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バルセロナの強さの秘密を解き明かす超戦術論 第2回「中央を取りにいく“鳥かご”」

2011.12.10
 ペップ・グアルディオラ率いるバルセロナの戦術については、すでに語り尽くされた感がある。 しかし、本当にそうだろうか? 「ポゼッション重視」、「流動的にポジションを入れ替える」、「ショートパスをつなぐ」、「人もボールも動く」は、ペップ・バルサの戦術を表面上でとらえ 分かりやすく説明するためのキャッチコピーに過ぎない。練習や試合で見られる特徴的な動きから ペップ・バルサの“真の戦術”を読み解くことで、新しいバルサのスタイルが見えてくる。(第2回/全9回)

 バルサのポゼッションについて語られる際、トライアングルの位置関係がキーワードとされることが多い。だが、バルサの真の脅威というのは「四角形の中心にパスを挿し込む」ことにある。そのためには、誰かがそのポジションを取ることが必要となってくるが、その役を担うのはメッシ、イニエスタであり、最近ではチャビらもそうだ。彼らは、常に四角形の中心を探してポジショニングを微調整している。
 
 日本における戦術論というと、どうしても机上の空論のごとくシステムやフォーメーションといった数合わせや試合で抽出される局面的現象を取り上げて語られることが多いのだが、こごは具体的にどのようなトレーニング、練習メニューを行っているのかという具体例を用いながらバルサのサッカーの基本戦術、コンセプトを説明しよう。
 
「バルサの練習ではロンド(鳥かご)が多い」ということが日本でも盛んに語られる。サッカー経験者のみならず、「鳥かご」、「ボール回し」という練習メニューは一度は耳にしたことがあるはず。
 
 しかし、日本では「ロンド」を下図左のような4対2のボール回しと思っている人が多いが、実はバルサのロンドは違う。4人が正方形を作り、その中央にフリーマンが入り、守備3名が作るトライアングルの中心にパスを通す。こうして、ボールを相手守備陣形の中心に収めていく練習を盛んに行っているのだ。

 
 試合において四角形の中心にボールが収まると、相手は金縛りにあったように足を止めざるを得なくなる。なぜなら、万が一誰かが自身のポジションを捨て中心に入る選手のマークに付いたり、中心選手がボールを持った時点でプレスに出るとすると、通常DF4人、MF4人の2段構えで構成される守備ブロックが崩れ、そこにギャップができることになるからだ。

 
 ギャップができて、それがカバーされるまではほんの数秒だろうが、その状態ができてから動くのではなく、ギャップができる瞬間を突く技術と連係を備えたバルサの攻めを考えると、相手チームとしては狙うに狙えない。 特に、バイタルエリアの正方形の中心でボールを収められると、相手の守備ブロックは無力化する。
 
 昨年からメッシをセンターフォワードで使ったこと、今シーズンからセスクをトップ下に置く3-4-3を使うのも、ここにボールを収めたいからだ。現代サッカーの傾向としても、いかにして「ディフェンスライン前にある中央の四角形を取りにいくか」という点が大きなテーマとなりつつある。
 
 

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