サッカーゲームキングジャック6月号
2013.07.05

日本代表入りに意気込む宮市「自分にしかないものを出していければ」

[ワールドサッカーキング0718号掲載]

ケガに見舞われた“不本意なシーズン”も、彼にとっては成長の“糧”となる。冷静な分析と確かなビジョン。負傷という苦しみを乗り越えた宮市亮が、新シーズンへの思いを語り尽くす。
宮市亮
インタビュー・文=浅野祐介 Interview and text by Yusuke ASANO
写真=吉野洋三、ゲッティ イメージズ Photo by Yozo YOSHINO, Getty Images

「お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」

 まっすぐな力強い眼差しに、淀みのない明快な言葉。宮市亮は変わらない。

 アーセナルからレンタル移籍で加入した新天地、ウィガンで迎えた2012-13シーズンは、自身の言葉どおり「ほぼ1年中、ケガをしていた」シーズンとなり、リーグ戦の出場は4試合にとどまった。だが本人は、それを「なかなかできない経験」と表現し、成長への“一つの糧”になったと振り返る。

「結果的には何もできませんでしたし、その事実をしっかりと受け止めてやっていかなければならないと思います」

 にじませる悔しさ。しかし同時に、ピッチを離れていたことで見えたものは、20歳の若者の成長を加速させる“燃料”へと変わるはずだ。

「少し苦しくても『厳しい道』を選択するほうが、先を見据えた時に自分に跳ね返ってくるものが多いと思います。楽をしたい時でも自分を律し、厳しい道を選ぶことが、昔から心掛けていることです」

 変わらない信念を掲げ、新シーズンに挑む宮市亮。「成長」というベクトルで、その変わっていく姿を見るのが、今から楽しみでならない。

何事にも動じなくなった

――まず、昨シーズンを振り返って率直な感想を教えてください。ケガも多く不本意なシーズンでもあったかと思いますが……。

宮市亮 サッカーができなかったので、サッカー選手としては満足のいくシーズンではありませんでした。しかし、「ほぼ1年中、ケガをしていた」という経験もなかなかできませんし、そういう点では良い経験になりました。負傷中のメンタル面や、初めて海外で手術を受けたことを含めて、人として良い経験ができたと思います。

――イギリスの病院と日本の病院とでは違いはありましたか?

宮市亮 全然違いますね。適当ですし、日本に比べるとかなり雑です(笑)。

――そういう点も含め、これまでとは違ったメンタルの鍛えられ方を体験できたのではないですか?

宮市亮 本当にいろいろなことが起こったので、何事にも動じなくなりました。

――シーズンのスタートの話を聞かせてください。開幕前にアーセナルからウィガンへのレンタル移籍が決まりました。新天地では、どういう目標を抱いていましたか?

宮市亮 コンスタントに試合に出場して、結果を残そうと考えていました。ただ、結果的には何もできませんでしたし、その事実をしっかりと受け止めてやっていかなければならないと思います。

――ただし、8月28日のリーグカップ、ノッティンガム・フォレスト戦でウィガンでの公式戦デビューを果たし、9月1日のストーク戦でリーグ戦デビュー。その後も出場機会を得ました。好調なスタートを切ったと思いますが、手応えはいかがでしたか?

宮市亮 (ロベルト)マルティネス監督からも「出場機会がどんどん増えるから準備しておいてくれ」ということを常に言われていて、実際、徐々に途中出場で試合に起用してもらいました。カップ戦ではスタメンで起用されたりもしましたが、その中でケガをしてしまい、監督をがっかりさせてしまった部分もあると思います。マルティネス監督はすごく僕のことを気に掛けてくれていました。

――監督本人のコメントからも宮市選手への期待は伝わってきました。

宮市亮 たくさん声を掛けていただきました。「期待しているから早く帰ってきてくれ」と言われていたのですが、復帰してはすぐにケガという形になってしまいました。監督にとって“計算できない選手”になってしまったことが本当に残念ですが、マルティネス監督には感謝しています。

――マルティネス監督は、宮市選手について「お金を払って見る価値のある選手」と発言するなど、高い評価をしていると感じました。プレー面や戦力として、監督は宮市選手のどのような点を評価してくれていたと思いますか?

宮市亮 「速さ」など、自分の突破力を評価してくれました。ウィガンは3-4-3のシステムを採用することが多かったのですが、僕をワイドに張らせ、一対一の場面を作るプランを持っていました。中に入ろうとしても「外に張っていろ」と声を掛けられ、「そうすれば相手のDFがサイドに寄ってくる」と説明されました。

――マルティネス監督は戦術上のポリシーがはっきりした監督という印象があります。

宮市亮 そうですね。「戦術家」という感じでしたし、とても勉強になりました。

――序盤に出場機会を得た矢先に負傷で戦列を離れましたが、当時を振り返ると、どういう心境でしたか?

宮市亮 レンタルという形でチームに加入し、ケガをしてしまい、「チームの力になれていない」という気持ちがありましたし、自分として納得がいきませんでした。「早く治してサッカーがしたい」という思いもありました。

――昨シーズンのように継続的にサッカーから離れたのは初めての経験ですか?

宮市亮 あれだけ長かったのは初めてです。

――ボールを蹴れない時期が続くと、フラストレーションもたまるのではないかと思いますが、いかがでしたか?

宮市亮 すごくたまりました。加えて、走れないことで心肺機能が落ちてきてしまうため、復帰前のトレーニングが本当にきつくて、「もうケガをしたくない」と思いましたね(笑)。

――シーズン終盤、3月9日のFAカップ、エヴァートン戦で負傷退場し、そのままシーズンを終えることになりました。「ピッチに戻りたい」という気持ちの焦りはありましたか?

宮市亮 チームも順位が落ちて降格に近づいていきましたし、監督からも「早くケガを治してほしい」ということを言われていたので、焦りはありました。「プレーしたい」という気持ちは本当に強かったです。

――一方で、ケガをしっかりと治さなければいけない。メンタル面、モチベーションはどのようにコントロールしていたのですか?

宮市亮 プレミアリーグで活躍している香川(真司)選手や吉田(麻也)選手のプレーを見ると、自然とモチベーションになって、「自分もやらなければいけない」という気持ちになりました。そういう点で、モチベーションを保てていたと思います。

――2選手とも、昨シーズンの活躍はすごかったですね。

宮市亮 一気に置いていかれた感じですし、追いついていかなければいけないと感じています。

――敵の立場として、香川選手のプレミアリーグ優勝はどう感じましたか?

宮市亮 皆さん簡単に言っていますが、半端じゃなくすごいことです。しかも、シーズン中盤でケガをしながらも、チームの核として必要とされていることはすごいと思いました。「自分もああいう選手になっていかなければ」と考えさせられますし、本当に良いお手本が近くにいるなと感じています。

しっかりとチャンスをつかみたい

――戦列を離れていた間は、復帰に向けてどのような準備、トレーニングをしていたんですか?

宮市亮 自分の特長はスプリント能力ですから、スプリントの本数を上げたいと思っていました。心肺機能が落ちた分、ケガをする前よりも上げたいと思っていて、かなり走っていたんです。しかし、3月にケガをしてしまったことで、また戻ってしまいました。そういう部分も課題だと思いますし、もっともっと走ることができるように、このオフにしっかりと走り込んで、新シーズンにつなげていけたらいいと思っています。

――マルティネス監督は、宮市選手がシーズン絶望の負傷という状況下でも、レンタル期間の延長を希望していたようですが、実際に監督からそういった言葉は掛けられましたか?

宮市亮 具体的な契約の話はしていませんが、常に声を掛けてくれました。毎日顔を合わせる中で、「大丈夫か?」、「待っているぞ」と言われ続けました。一度目のケガから復帰した時は、「ここからはお前のシーズンになる」と言ってくれました。その後、またケガをしてしまいましたが、監督からポジティブな言葉を掛けられると選手は奮起しますし、監督としても人としても偉大な方だと思います。

――シーズンをともに過ごし、マルティネス監督からはどんなことを学びましたか?

宮市亮 最後まで残留をあきらめていなかったですし、常に前を向いていました。どんな状況でも自分を貫くという、人としての強さを学ぶことができました。

――不本意なシーズンではあったと思いますが、昨シーズン、得られたことと、今後に向けての課題に感じたことをそれぞれ教えてください。

宮市亮 プレー面で言うと、ボールの受け方、受ける場所について、自分が目指す場所がより明確になりましたし、メンタル面ではケガをした際のメンタルコントロールが身についたと思います。新シーズンは、まずケガをしないこと。コンスタントに試合に出場するために、練習を含めた地道なところから結果を出していくことが大事だと思います。すぐにチャンスが来なくても、イングランドは試合数も多いですし、絶対にチャンスは回ってきます。ただ、ケガをしてしまうとチャンスが消えてしまうので、ケガをせずにしっかりとチャンスをつかみたいと思います。

――アーセナルへ戻り、プレシーズンをスタートさせることになりますが、抱負を教えてください。

宮市亮 ケガをせずに、コンスタントにピッチに立てるように、目の前の小さなチャンスをつかんでいきたいと思います。シーズンの準備というか、僕は生き残っていく立場ですから、そこに照準を合わせていかなければなりません。しっかりと体を作っていきたいですね。

――アーセナルはプレシーズンに来日し、名古屋や浦和と対戦します。どういったプレーを日本のファンに見せたいですか?

宮市亮 スピードに乗った突破を見せることができれば、お客さんも喜んでくれるでしょうし、「アーセナルの選手」としてのアピールにもなると思います。自分の良さを出していきたいですね。特に名古屋戦は地元でもありますし、いいプレーを見せることができればと思います。

――先ほど香川選手と吉田選手の話が出ましたが、プレミアリーグ以外の欧州リーグで活躍する日本人選手のプレーは、どのような刺激になりますか?

宮市亮 昨シーズンは自分が試合に出場できない状況でしたし、他の日本人選手が試合に出場したり、得点を決めたりすると、自然と刺激になるというか、「自分もやらなければ」という気持ちにさせられます。Jリーグもそうですが、ヨーロッパの舞台での日本人選手の活躍は刺激になりますね。

――実際に試合を見る機会は多いのですか?

宮市亮 結構、見ていますよ。週末は、テレビをつければ必ずサッカーの試合が放送されていますし、自然と目に入ってきますね。

――特に注目しているリーグやチーム、あるいは「気づいたらよく見ている」というチームはありますか?

宮市亮 一番は、やはりプレミアリーグですね。あとは、レアル・マドリーが好きなので、レアル・マドリーの試合は見てしまいます。

――リーガ・エスパニョーラには、ネイマールが来ますね。

宮市亮 そうですね。また盛り上がりますね。

――ネイマールとは同世代です。

宮市亮 やはり刺激を受けます。自分もそういう世界に行きたいと思ってプロの世界に入ったので、負けていられませんね。

――同じヨーロッパの舞台に来たということで、対戦する可能性も広まりましたね。

宮市亮 そういう意味でも、コンフェデレーションズカップはチャンスだと思っていました。ブラジルと真剣勝負をする機会はそうそうありませんし。ケガをすることで本当にいろいろなチャンスを失ってしまうので、ケガをしないようにしていきたいです。

自分にしかないものを持っていると思う

――イングランドでは日本人選手同士で連絡を取り合ったりするんですか?

宮市亮 真司君や麻也さんとは割と連絡を取っています。お二人には、頭が上がらないくらいお世話になっています。ウィガンとマンチェスターは距離も近いので、特に真司君には「ほぼ毎日」と言っていいくらいお世話になっていました。

――今年はカズさん(三浦知良)にも会いましたよね。

宮市亮 あの時は本当に緊張しました。カズさんと会う時は、いつも緊張します。ウィガンの田舎町にオレンジのジャケットを着ていらっしゃって、「風格やそのすべてがキングだな」と思いました。

――具体的にはどういう言葉を掛けてもらったんですか?

宮市亮 「まだ若いんだから、焦らずにしっかりと自分を高めていければいいんじゃないかな」というお言葉をいただきました。本当にありがたいことです。

――宮市選手から質問もしたんですか?

宮市亮 サッカーの話というよりも、イタリアのことを聞いたりしました。自分にとって、すごく良い機会にさせていただきました。カズさんは先駆者。「先頭に立つ」ということはすごく難しいことですし、何も分からない状況で突き進んでいくのは本当に大変なことだと思います。カズさんが先陣を切ってくれたことで今の僕があるというか、ヨーロッパに日本人選手がいるのだと思います。

――先ほどコンフェデレーションズカップの話が出ましたが、来年はブラジルでワールドカップ(W杯)が開催されます。W杯への思いを教えてください。

宮市亮 全世界が注目する大会ですし、日本中が盛り上がる大会に出場することは選手として光栄なことだと思います。ただ、クラブチームでしっかり結果を出さなければ、その舞台にも立てないと思いますし、まずは自分のチームで活躍し、代表のメンバーに残っていければと思います。

――宮市選手のポジションは代表の中でも激戦区になりますが、爆発的なスピードを武器とする宮市選手は異色の存在だと思います。代表チームで存在感を示していく自信はありますか? また、そのためにはどんな準備が必要になってきますか?

宮市亮 自分にしかないものを持っていると思いますし、そこをアピールしていければ通用すると思います。しっかり自分のクラブでプレーできれば、結果は必ずついてくると思います。

――日本代表やプレミアリーグという世界の舞台で戦っていますが、日本と世界トップレベルとの差を感じることはありますか? 感じるとしたらどんな部分ですか?

宮市亮 日本代表に初めて参加した時に、技術的な面で「本当にうまいな」と感じました。僕はJリーグを経験していないので、日本のプロについては正確に分からない部分もありますが、日本代表に参加した時、そういう印象を抱きました。世界の舞台ではフィジカルの差が影響する部分もあるかもしれませんが、そこは技術で補えると思います。バルセロナもそういうイメージですよね。

――確かに、バルセロナもフィジカルではなく、テクニックやビジョンで勝負していますね。

宮市亮 バルセロナもテクニックで相手を圧倒していますし、日本代表もそういうチームになれると思います。自分も含めて今のまま成長を止めずに頑張っていければ、世界でも負けないチームになると思います。

――日本代表戦、更にはブラジルW杯で結果を残すために、個人としてどういうことが必要になってくると思いますか?

宮市亮 代表に呼ばれるために、そして試合に出るために、まずはクラブで活躍することですね。

――今後はどういう部分を伸ばしていこうと思いますか?

宮市亮 「味方をうまく使って自分を生かす」ことです。相手も一対一の場面はなかなか作らせてくれませんし、大切になるのは仲間を使いながら打開していくこと。そういう部分でも、清武(弘嗣)選手や香川選手はすごくうまいです。「生かして生かされる」というか、連係で崩していくスキルを身につけたいです。

宮市がトレーニングへの取り組み方や理想のプレースタイルに言及。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング0718号でチェック!