにはどうすべきか、どうすればJリーグのファンを増やし、マーケティングを機能させられるか、といったことを総合的に話し合っています。マーケティング委員会はJリーグの事業部を中心にメンバーが構成され、他にチームの代表や、私のような外部のメンバーが数人加わって活動しています。

新たなスポーツの顧客の登場…元NFL JAPAN代表 町田氏が見る日本のスポーツビジネスの可能性/中編
日本のスポーツビジネスの新たな可能性がすぐそこに有る…元NFL JAPAN代表 町田氏がその可能性を見極める/後編

スポーツブランディングジャパン株式会社
シニア・ディレクター
町田光

大学卒業後、就職情報会社勤務を経て、1996年より16年間に渡り北米のプロアメリカンフットボール・リーグであるNFLの日本支社、「NFL JAPAN」の代表取締役を務める。
現在はNFL JAPAN リエゾンオフィスのシニア・アドバイザーの他、(公財)日本フラッグフットボール協会の専務理事、早稲田大学非常勤講師、早稲田大学スポーツナレッジ研究所招聘研究員、Jリーグマーケティング委員、笹川スポーツ財団企業スポーツ研究会座長の座長を務めるなど、経営学だけでなく、社会学・哲学的観点からスポーツと社会の関わりを研究している。

※著書・共著
・Jリーグの挑戦とNFLの軌跡 スポーツ文化の創造とブランド・マネジメント  ベースボールマガジン社
・企業スポーツの現状と展望  笹川スポーツ財団(編)
・スポーツリテラシー  早稲田大学スポーツナレッジ研究所(編)
・ファン・マネジメント  早稲田大学スポーツナレッジ研究所(編)

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