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求めるは“たくましく”“強い”勝利…日本代表に必要なブラジル後の上積み

2016.03.31

日本代表の大黒柱・本田圭佑 [写真]=Getty Images

 2年後のロシア・ワールドカップから逆算すると、チームの現在地に物足りなさを感じてしまう……アフガニスタン戦と同じ思いを、3月29日の埼玉スタジアムで抱いた。

 W杯アジア二次予選で最後のゲームとなったシリア戦は、予選でもっとも攻撃の色彩が豊かだっただろう。前半17分の先制点はオウンゴールによるものだったが、後半に奪った4点はどれも、チームのコンセプトが部分的にも現われたものであり、何よりも選手が戦術に縛られずにプレーしていた。躍動感という表現が、久しぶりに当てはまる一戦である。

 もっとも、その理由はシリアの戦い方にある。

 昨年6月に悪夢を見せられたシンガポールも、24日に対戦したアフガニスタンも、“得点すること”ではなく“失点しないこと”を最優先にしていた。シリアも前半は同じ戦略に立っていたが、後半から攻撃に人数をかけるようになった。敵陣にスペースを見つけやすくなったことで、日本の攻撃にスピード感が生まれ、局面で技術を発揮できるようになったとの見かたは成立する。力関係が表出しやすくなったわけで、そうなれば5ゴールも驚きではない。

 国際試合で5ゴールはホームゲームでも十分である。ただ、攻め切るという意味では不満も残った。クロスの精度を欠いたためにフィニッシュへ持ち込めないだけでなく、シリアに攻撃を許すきっかけにもなっていた。

 二次予選で初めてオープンな撃ち合いを挑んできた相手に、たびたび決定機を許したのは明らかな課題である。後半17分には自陣でのパスミスから守勢にまわり、シリアのミドルシュートが左ポストを叩いた。20分にも自陣左サイドで長谷部誠がボールを失い、至近距離からのシュートがGK西川周作を襲った。

西川周作

シリア戦に出場した西川周作 [写真]=Getty Images

 直後の後半21分に香川真司がゴールをあげ、日本はリードを広げることに成功する。だが、その後もチャンスはあるものの3点目に結びつけられない。ゲームを完全に殺すことができず、シリアに希望をもたらしてしまう。

 後半39分には、立て続けにピンチを迎えた。守備陣と長谷部誠の頑張りで失点は防いだが、相手がシリアではなくオーストラリアだったら、韓国だったら、イランだったら……。最終的な結果は、違うものになっていただろう。西川の好セーブがなければ、5-3か5-4で終わっていたかもしれないゲームだ。

 対戦相手が撃ち合いを望んでこなかったことで、直前のアフガニスタン戦まではディフェンスがほころぶことはなかった。久しぶりのシチュエーションで対応に時間がかかったとしても、山口蛍のケガで原口元気がボランチで起用されていたとしても、守備のリスクマネジメントは最終予選への不安を呼び起こす。

 ハリルホジッチ監督のチームは、ブラジルW杯のチームを土台としている。個人の特徴をどうやって消せばいいのかという意味で、日本は分析をされやすいチームだと言える。

 それだけに、“ブラジル後”の上積みは不可欠である。

 二次予選の8試合を通して、チームは新たなオプションを手に入れたのか。アフガニスタン戦の[4-4-2]は、ひとつの選択肢に成り得るかもしれない。個人で言えば金崎夢生だ。背番号15が見せるどん欲な姿勢は、相手守備陣にストレスを与えている。

 それ以外は? 結局のところ、既存のメンバーによるバリエーションにとどまっている。アフガニスタン戦で途中出場したハーフナー・マイクは、シリア相手にはテストされなかった。高さが武器になるのかどうかは、いまだ未知数のままである。

 ハリルホジッチ監督は「美しい」という表現を好むが、ここから先はしたたかに、なおかつたくましく勝利をつかんでいくことが求められる。華麗さやうまさを見せつけられなくても、相手を屈服させるような強さが。アルベルト・ザッケローニ監督指揮下のチームとの違いを生み出せなければ、ロシアW杯の展望は開けてこない。

文=戸塚啓

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By 戸塚啓

スポーツライター。法政大学法学部法律学科卒。サッカー専門誌記者を経て、フリーランスとして20年以上にわたってスポーツ現場を取材。日本代表の国際Aマッチは、2000年3月からほぼ全試合を現地取材。

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