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アジアの頂点を目指すもう一つのサムライ“ろう者日本代表”

2014.11.17

 日本代表が来年1月に開かれるアジア・カップに挑むが、もう一つのサムライたちがアジアの頂点を目指している。そのサムライたちは、ろう者日本代表。11月17日から30日までイランのキーシュ島で開催される第3回アジア太平洋ろう者サッカー選手権に出場し、2016年世界ろう者サッカー選手権の本大会出場権獲得を目標に戦う。当初の参加国は、6カ国だったが、カザフスタンとタイの欠場が濃厚。そのため、サウジアラビア、イラク、開催国イラン、そして日本を含めた4カ国で争われる。

 参加を表明していた国が辞退する背景には、開催国の運営不備、出場国の派遣費用の不足、宗教問題、ビザ取得問題など様々な要因があり、ろう者を取り巻く環境の改善が長年の課題として挙げられている。今大会も対戦相手や世界ろう者サッカー選手権の本大会出場枠などはイランで行われるテクニカルミーティングで確定するなど、情報不足の中で大会に向けた準備を強いられている。試合は、FIFA(国際サッカー連盟)ルールに準拠し、競技規則はほとんど変わらない。ただ、聴覚に障がいを持つアスリートの状況を踏まえ、主審も副審と同じように旗を所有する。これによって聴覚的に判断できない部分を視覚的に判断することを可能としており、ろう者ならではのルールが追記されている。

 ろう者日本代表は、2012年の第7回アジア太平洋ろう者競技大会で初優勝に輝いたが、世界では結果を残せていない。アジア王者として臨んだ同年にトルコで開かれた第2回世界ろう者サッカー選手権では8位に終わった。翌年にブルガリアで開催された、ろう者のオリンピックにあたる第22回デフリンピックでは14位と低迷。世界の壁の厚さを痛感させられている。日本も上位進出が狙えるようになったアジア太平洋地区で最強を誇るのがイランだ。イランは健常者のサッカーだけでなく、ろう者サッカーも草の根レベルから娯楽スポーツとして親しまれており、ろう者サッカーの試合があるときもマスコミや観客が集まり、地上波のテレビ放送もあるほど注目されている。ろう者イラン代表は国民から強く支持されており、それが日本との力の差となって表れているようだ。

 日本代表の古株の一人MF船越弘幸は一般の健聴者の世界にもろう者のサッカーが認知されるよう、日本代表が結成された1998年以来、日々戦ってきた。「ろう者サッカーというものが広く浸透され、ろう者の子供たちが『ろう者サッカー日本代表になる』という目標を持って取り組めるような環境の構築が必要。そして、ろう者サッカー協会の規模を大きくし、代表選手が負担を抱えずにプレーに集中して取り組める環境作りが大切です」と訴える。さらに「そのためにもこのアジア太平洋予選では最低でも世界大会出場権を獲得しなければなりませんが、アジアの頂点を目指すことが最大の目標です」と続けた。大きな使命を胸に抱き、いざ、イランでの決戦に挑む。

●日本ろう者サッカー協会 公式HP
http://jdfa.jp/
●公式Facebook
https://www.facebook.com/jdfa.soccer
●公式Twitter
https://twitter.com/deaf_soccer

▼取材協力
聴覚障がい者サッカー日本代表 船越弘幸
聴覚障がい者サッカー日本代表 テクニカルアドバイザー 田澤龍太郎

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