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狂気すら感じさせるバイエルンの強さ…三冠達成で歴史に名を刻めるか/CL決勝プレビュー

2020.08.23

三冠に王手をかけるバイエルン [写真]=Getty Images

 一体誰がこのチームを止められるのか――。今のバイエルンを見ていると、そう思わずにはいられない。

 今シーズンのCLは10戦全勝。2013年のバイエルンと2014~2015年のレアル・マドリードがマークしたCL最多連勝記録に並んでいる。ここまで挙げた得点も「42」を数え、1999-2000シーズンにバルセロナが残した最多得点記録「45」まであと3ゴールに迫った。

 今大会はグループステージを終えた時点で唯一の全勝チーム(6勝)、そして最多得点チーム(24得点)だったが、対戦相手のレベルが上がる決勝ラウンドに突入してからの方がその強さは際立っている。決勝トーナメント1回戦からの4試合で計18得点を叩き出し、再開後の3試合はチェルシー戦(4-1)、バルセロナ戦(8-2)、リヨン戦(3-0)と、圧勝に次ぐ圧勝だ。

 そもそも彼らは昨年12月のCLトッテナム戦以降、一度も負けていない。公式戦29試合連続(28勝1分け)で負けがなく、現在20連勝中。連勝期間中に挙げたゴールは「67」と、平均して3ゴール以上を叩き出している。

 特筆すべきはその試合内容で、相手にペースを握られる時間帯は数えるほど。点差が開いても11人全員の足が止まることがなく、ゴールを狙い続けている。どんな相手に対しても最後まで攻撃的に戦うのがバイエルン本来のスタイルとはいえ、今の彼らは無慈悲を超えて狂気すら感じさせる。

 CLのファイナル進出は、ユップ・ハインケスが監督を務め、クラブ史上初の3冠を達成した2012-13シーズン以来7年ぶり。伝説に並ぶにはまだ1勝が必要とはいえ、「クラブ史上最強」との声が上がるのも不思議ではない。

 そんな彼らの強さを支えるのは得点力の高さ――ではなく、相手からボールを狩り取るプレッシングだ。非常に高い位置から仕掛けるプレス、またボールを失った後に発動する“ゲーゲンプレス(ボールを再び奪い返すためのプレス)”は、その速さ、鋭さともに今大会No.1。それが見事に嵌ったのがバルセロナ戦であり、元ドイツ代表DFのペア・メルテザッカー氏も「ボールを失った後、3秒もたたないうちに3人もの選手が相手を囲んでいた。だからバルセロナはうまくプレーできなかったんだ」とバイエルンの出来を称えた。昨年11月からチームを率いるハンジ・フリック監督も「我々の一番の強みは相手にプレッシャーを与えること」と認めている。

 高精度のプレスはバイエルンの生命線であり、パリ・サンジェルマンとの決勝でも勝敗を分けるカギになるだろう。ネイマールキリアン・エンバペアンヘル・ディ・マリアと、相手の前線には卓越した個の力を持つアタッカーたちが並ぶ。彼らと1対1の勝負になれば、バイエルンといえども抑え込むのは難しい。自慢のプレスで彼らへのパスの配給元を断つこと――それが勝利への最短距離となるからだ。

■カギを握る二人

ミュラー

[写真]=Getty Images

 そのうえでキーマンとなるのが、トップ下に位置するトーマス・ミュラーだ。「彼はベストプレーヤーに値する。我々のプレスを主導したのは彼だった」とは、リヨン戦後のフリック監督のコメントだが、三十路を迎えたアタッカーはプレスのスイッチを入れる役割を担っている。

 フリック監督とミュラーはもともと、ドイツ代表でアシスタントコーチと選手として苦楽を共にした戦友。2014年には共にブラジル・ワールドカップ優勝を味わった(マヌエル・ノイアージェローム・ボアテングも当時の優勝メンバー)。だから、ミュラーは指揮官の目指すスタイルを熟知しているし、フリック監督も「彼は監督の右腕のような存在」と賛辞を惜しまない。最終ラインからボールを繋いでくるパリ・サンジェルマンに対し、ミュラーを中心としたプレスでどこまで圧力をかけられるか。序盤の主導権争いのポイントとなるだろう。

 そしてプレッシングと同じくらい重要になってくるのが、守護神ノイアーのパフォーマンスだ。リヨン戦では“神セーブ”を連発。立ち上がりには、あわや失点かという場面を作られたが落ち着いた対応でピンチを凌ぎ、後半にも決定的なシュートを右足1本で防いだ。バイエルンはハイプレスを実行するため、あえて浅いラインを敷いているが、この戦い方ができるのもGKとして桁違いのカバーリング能力を持ち、1対1の対応に絶対の自信を持つノイアーがいるからこそ。頼れる守護神の存在は、超攻撃的なスタイルを貫くバイエルンにとって非常に大きい。彼がチームを救う活躍ができるか否かも、試合の趨勢を決める。

 一方で、ゴールを奪うことに関しては何も心配いらないだろう。「得点は必ず生まれる」と言っても過言ではないからだ。

 今大会のトップスコアラー(15得点)にして、出場全9試合でゴールネットを揺らすロベルト・レヴァンドフスキ、準々決勝以降の2試合で3ゴール1アシストと“ノリに乗っている”セルジュ・ニャブリ、左右両足で強烈なキックを蹴れるイヴァン・ペリシッチ、そして神出鬼没な動きで相手をかく乱するミュラー――彼ら4人が織りなす攻撃は分かっていても止められない。またセットプレーからの得点が今大会最多5ゴール(パリ・サンジェルマンは2ゴール)を数えるように、ここぞという場面での一発も持っている。得点パターンの豊富さはパリ・サンジェルマンを凌駕する。

 攻撃の切り札に関しても、テクニシャンのフィリペ・コウチーニョ、ドリブラーのキングスレイ・コマン、万能型のコランタン・トリッソら、多士済々のメンバーが控えている。たとえ膠着状態に陥ったとしても、二の矢、三の矢を放つことができるのは彼らの強みだ。

 フリック体制で戦った公式戦35試合のうち、無得点に終わったのは1試合だけ。今年2月に行われたブンデスリーガ第21節ライプツィヒ戦(0-0)だった。97%以上という高い確率でゴールを奪う今のバイエルンに恐れるものなど何もない。

 だからこそ、3冠達成のカギを握るのは、アグレッシブな守備(プレス)が機能するか否か。今回の決勝戦に向けて、フリック監督はこんなコメントも残している。「(パリ・サンジェルマンに)速い選手がいるのは分かっている。少し違ったやり方で守備をオーガナイズするか考えてみないといけない」。“違ったやり方”が選手を入れ替えることなのか、戦術の調整になるのかは分からないが、前者だとすると、スタメンに変化を加えるかもしれない。

 リヨンとの準決勝では、右センターバックに入ったジェローム・ボアテングが筋肉トラブルに見舞われ、ハーフタイムで交代。大事には至らず、今回の決勝でもプレーできる見込みだが、同ポジションには足の速いニクラス・ズーレが控えている。“エンバペ対策”として、彼を先発に抜擢する可能性は十分にあるだろう。

 またリヨン戦では、ベンジャマン・パヴァールがケガからの復帰を果たした。負傷前まで右サイドバックのレギュラーだった彼が戻ってきたことで、代役を務めていたジョシュア・キミッヒを本職のボランチに戻すという選択肢が生まれている。チアゴ・アルカンタラレオン・ゴレツカのボランチコンビもここまで抜群の働きを見せているが、キミッヒの持ち味を生かせるのは、やはりピッチの中央。チームを率いて1年にも満たないフリック監督が、CL決勝という大舞台でどんな采配を振るうのか、それもまた勝負のポイントになるだろう。

 大胆不敵にして、剛力無双。まさに向かうところ敵なしのバイエルンに足りないのは、あと1つの勝利のみ。3冠達成、そして欧州王者への返り咲きを果たしたとき、彼らは名実共に“最強チーム”としてサッカーファンの記憶に刻まれることになるだろう。同時にそれは、新たな黄金時代の幕開けを告げるものになるはずだ。

(記事/Footmedia)

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