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JFAが発信した日本代表強化指針のターゲットと真意

2015.05.15
Japan v Colombia: Group C - 2014 FIFA World Cup Brazil
W杯では1分2敗に終わった日本代表 [写真]=Getty Images

文=小澤一郎

 4月23日、JFA(日本サッカー協会)の霜田正浩技術委員長が『2015 日本代表強化指針』と題してメディアブリーフィングを開き、『原点回帰』、『Japan’s Way』、『世界基準へ』という3つの柱が説明された。2014年で結果を出せなかった日本代表の全カテゴリーの活動を改め、強化指針を統一する意向と代表ピラミッドを明確にして一貫性を持たせるための指針発表となったが、暗黙の了解としてポゼッション主体のパスサッカーを「自分たちのサッカー」と定義してきた流れとの決別を強調した点は日本サッカー界にとって大きなトピックスである。

 簡単に各柱について説明を記しておきたい。『原点回帰』については、「ゴールに向かう意識」、「ボールの奪い合いの攻防で勝つ」、「ペナルティエアリ内の質の向上」という3要素が挙げられ、霜田技術委員長からは「点をとる、点をとらせないというサッカーの本質に立ち返ることが一番の目的」と説明があった。新しい用語としてボールの奪い合いの攻防の要素で「Duel(デュエル)」が使われ、1対1におけるボールの奪い合い、攻防の重要性が述べられた。

『Japan’s Way』においては、「スピード&テクニックで勝負する」、「コレクティブに闘う」、「運動量/走力で圧倒する」という3要素が挙がり、アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレという代表監督たちから踏襲されてきた「日本人のストロングポイントを活かす」サッカーが強調された。最後の『世界基準へ』の柱では、「課題の克服」と題して「フィジカルの更なる向上」、「戦術的柔軟性」、「勝者のメンタリティ獲得」という3要素が挙がった。ここでも前述のDuelが引用され、「Duelでの勝負強さ、簡単に倒れない球際の部分」が強調された。

 日本代表の各カテゴリーで2014年の結果が芳しくなかったことから昨年末の育成ブリーフィングに次ぐJFAからの発信についての受け止め方は様々あると思うが、まずは一貫性を持たせるための指針として明確に打ち出した姿勢自体は評価したい。

 一方でどうしても「JFAの発信ありき」で受け身になる指導者が多い日本の特に育成の現状を踏まえると危うさも感じる。ブラジル・ワールドカップ以後、急速に「球際」、「ハードワーク」といったものが打ち出され、ポゼッションやパスサッカーが否定される傾向にある中、実際に4月の大学、高校、中学のトップリーグを見ても今回JFAが示した要素の中でも「縦に速い攻撃」の部分は顕著に出るようになっている。

 しかし、個人的にはその縦への速さが「早過ぎる」結果としてネガティブに映っており、日本特有の針が振れすぎる状態となっている印象も受けている。霜田委員長は「これは単に前に蹴って走れというサッカーではない。方法論はここには書いていなくて、ゴールに行くためにはポゼッション、サイドチェンジ、ドリブル突破、何でもいい」と説明したが、しばらくは縦に早い攻撃が推奨されるがあまり相手DFラインの裏をめがけた可能性の低いロングボールによる攻撃が多く見られることになりそうだ。

 今回のJFAによる発信のターゲットは指導者であり、その真意はトレンドに左右され過ぎることなくサッカーの本質をしっかりと見極めた上でゴールや勝利にこだわるサッカーを貫き、そのサッカーの中でいい選手の育成をしてもらうことだ。そう考えた時、確かに2014年の日本代表はほぼ全てのカテゴリーで思わしい結果を出せなかったが、積み上げたサッカーを全否定してまで新たな潮流にシフトチェンジする必要はない。必要なことは、これまで足りなかった、欠けていた部分と向き合い、その要素を今まであるベースの中にどうプレスしていくのかを考えること。JFAが積極的に発信する姿勢を持つ今だからこそ、逆に受取り手の確固たるスタンスが求められている。

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