2016.01.17

リオ行きの隠れたキーマン…ピッチ内外でチームを支える“潤滑油”矢島の存在価値とは

矢島慎也
今大会初の先発出場でチームの2点目を決めた矢島慎也 [写真]=Getty Images
2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

 アジアに散ったU-19日本代表時代から、MF矢島慎也(ファジアーノ岡山)はこの年代の代表チームにその名を連ね続けてきた。「常連選手」という言葉がこれほどしっくり来る選手はなかなかいない。レギュラーとして出続けているわけではないが、しかし指揮官の信頼は微塵も揺るぐことなくここまで来た。

「矢島はやると思っていました」

 タイとの第2戦を終えた直後、手倉森誠監督は自慢の息子について語るように、笑みを浮かべながらこう言い切った。南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)に代わって右MFに入ったこの試合、矢島は確かにスペシャルだった。オフ・ザ・ボールの動きで主に相手のアンカーの脇に生じるスペースへ巧みに入り込んでボールを引き出して起点を作り続け、見事な飛び込みから貴重な追加点も奪い取った。

 矢島は派手なドリブルでの個人技からゴールを量産するようなタイプではない。だが、ボランチもこなす幅の広さを生かしてチームの機能性を高めることができる貴重な人材だ。右足のプレースキッカー不足というチームの弱みを補う存在でもある。手倉森監督は試合を落ち着かせたい時、チームの連動性が落ちている時、いつも矢島を投入してきた。朝鮮民主主義人民共和国との初戦もそうだったし、このタイ戦で期待された理由も同じだった。右MFには関根貴大(浦和レッズ)や前田直輝(横浜F・マリノス)のようにJ1で結果を出している選手も含めて多様な候補がいたが、その中で矢島が選ばれた理由はこのタイ戦に凝縮されて見えていた。潤滑油としての力である。

「ずっといろいろな選手とやってきたので僕は周りに合わせやすい。誰が出てもそこにパスを合わせられると思うし、サイドバックが誰でもその長所を引き出せる」

 口にした静かな言葉の中に、矢島の確かな自信が込められる。ずっとチームを支えてきたのは自分なのだというプライドも、ある。

「(南野)拓実はA代表にも入っているし、ヨーロッパでもやっている選手。拓実の良い部分は分かっている」としながらも、「(南野に)負けたくない気持ちは持っている」と続けた。ポジションを争う相手に最大級のリスペクトを払い、その能力の高さを認めつつ、しかし自分が出たら南野にできないことをやってやろうという覚悟も同時に抱いている。

 以前、手倉森監督は「この年代はボールをもらってから仕掛けられる選手が多くいる」と語っていたが、裏を返せば「ボールのない時に仕事のできる選手」は限定されているということでもある。スペースでボールを受ける感覚と同時に、周りの選手とパスの呼吸を合わせる力がある選手は貴重。矢島はその希少価値ゆえに「常連選手」になったという言い方もできるだろう。

 ただ、南野と矢島がバチバチ火花を散らしているかと言えば、これがそうでもない。

 矢島が何度も強調したのは「チームとしての一体感」だ。「このチームには、『みんなでやっていこう』という感じがある。ロッカールームでも、試合に出ていない選手を含めてみんなで盛り上げていこうという雰囲気が出てくるようになった」と言う。同時に「僕は先発で出ても途中交代出ても、変わらず力を出せるようにするだけ」と、南野への対抗心とフォア・ザ・チームの精神を自然と両立させている現在の心境を明かしてくれた。こうしたメンタリティーもまた、指揮官が矢島を好んでチームに入れてきた理由だろう。

 先輩の矢島が一貫してこういう態度なのだから、南野が変にとんがるわけにもいかないのは道理というもの。集団としての心理的なバランスが取れるようになったのは、間違いなくチームとしての進歩でもある。それは「(過去にアジアの大会で)ベスト8で負けたチームにはなかった」(矢島)ものでもある。

 あとは結果を残すだけ。「良い状態になっているし、もっと良くなる」という矢島の言葉どおりに進歩を続けることができるのか。そのキーマンが浦和から岡山へ期限付き移籍中のリンクマンであることに疑いの余地はない。

文=川端暁彦

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