2016.04.28

首都東京で舵を取る―FC東京社長が描く未来予想図/後編「育成、U-23、専用スタジアム…『2020 VISION』の具体策とは?」

サッカー総合情報サイト

 クラブの前身である東京ガスサッカー部でキャプテンとして中盤の底に君臨した“ガネさん”は今、首都をホームタウンとするFC東京の代表取締役社長としてクラブを率いている。ポルトガル語で“舵取り”を意味するボランチを主戦場とした現役時代から一変、ユニフォームをスーツに着替え、今度は経営者としてクラブの操舵を担っているというわけだ。

 アマチュア選手として戦い、プロサッカークラブの社長となるまでには、果たしてどんな経緯があったのか。そして彼は何を考え、今後いかなる方向性を打ち出していこうとしているのか。

 大金直樹社長が最大のポイントに挙げたのは「育成」の二文字。彼の言葉から、首都をホームタウンとするFC東京が抱く壮大なビジョン、そして新たな取り組みを追った。

インタビュー・文=青山知雄
写真=兼子愼一郎

――大金さんを中心にクラブが大きな方向性を打ち出していく中で、今年は2012年に掲げた『2015 VISION』の発展形として、『2020 VISION』を発表しました。

大金 2011シーズンにJ2を経験し、「原点に立ち戻ろう」と考えたのが、翌2012シーズン開幕前に発表した『2015 VISION』でした。そして今回の『2020 VISION』は、クラブがようやくスタートラインに立った状況にあると捉え、2020年に行われる東京オリンピックに向けて開催都市のプロサッカークラブとして、そして日本の首都クラブとして、もっと輝かなければと考えたわけです。

――『2015 VISION』と『2020 VISION』を比較すると、目標のスケールがすごく大きくなった印象があります。それはクラブが再び右肩上がりになって、もう一度しっかりと歩み始めた証なのでしょうか。

大金 おっしゃるとおりです。クラブとしての数字、考えているスケールも確実に大きくなってきました。マーケットも今までは何となく“東京”というエリアを中心にやってきましたが、現在はアジアや世界を意識するようになってきましたし、ドメインは広がっているとも思っています。

――その『2020 VISION』で一番強調した部分はどこですか?

大金 一つはやっぱり育成ですね。もちろんトップチームの強化も大切ですが、一番最初に掲げたのは育成でした。ただ、やはりトップチームの結果……優勝なくしてはそんなことも語れません。2020年にクラブとしてしっかり輝くという点ではトップチームの成績も非常に大切です。この二つは平行して継続強化していかなければならないと考えています。

――育成を一番に持ってきた理由は、やはり未来、将来を大事にしたということなのでしょうか。

大金 そうですね。やはり今後のサイクルを考えた時に、これから何年も発展的、継続的にやっていかなければいけない中で、現在の日本経済やアジア圏において収益が10倍、20倍になることは非常に難しい。アジアや世界と戦っていくために現実的なものを突き詰めた時に、育成の重要性を掲げるという結論に至りました。

――ピッチ内に目を向けると、アカデミーから育成と、トップチームにおける育成の双方があります。新しく取り組んだことはありますか?

大金 やはりU─23の明治安田生命J3リーグ参戦は大きいと思います。ここで見据えているのは、単なるトップチームの強化ではありません。U─23が存在することで、その下にあるU─18、U─15、そしてジュニア年代のボトムを上げていくことにつながると考えています。

――U─23から下の年代への具体的にリンクについて聞かせてください。

大金 U─23はトップチームの選手だけで構成するのではなく、ユース年代も積極的に起用しています。今まで高円宮杯プレミアリーグで同年代と戦っていたFC東京U─18の選手が、J3というプロリーグを経験することで大きく成長することを期待していますし、実際にそういう舞台で戦わなければならない。その結果、U─18としては今までのメンバーが抜けるわけです。そこで他の選手には奮起、成長が求められます。そういった意味で、U─18の選手にボトムアップしなければならないというプレッシャーを与えています。

――どんどん上を目指すようになると。

大金 育成のスピード、サイクルを上げていくということですね。高校1年生になったから高円宮杯プレミアリーグに出ると考えるのではなく、J3で戦っていく可能性も出てくるというわけです。U─18が飛び級でプロリーグに臨むことで、U─15年代も同様にU─18でプレーすることが出てきます。

――具体名を挙げてしまうと、FCバルセロナのカンテラ(下部組織)に在籍していた久保建英くんが、中学3年生ながらFC東京U─15むさしからの飛び級でFC東京U─18に登録されています。そう考えると、彼にもJ3リーグ出場の可能性が……。

大金 あるということです。あと、昨年までは学校制度に基づいて6─3─3の年齢別にチームを編成していましたが、これをより実力別にしていくことができます。中学生でも実力的に上のレベルであれば、久保のようにジュニアユース年代でもU─18チームでプレーしますし、高校生もU─23チームで戦うということです。それが世界のスタンダードだと。FC東京がすごいことをやっているわけではなく、世界の流れに基づいた組織再編だと考えています。私もイタリアやブラジルなどでいろいろと視察させていただきましたが、育成年代において厳しい環境でやっていくことの大切さをすごく感じさせられました。

――もちろんトップチームの成績も求めていくことになります。

大金 ヤマザキナビスコカップと天皇杯は手にしていますが、まだリーグ戦では頂点に立てていないので、まずはJリーグの優勝シャーレを掲げたいですね。

――今後、社長として新しくチャレンジしていこうと考えていることはありますか?

大金 やはり一つはスタジアムに関してですね。なかなか単体のクラブとして一つのスタジアムを作ることは難しいですが、昨今は日本中でサッカー専用スタジアムの建設が進んでいます。ただ、東京には残念ながらJ1で本拠地にできる専用スタジアムがない。私たちには味の素スタジアムという素晴らしいホームスタジアムがありますけれど、やはりサッカー専用ではないことは気になっています。サッカーの素晴らしさをより伝えるため、感じていただくために専用スタジアムを本拠地とすることが一つのビジョンであり、大きな夢です。

――具体的な動きはあるんでしょうか。

大金 まずは関係各所とコミュニケーションを取りながら、働きかけていく段階ですね。一部メディアで「東京都内にサッカー専用スタジアム建設」という報道がありましたが、それが実現したら最高の立地だと思います。専用スタジアムが大阪に完成して、北九州では完成間近で、広島や京都なども建設へ動いている中で、私たちとしては「首都・東京にも世界に誇る専用スタジアムがあるべきでは」と働き掛けていきたいと思っています。まだ構想前の夢物語ではありますが、言葉として発信していかなければ近づいていきませんからね。そういった意味も込めて、初めて「専用スタジアム」という言葉を使いました。

――その他に『2020 VISION』の中で強調したことは?

大金 今回、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の優勝を目標の一つにしましたが、実際にアジアで戦っていくためには、もう少しクラブとしてレベルアップすることが必要になります。収益面で考えると、もっと入場料収入を上げていかなければ、目標には到底追いつかない。どれだけ多くの方にスタジアムへ足を運んでいただけるかがポイントになってきます。

――平均入場者数で言うと、昨シーズンは横浜F・マリノスを抜き、浦和レッズに次いでJ1で2番目の数字でした。

大金 2万8784人はクラブ史上最多でしたが、トップの浦和は3万8745人。この乖離は非常に大きいです。やりがいがある数字ではありますが、まずは3万人を超えることが目標ですね。

――そのための取り組みとして、具体的にはどんなものを考えていますか? チーム強化はもちろんだと思いますが、試合以外の部分も含めてのイメージを教えてください。

大金 もちろんチームの勝利は大切です。ただし、経営や収益の仕組みとして成績を要因にしてしまうと事業計画が成り立ちません。今は徐々に来場者の平均年齢が上がってきているので、東京という土地柄を考えて、今シーズンからは若年層にスタジアムへ来てもらうためのアプローチを始めています。

――手応えはいかがですか?

大金 正直、なかなか厳しいですね。やはりFC東京への認知度がまだまだ低いので、まずはそこからだと思います。東京にはサッカー以外の娯楽や楽しみ、レジャーがたくさんあるので、それを超えるような魅力を打ち出していかなければいけない。昨シーズンは“武藤嘉紀”というコンテンツがあったので、そういった意味での誘導はできましたが、今後は彼に代わるようなものを作っていかなければいけないですし、知ってもらうための情報発信をもっとやっていかなければとも思っています。

――確かにクラブとして徐々に新しいものを取り入れようとしているようには感じます。

大金 そうですね。広報を中心にSNSを使った告知などは強化しています。Instagramもそうですが、私たちの年代では浮かばないような発想を若いスタッフが生み出してくれているのは、非常にいいことだと思います。広告の打ち方も変えましたし、費用対効果があるなら企業として積極的に実施していくべきだと考えました。東京にはこれだけの人口がいるので、やはり情報発信が重要になります。地方ではなく東京で効果がある方法、“東京らしい”プロモーションのあり方を探っていければと思っています。

――最後に大金さんの大きな夢を教えてください。

大金 今はやっぱりACLで優勝することですね。欲を言えば、そこにアカデミー出身選手が半分くらい名を連ねてほしい。そしていつの日か、サッカー専用スタジアムで優勝したい。そこでファン・サポーターの皆さんと喜びを分かちあうことが一番の夢です。

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東京フットボールクラブ株式会社 
代表取締役社長 大金 直樹(おおがね なおき)

1966年 12月13日生
1989年 筑波大学卒業
1989年 4月 東京ガスへ入社。同社サッカー部へ入部。
1995年 現役を引退。
2011年 東京フットボールクラブ株式会社 常務取締役 就任
2015年  同   代表取締役社長 就任

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