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2013年注目のコロンビア代表、黄金時代の幕開け

2013.01.10

ワールドサッカーキング 0117号 掲載]

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1月4日発売のワールドサッカーキング最新号では、2013年のサッカー界を動かす最重要100選手をカウントダウン形式で紹介している。更に、番外編として2013年注目の代表チームに迫ったリポートも掲載。

1990年代、天才司令塔カルロス・バルデラマを擁して魅力溢れるサッカーを体現したコロンビア。94年ワールドカップ以降は低迷が続き、表舞台から姿を消していたが、ラダメル・ファルカオを中心に再び、黄金期を迎えようとしている。

 

文=ヘラルド・ロハスText by Geraldo ROJAS

翻訳=池田敏明 Translation by Toshiaki IKEDA


写真=アフロ Photo by AFLO

 

天才バルデラマを中心に躍進を遂げる

 

 南米大陸における弱小国の一つだったコロンビアが最初に躍進を果たしたのは、1980年代のことだ。その輝きは1人の天才ゲームメーカーによってもたらされた。金髪のカーリーヘアに口ひげという独特のルックス、走るスピードは平均的だが、ボールコントロール能力は驚くほど高く、優れたプレービジョンを生かして絶妙なスルーパスを連発する。コロンビアサッカー界史上最高の英雄、カルロス・バルデラマである。激しいチャージを受けてもバランスを崩すことなくボールをキープし、右足のインサイドでボールを蹴り出すと、その先のスペースには必ずと言っていいほど味方選手が走り込んでいる。すべてのチャンスがバルデラマから創出されると言っても過言ではなかった。

 

 バルデラマを擁するコロンビアは1987年のコパ・アメリカで3位入賞を果たすと、90年には28年ぶりにワールドカップに出場。イタリアで行われた本大会ではグループリーグ突破の好成績を残した。更に、続く94年アメリカW杯に向けて、バルデラマに加えてファウスティーノ・アスプリージャ、フレディ・リンコンといったタレントが台頭。南米予選では敵地でアルゼンチンに5-0の大勝を飾るなど、まさに絶頂期を迎えようとしていた。

 

94年W杯の悲劇を機に長い低迷期に突入

 

 しかし、本大会ではルーマニア、アメリカに連敗を喫してまさかのグループリーグ敗退となり、アメリカ戦でオウンゴールを献上したアンドレス・エスコバルが帰国後に銃殺されるという悲劇も経験。ここからコロンビアは長い低迷期に突入することとなる。

 

 低迷の原因はいくつか考えられる。エスコバルの例、そして2001年のコパ・アメリカでアルゼンチンと招待国のカナダが治安への不安を理由に出場を辞退したことからも分かるように、コロンビアは南米の中でも特に治安の悪い国として知られている。スタジアム内外での暴力事件、麻薬ビジネスの関与疑惑など、サッカー界もその影響とは無関係ではいられなかった。また、国内リーグの人気も低く、例えば04年のコパ・リベルタドーレスで優勝したオンセ・カルダスも、優勝の翌年以降は集客に苦しんでいる。コンテンツとしての魅力がなくなれば各クラブの収入は減少し、緊縮財政を余儀なくされる。ユース年代の国際大会ではそれなりの結果を残し続けているとはいえ、受け皿となるトップチームがこれでは成長にも限界がある。

 

 代表レベルで言えば、《バルデラマの後継者》の幻影に付きまとわれた点も大きかった。アルゼンチン国民が今なお《ディエゴ・マラドーナの後継者》を待ち望んでルデラマと10番の重圧をはねのけることはできず、絶対的な地位を築くことはできなかった。

 

 GKにオスカル・コルドバやファリド・モンドラゴン、DFにイバン・コルドバ、マリオ・イェペス、ルイス・ペレアなど、守備陣にはワールドクラスの実力を備え、ヨーロッパのビッグクラブでレギュラーを張る選手が現れたものの、バルデラマの後継者となるべき司令塔、そしてエースストライカーなど、攻撃陣にはそれに匹敵するレベルの選手がなかなか出現しなかった。国民はバルデラマ時代のような華麗なパスサッカーを望むが、現実的には堅守速攻スタイルに頼るしかない。そんなジレンマに陥り、コロンビアはW杯の南米予選やコパ・アメリカでは得点力不足に陥る。結果が出ないことで代表監督が頻繁に代われば、新たなチームを一から作り直さなければならない。メンバー構成は安定せず、主力と指揮官の確執が伝えられ……。負のスパイラルに陥った結果、02年日韓W杯、06年ドイツW杯の南米予選はともに6位、2010年南アフリカW杯予選は7位と、結果を残せない日々が続いた。

 

ペケルマンの就任が復調の転機となる

 

 2011年10月にスタートした2014年ブラジルW杯予選でも、初戦でボリビアとのアウェーゲームを制したまではよかったが、11月に成長著しいベネズエラに引き分け、アルゼンチンに敗北を喫する。コロンビアサッカー連盟はレオネル・アルバレス監督をわずか4カ月足らずで解任。低迷は続くと思われた。

 

 転機が訪れたのは2012年に入ってからだ。サッカー連盟はそれまでコロンビア人指揮官にこだわってきたが、再建をアルゼンチン人のホセ・ネストル・ペケルマンに託した。アルゼンチンの年代別代表でフアン・ロマン・リケルメやパブロ・アイマールらを育て上げた名将は、2月のメキシコとの親善試合でいきなり2-0の勝利に導くと、6月から10月に掛けて行われたW杯予選5試合を4勝1敗という好成績で乗り切ったのである。敗北を喫したのは高地キトでのエクアドル戦で、ここはブラジルやアルゼンチンでも苦戦を強いられる《難攻不落の砦》だけに、あまり参考にはならない。特筆すべきは2011年のコパ・アメリカを制したウルグアイに2-0、そして実力者をそろえ今予選のダークホースと目されていたチリに3-1の逆転勝利を飾ったことだ。

 

 ペケルマンはこれまでのところ、ピッチを縦横無尽に切り裂くロングレンジのパスを駆使し、一気に相手ゴールへと迫るスタイルを採用している。中盤でリズミカルにショートパスをつなぐコロンビア伝統の戦い方を期待していたファンからは批判の声も出ているが、ペケルマンは選手の特徴に合った戦術で戦うことに長けた指揮官。現在のコロンビアにとってはダイレクトサッカーが最適だと判断したのだろう。そして、その戦術を有効たらしめているのが、ようやく現れた攻撃のタレント、ラダメル・ファルカオとハメス・ロドリゲスだ。

ファルカオの成長と待望の司令塔が台頭

 

 ファルカオはリベル・プレートでのデビュー当初から万能型のアタッカーとして評価を得ていたが、ヨーロッパ上陸後にゴールゲッターとしての資質を大きく開花させ、今ではリオネル・メッシ、クリスチアーノ・ロナウドに匹敵する点取り屋として確固たる地位を築いている。今予選でも5ゴールを挙げており、得点力不足の解消に大きな貢献を果たしている。そしてJ・ロドリゲスは力強いドリブルや鋭いスルーパスで攻撃陣をリード。自らの得点力も高く、チリ戦では絶妙なFKも決めている。彼が背負っているのは10番。そう、待望の《バルデラマの後継者》がついに現れたのだ。ポジションはトップ下ではなくサイド、プレーのリズムも先人に比べるとかなりアップテンポだが、現代サッカーにマッチした次世代タイプの司令塔と言える選手であり、バルデラマ本人も直々に「私の後継者はJ・ロドリゲスだ」と断言している。

 

 ファルカオとJ・ロドリゲスが中軸を担い、ジェペスやペレア、テオフィロ・グティエレス、フアン・ギジェルモ・クアドラードといった実力者たちがその脇を固める。これはバルデラマを中心とした90年代の黄金時代と似たような状況と言える。また、ペケルマンはペスカーラ所属の19歳フアン・フェルナンド・キンテーロを常時招集するなど若い選手にも門戸を開き、将来に向けた構想を固めている。南米予選では現在、アルゼンチン、エクアドルに次いで3位。このままの調子を維持することができれば、ブラジルW杯への出場は確実だ。

 

 長きにわたる低迷を乗り越え、名将の下で新たなスタイルを身につけ、第二期の黄金時代が幕を開けようとしている。2013年、コロンビアの《逆襲》が始まる。

 

 

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