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今、栄華を極めるスペインに革命起こした偉大な人物アラゴネスの死

2014.02.08

2008年の欧州選手権を制し、胴上げされるアラゴネス氏 [写真]=Getty Images

文=座間健司

 ルイス・アラゴネス氏が2月1日6時15分に死去した。75歳だった。アラゴネス氏の訃報はスペイン国内のメディアが大々的に報じた。スペインで最も発行部数が多い日刊スポーツ紙『マルカ』は32ページの追悼特集をつくり、スペインサッカーで最も偉大な人物を偲んだ。

 アラゴネス氏はスペインのフットボールを語る上で欠かせない人物だ。現役時代はフォワードとして1部リーグで360試合プレー。特にアトレティコ・マドリードのエースとして活躍し、3度のリーグと2度のカップをもたらした。また1969-70シーズンには得点王にも輝いている。スペイン代表としても11試合に出場し、3得点を記録した。

 1974年に現役引退後はアトレティコ・マドリードの監督に就任。監督としても1976-77シーズンにリーグを制覇している。アトレティコだけでなく、バルセロナ、ベティス、バレンシア、エスパニョールなどの監督を務め、監督として1部リーグで757試合を戦った。これはスペインリーグの歴史で1部の最多試合記録だ。

 近年最も人々の記憶に残っているのが2008年の欧州選手権制覇だ。アラゴネス氏は実に44年ぶりにスペイン代表にタイトルをもたらした。スペインの象徴であったラウル・ゴンサレスを代表から外し、様々な批判も浴びた。

 だがそんな騒ぎに惑わされることなく、自分の信念に従い、シャビ(現バルセロナ)を筆頭に背が高くなくても技術があり、ゲームビジョンに優れたアンドレス・イニエスタ(現バルセロナ)、ダビド・シルバ(現マンチェスター・C)、サンティ・カルソラ(現アーセナル)、セスク・ファブレガス(現バルセロナ)を中心にしたボールポゼッションを高めて決定機をつくるスタイルを確立させた。2010年南アフリカ・ワールドカップ、2012年欧州選手権連覇はビセンテ・デルボスケ現スペイン代表監督が成し遂げたが、スペインフットボールの礎を築いたのはアラゴネス氏だった。

 2008年の欧州選手権制覇は、その夏にジョゼップ・グアルディオラ(現バイエルン監督)が就任したバルセロナの黄金期を後押ししたとも言える。グアルディオラもシャビ、イニエスタ、リオネル・メッシら決してフィジカルに恵まれていないが、スキルがあり、広いゲームビジョンを持つ選手たちを中心にチームを構築。スペイン代表同様に魅力的なフットボールを展開し、タイトルを総なめにした。

 シャビは2008年欧州選手権まで彼は代表でも、バルセロナでもチームの主役になったことはなかったと回想している。アラゴネス氏がいなければ今の自分のスペイン代表バルセロナでの成功はなかったと話している。

 アラゴネス氏はシャビに「ピッチで指揮をするのは君だ」と全権を委ね「批判があれば私が受ける」と絶大な信頼を寄せた。そうすることでスペインは新たなスタイルを確立させた。そのスタイルはそれ以前、バルセロナにも世界中のどこにも存在はしていなかった。アラゴネス氏がシャビを中心に据えてタイトルを獲得した。だからこそ、バルセロナもグアルディオラと共にそのスタイルを推し進め、発展させることができたのだ。

 ルイス・アラゴネスは母国に44年ぶりのタイトルだけでなく、フットボールの革命を起こした人物として、後世に語り継がれていく。

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