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「内田篤人を参考に」…FC東京加入の室屋成「6番が似合う選手になる」

2016.03.02

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インタビュー=安田勇斗 写真=平柳麻衣(2枚目)、Getty Images(3枚目)

 左足ジョーンズ骨折により長期離脱――。明治大学からFC東京に加入後すぐに直面したアクシデントだった。リオデジャネイロ・オリンピックのアジア最終予選で、右サイドバックの室屋成は旭日昇天の活躍を見せた。果敢に攻めあがるプレーの勢いそのままに評価も急上昇。今回のインタビューは決意を固めて臨んだ、加入発表会見の場で行ったものだ。もちろん、ここで引きさがる男ではない。再びピッチへ、そしてブラジルの地であのオーバーラップを。多くのサッカーファンが早期復帰を待ち望んでいる。

FC東京に行きたい気持ちがずっとあった

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――改めてFC東京加入の経緯を教えてください。いつからクラブとコンタクトを取るようになったんですか?
室屋 最初に声をかけてもらったのは大学1年の6月ぐらいで、キャンプに参加させていただきました。ちょうどサッカー部が1週間ぐらいオフで、タイミングも良かったですね。まだ1年生だったので声をかけてもらってビックリしましたし、周りも結構驚いてました。

――それからはクラブとどう関わってきたのでしょうか?
室屋 去年の4月に特別指定(JFA・Jリーグ特別指定選手)になるまで練習などには参加していなかったんですけど、クラブとは連絡は取っていて「来てほしい」と言ってもらっていました。

――特別指定はどういう流れで?
室屋 自分自身、プロクラブでトレーニングする、試合に出場するという想いを強く持っている中で、去年、特別指定のお話をいただきました。学校があるので契約までは考えていなかったですけど、Jリーグクラブの練習を経験すればもっと成長できると思ったので参加させていただきました。

――しかし昨シーズンは出場機会を得ることができませんでした。
室屋 悔しかったですし、明治に復帰してからもFC東京に戻ってポジションを奪いたいと思っていました。

――その後FC東京からはどういう形でオファーが届いたのでしょうか?
室屋 スカウトの浅利悟さんが大学の試合を毎回見に来て、気にかけてくださり、12月上旬に正式なオファーをいただきました。特別指定の時から「契約したい」と言っていただき、自分の頭の中にもFC東京に行きたい気持ちがずっとあったので、すぐに明治大の栗田(大輔)監督に相談しました。

――進路について、他に相談した方はいましたか?
室屋 青森山田の黒田剛監督とはたくさん話をしました。自分にとってどういうチームが一番いいかとか。いろいろなアドバイスをもらいましたけど、最後は自分の決断を尊重していただきました。あとU-23日本代表で一緒だった選手たちとも結構話しましたね。FC東京でチームメートになる(中島)翔哉とか、喜田(拓也/横浜F・マリノス)とか。

――ちなみにオファーはいくつ届いていたのでしょうか?
室屋 3つです。たださっき言ったとおり、自分はFC東京に行きたいと思っていましたし、これまでもそうなんですけど自分の直感を信じて、深くは考えずにFC東京に決めました。

――青森山田高校時代には、清水エスパルスからオファーがあったそうですね。その状況下でも直感で明治大への進学を決めたのでしょうか?
室屋 そうですね。あの時はまだプロでやれる自信がなかったので。数ある大学の中で明治を選んだのもほぼ直感です。一つ上で青森山田から明治に行った差波優人選手(ベガルタ仙台)から「めっちゃ楽だよ」って聞いて、じゃあ明治にしようって(笑)。でも実際はすごく厳しくて、サッカー部内の仕事も多くて完全にだまされましたね。1年生の時は、仕事のミスなどの連帯責任で3回も坊主になりましたし。去年最後の「4年生を送る会」では、さっしー(差波)に「あの時はだまされた」と言いました(苦笑)。

――(笑)。その明治大ではどんなことを経験して、どんな点で成長できましたか?
室屋 部内の上下関係や仕事など、プロでは経験できない厳しさを学ぶことができましたし、社会勉強もできて人間的に成長したと思います。プレーの面では、求められることが本当に多くていい経験ができたかなと。攻撃、守備、チームの統率、すべて要求されていたので。中心選手として見てもらい、全体的なことを任せてもらったのは大きかったと思います。

――サイドバックがチームの中心というチームはあまりないと思います。
室屋 どんな形で失点しても、自分が怒られていたので(苦笑)。すべて任せてもらっていたという感覚がありますし、この年齢で重要な役割を経験できて良かったです。

――背番号は6に決まりました。
室屋 リオ五輪のアジア予選の後に、浅利さんからその話をもらいました。「自分でいいんですか?」と聞き返しましたけど(笑)、「いいよ」って言ってもらって。高3の時にもつけていた番号なので愛着もありますね。

――FC東京の6番は今野泰幸選手(ガンバ大阪)や太田宏介選手(フィテッセ)が背負った番号です。
室屋 サポーターの方々もその2人のイメージを持っていると思いますけど、僕も6番が似合う選手になりたいですし、2人を超えるような選手になりたいと思っています。

――太田選手はサイドは違いますが同じサイドバックです。
室屋 特別指定の時にお話させていただいたり、すごく良くしてもらいました。僕とタイプが違うクロッサーで、練習後の自主トレで蹴り方を教えてもらったりしました。

――具体的には?
室屋 クロスを上げる時に当てる部分とか、腰のひねり方とか。腰はそこまで意識していなかったので本当に勉強になりました。宏介君に言われた「体全体でボールを蹴る感じ」をイメージしながら、今も練習していますけどなかなかうまくいかないですね(苦笑)。

もっとできた気持ちが大きい

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――1月後半は、U-23日本代表の一員としてリオデジャネイロ・オリンピックのアジア最終予選を戦いました。振り返っていかがですか?
室屋 すごく多くの方に評価していただきましたけど、個人的には納得のいく試合はそれほどありませんでした。準々決勝のイラン戦の(豊川雄太/ファジアーノ岡山への)アシスト以外、いい場面もほとんどなくて、もっとできたなと思いますし、課題の方が多く残った大会でした。

――攻撃面だけでなく、守備面でも素晴らしいインターセプトなどで存在感を示していたと思います。
室屋 もちろん通用したところ、力を発揮できたところはあったんですけど、もっとできた気持ちが大きいですし、細かいミスもたくさんあったので、自分自身ではまだまだかなと思っています。

――細かいミスとは?
室屋 ボールを前に出せるところで下げてしまったり、もっとゲームをコントロールできたというか、自分からもっと攻撃のスイッチを入れられたかなと。ほとんど点に絡めなかったですし。

――手倉森誠監督からはどういう指示を受けていたのでしょうか?
室屋 守備の部分で指示を受けることが多かったです。自分のマッチアップする相手に好きなようにやらせないこと。特に中東は、サイドハーフを起点とするチームが多かったので、そこをしっかり抑えてくれと言われていました。

――攻撃参加も数多く見られました。
室屋 プラスアルファでアピールしたい想いもあったので。自分の特徴は攻撃参加なので、そこを出せないとピッチにいる意味がないなと。ある程度、攻撃に絡めたところは良かったと思います。

――勝ち進むにつれて、「チームの仲の良さ」が話題になりました。そういった部分は感じていましたか?
室屋 大会前は「雰囲気が良くない」とよく書かれていたんです。声が出てないとか、活気がないとか。それが大会が始まってからは「雰囲気がいい」と言われるようになって(苦笑)。自分たちは何かを変えたわけではないので、どこが良いのか、良くなったのか、あまり実感はないですね。確かに仲は良かったですし、誰が出てもチームが勝つためにプレーできる、同じ目標を目指せる23人がそろっていたと思います。

――仲がいいと感じられるエピソードはありますか?
室屋 一番年上の代が(遠藤)航君(浦和レッズ)と、(松原)健君(アルビレックス新潟)、(大島)僚太君(川崎フロンターレ)、櫛引君(政敏/鹿島アントラーズ)で、一番下が19歳の(井手口)陽介(ガンバ大阪)と、(三竿)健斗(鹿島)なんですけど、上下関係が全くなくて、タメ口で話すぐらいみんな仲が良かったですね。

――個人的に仲がいいのは?
室屋 同じ関西人の(南野)拓実(ザルツブルク)とか、岩波(拓也/ヴィッセル神戸)とか、あと鈴木武蔵(アルビレックス新潟)とかですね。

――予選の間、ホテルではどう過ごしていたのでしょうか?
室屋 亀川(諒史)君(アビスパ福岡)と同部屋で、みんながその部屋に来て荒らされてました(笑)。(ニンテンドー)DSの『ボンバーマン』をやったり、DVDを見たり、雑誌を読んだり。結構リラックスして過ごせました。

――大会中には南野選手とゼッセル熊取FCでチームメートだったことがクローズアップされていました。小学校以降も連絡を取り合っていたのですか?
室屋 昔からずっと仲が良くて、ちょいちょい連絡を取り合っていました。

――南野選手は海外でプレーしていますが、変化などは感じますか?
室屋 少し落ち着いた感じがしますね。それと、たくましくなったと思います。

――サイドバックとして参考にしている選手はいますか?
室屋 内田(篤人)選手(シャルケ)ですね。あの人はヤバい(笑)。高校時代からずっと映像を見て参考にしています。あと海外だったら(フィリップ)ラーム(バイエルン)とダニエウ・アウヴェス(バルセロナ)が好きです。

――運動量とアグレッシブさが持ち味の室屋選手と、内田選手、ラームではややタイプが違うような気がします。
室屋 確かに自分は結構高い位置に行くことが多いですけど、それはリスクを背負っている部分が大きいと思うんです。サイドバックなのでずっと前にいればいいわけではないし、上がるタイミングが重要で、内田選手とラームはそのバランスがすごくいいなと。ダニエウ・アウヴェスは主に攻撃面ですね。でも、守備で飛びこむところや、相手に付いていく動きもうまいと思います。

――攻撃面で言えば、昨年12月のインカレ準決勝関西学院大学戦では、ペナルティーエリア内に進入して左足で見事なシュートを決めました
室屋 あれは狙いどおりです。ああいう抜けだし方は結構得意で、あの時は切り返して左足で決めましたけど、ゴール前では相手の動きを見てシュートへの持っていき方を変えます。

――守備での一対一も特長ですが、今まで止めるのが難しかった選手はいますか?
室屋 絶対無理だと思った選手はいないですけど、全日本大学選抜の時に京都サンガ(F.C.)と練習試合をして、山瀬功治選手に股を抜かれたのはよく覚えています。自分の間合いでやられたので忘れられないですね。

――いよいよJリーグの舞台に乗りこみます。最後に今後への意気込みをお願いします。
室屋 FC東京では同じサイドバックの駒野(友一)選手、徳永(悠平)選手から多くのことを学んで成長できればと思っています。夏にはリオ五輪もあるので、試合に出て、監督にアピールして、チームの目標であるメダル獲得を目指してがんばりたいと思います。

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