2015.10.11

誰より謙虚に、そして愛情深くサッカーを伝えたい 三田涼子(フリーアナウンサー、コラムニスト)

三田涼子
三田涼子

「チームを応援する、愛情を持ってチームに接する、というのが、すべての前提にありますね」

 そう語るのは、かつてTOKYO MXでキャスター、FC東京のリポーターなどを務め、現在はフリーアナウンサー、イベントMCなどとして活動する三田涼子さんだ。長い間、FC東京を見続けている彼女が、サッカーに関わる仕事をする上で大切にしていること、そしてサッカーに関わる女性として考えていることとは。

サッカーとの出会いと、FC東京の思い出

「学生時代は正直サッカーにほとんど縁がなくて、スタジアムに足を運んだことすらなかったんですよ」

 Jリーグが発足した1993年当時、三田さんは中学生で、地元のクラブである柏レイソルも2年目にリーグへと参入し、クラスの男子たちはサッカーの話題で盛り上がっていたという。しかし自身には全く縁がなく、サッカーを見るようになったのは、TOKYO MXに入社してFC東京の応援番組を担当し始めた2003年シーズンからだった。

 仕事がきっかけではあるが、それからサッカーが生活の一部となり、今ではFC東京を見続けて10年以上にもなる。一途に見続けてきたクラブの思い出は数多くある。

「一番うれしかったのは、やっぱりチームとして初めてタイトルを取った2004年のヤマザキナビスコカップですね。初めてのタイトルということですごく感動したのを覚えています。現地で取材をしていたんですけど、その日は優勝した場合に味の素スタジアムで優勝報告会を実施する予定になっていたんです。国立競技場から移動して、サポーターの皆さんも集まって開催したんですけど、その時に司会進行をさせていただいて。チームにとって初めての祝賀イベントという、すごく貴重な機会に司会を担当させていただいたことが、すごくうれしかったです」

 2009年、城福浩監督の下で2度目のナビスコカップ優勝を果たした際も、三田さんは優勝報告会の司会進行役を担当している。「優勝に立ち会えるのは何よりうれしいですよ」と語る彼女には、多くのサポーターと同じように忘れられない悲しい思い出もある。

「やっぱりJ2への降格は悲しかったですね。実はその年に応援番組が終了になり、私も担当を離れることになりました。それもあって、2010年シーズンは個人的にもいろいろと寂しい思いをすることになったかな」

 しかし、その後も報道部のアナウンサーとしてのチーム取材や、応援番組とコラボしていた『東京中日スポーツ』でのコラム執筆などという形でFC東京と関わる日々は続いていく。2012年にTOKYO MXを退社し、フリーランスとなった今でもそれは変わっていない。

 取材やイベントMC、『BR TOKYO』でのコラム執筆などでFC東京に関わる中で、心掛けていることがあるという。

「選手の声を紹介する時は、サポーターの方が知りたがっている情報や、選手の気持ちをいかに引き出すかを意識しています。例えば『なんでこういうプレー、こういうシーンがあったんだろう』とか。監督のコメントを引き出す時も同じですね。それをいかに視聴者の方にお伝えできるかを大事にして、そこにやりがいも感じてやってきました。書くほうのお仕事もその延長でやらせていただいています。ただ、基本的には『チームを応援する』という思いで、愛情を持ってチームに接しています。強くなってほしい、という思いを持っているのは、チームに関わるすべての方々と同じです」

三田涼子

楽しく、厳しく、だけど温かい“親”たち

 FC東京を傍から見続けて十余年。FC東京の魅力について、三田さんは少しの間考えてから口を開いた。

「タイトル歴があって、代表クラスの選手も複数いる強いチームだと思うんですけど、リーグタイトルにはなかなか手が届かない。と思ったら、たまに首位争いの大一番を演じている。そんなもどかしいところ、まだまだ多くの可能性を秘めているところですかね。多摩川クラシコなどで注目されることも多く、盛り上がりに事欠かないところも魅力なんじゃないかな。サポーターも熱くて、試合だけでなく各地のスタジアムグルメなどを楽しんで、盛り上げてくれますしね」

 ここで話題がサポーターのことになると、三田さんは続けてこう語った。

「どこのチームもそうだとは思うんですが、サポーターの方々のチームへの愛情がすごく強いんです。私が仕事を続けていられるのも、みなさんの愛情があるからこそなんです。チームを応援する立場でずっと仕事をさせてもらっている私にも、すごく温かいんですよ。例えば選手のトークショーイベントに来てくださった方が『こういう質問を選手にしてくれてうれしかった』とか『こういうことが知りたかったので聞いてくれてうれしかったです』という感想をくださるんです。そういうところもちゃんと見てくれるんだなあって、うれしくなりますね。東京のサポーターの方は、応援が熱いのはもちろんですけど、あったかい。試合に出るチャンスが少ない選手のこともちゃんと見ているし、ケガをしている選手がいたらすごく気遣ってあげる。小平グラウンドまで様子を見に来られて『○○選手は今どうなんだろう?』って私に聞いてくる方もいます」

 なんだか親みたいですね。という言葉に、三田さんは笑いながら大きく頷く。

「そうですね。だから選手もすごく丁寧に対応してくれます。武藤嘉紀選手(現・マインツ)のお別れイベントの時も、彼は2時間かけてたくさんのサポーターの方々に『感謝しています』と話しかけていました。みんなそうなんですよ、うちは」

誰よりも謙虚でいなければいけない理由

 長い間、仕事を続けている中で、最も意識してきたことは何なのだろうか。

「自分が女性であることを意識しないようにしています。男性の記者の方々と、選手に質問する内容とか、ノリとか、そういうところはあまり変わらないと思います。逆に、すごく意識せざるを得ない部分もあります。女性である上に自身がプレーする立場でサッカーに関わってきていないので、選手たちのプレーに関しては未知で、想像の範囲でしかないんですよ」

 女性であることを意識しない。しかし、せざるを得ない。二つの相反する感情がある中で、それでも長年サッカーに関わってこられた理由は「謙虚であること」だと言う。

「私がインタビュアーを担当した時に『安心して見ていられる』と言ってくださる方がいたんです。あまりに女性目線すぎると、引き出すべきところを引き出せないこともあると思うので、『プレーのここはちゃんと押さえて聞いたほうがいいな』と思うところは漏らさず聞くようにしています。ポイントは押さえつつ、プレーについては分からない部分が多いので、そういう部分では誰よりも謙虚にいようと思っています」

サッカーファンとして、母として

 三田さんは最後に、今後、やってみたい仕事について、興味深い未来のビジョンを語ってくれた。

「今年、出産を予定していて、仕事を一時中断することになるんです。自分がこれから母になり、年を重ねていく中で、サッカーを見る目線も変わっていくと思うので、例えば育成年代に目を向けた取材もしてみたいですね。育成年代からもっとサッカーの環境を充実させていくことが、日本代表や日本サッカーの発展につながると思うので、そういうところに少しでも関わるお仕事ができたらいいですね」

 一人のサッカーファンでありながら、同時に一人の母でもある。そんな立場であるからこそ、できることがある。三田さんの未来は、きっと今と変わらずサッカーに溢れているはずだ。

インタビュー・文=岸田真季(サッカーキング・アカデミー
写真=前田美穂(サッカーキング・アカデミー

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