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【コラム】世代交代の流れに危機感も「挑戦者のスタンス」を貫く本田 豪州戦は真価を問われる一戦に

2016.10.08

8日にオーストリアでトレーニングを行った本田圭佑 [写真]=JFA

 山口蛍(セレッソ大阪)の劇的決勝弾でイラクを下してから2日後の8日。日本代表は2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選第4戦、オーストラリア戦の地・メルボルンに到着し、夕方からレークサイドスタジアムで1時間程度の現地初練習を行った。

 前日の段階で累積警告により出場停止になった酒井宏樹(マルセイユ)、7日の練習中に槙野智章(浦和レッズ)と衝突して脳震盪を起こした長友佑都(インテル)の2人が離脱。今回は選手23人がオーストラリアに入る形になった。

 加えて8日は左足首捻挫の岡崎慎司(レスター)がストレッチのみで練習を切り上げており、3日後の次戦出場はかなり厳しそうな雲行きだ。本田圭佑(ミラン)は「ケガ人が増えていることはホントに深刻な問題だけど、サッカーではありえる話。それに動揺していてはいけない。新しい選手がしっかり準備して、我々もそれをサポートしていくことが大事」とチーム一丸となって苦境を乗り切る重要性を口にしていた。

 その本田だが、イラク戦ではチーム最多となる4本のシュートを放ち、80分には原口元気(ヘルタ・ベルリン)のクロスに頭で反応する決定機もあった。だが、肝心なシュートは左ポストを直撃。得点にはつながらなかった。この直後にヴァイッド・ハリルホジッチ監督は背番号4を下げて小林悠(川崎フロンターレ)を投入する。日本代表の大黒柱に君臨して以降、本田は2014年ブラジル大会と今回の2度の最終予選に挑んでいるが、劣勢の状況下でベンチに下げられたのはこの日が初めて。そういう意味でもインパクトの強い出来事だった。

「今までそういうシーン(交代)は少なかったかもしれないけど、ハリルになってからはそれなりに交代があるし、監督の指示自体が前の3人に関しては疲れたやつから代えると。今回で言ったら点を取った元気は外さないですよね。順序的にはオカ、僕か元気やったら僕でしょうっていうところなんで、当然かな。僕が監督でもそうしているかなっていう感じです」

 ハリルホジッチ監督の思惑をこう代弁した本田だが、決してイラク戦のパフォーマンスがよかったわけではない。ミランで今シーズン通算19分しかピッチに立っていない影響なのか、これまでのようなゴール前の鋭さ、勝負強さが薄れていたという意見も根強い。

「身体が動いていないという感触は特になかった。決めるときに決めていればとか、細かいところのニュアンスはいくらか反省がありますけど、特段気になったことはあまりなかったですけどね」と強気の男は周囲の懸念を一蹴したが、イラク戦で際立った結果を出したのは原口であり、山口であり、ゴールをアシストした清武弘嗣(セビージャ)といったロンドン・オリンピック世代だった。三浦知良(横浜FC)、中村俊輔(横浜F・マリノス)に象徴される通り、30歳を過ぎた途端、代表でエースの座を追われる例は過去にもあった。仮に、本田がオーストラリア戦でも結果を出せなければ、同じような世代交代の波に飲み込まれてしまう可能性もゼロではない。そういう危機感は本人の中にも少なからずあるようだ。

「(ミランで試合に出ていないことは)悔しいよ。そりゃ悔しいけど、自分の中で何をやるかっていうのはもう定まっているし、どんなプレーをしていくべきかっていうことも定まっているし、普段どういう生活をするかっていうことも定まっている。僕がここ(代表)にやってきた時とは立場も状況も違う中で、当然、言葉の種類も態度も変わってきているのも事実。とはいえ、どうせ失うものもあるとも思っていないし、挑戦者としてここまでずっと来ているんで、それはW杯に対しての姿勢も全く同じ。ことアジアに関しては、しっかり勝ち続けないとっていうプレッシャーはもちろん感じています」と本田はクラブでの状況が険しくなろうとも、年齢を重ねようが、挑戦者としてのスタンスを今も貫き続けていることを強調していた。

 日本代表がアジアのライバルを凌駕すると同時に彼自身が今一度、最終予選の舞台で輝くために必要なのは、タテ一辺倒のサッカーからマイナーチェンジを図ることだという。ハリルホジッチ監督就任後、日本はデュエル(局面のバトル)から奪ったボールを素早く相手の背後に狙う形を目指してきた。が、その傾向が強すぎるあまり、ボール支配時間が減り、逆に相手に主導権を握られるというイラク戦のような悪循環が頻繁に起きるようになった。そこに本田は大いに疑問を抱き、もう少しボールを持つ時間を多くするように変化をつけていこうとしているようだ。

「今は監督のやりたいタテへのスピード(ある攻撃)の方が、相手を引き出す駆け引きや組み立ての比重より多すぎる。そこの比率に僕は満足いっていない。それは自分で変えられるところではあるんで微調整ですね」と彼は選手たちの考えをもっとピッチ上に反映させたいと言う。それは清武も同意見である。

 日本らしいボール回しや組み立てをこれまでより増やし、臨機応変な戦い方にシフトした時、本田圭佑はこれまでのような圧倒的な存在感を取り戻してくれるのか。次戦はその真価が問われる一戦になりそうだ。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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