2014.06.26

日本代表総括 ザッケローニの4年間の功績に感謝を

ザッケローニ
日本代表の監督として4年間、日本サッカーのレベルアップに尽力したザッケローニ [写真]=Getty Images

 日本代表のブラジル・ワールドカップでのグループリーグ敗退を受けて、今大会の日本代表の総括を自分なりにまとめておきたい。

 まずは各試合の戦い方と、ザッケローニ監督の采配について。グループリーグ第1戦コートジボワール戦は、相手をリスペクトしすぎたこと、相手がしっかりと日本を研究して対策を練ってきたこと、そして試合展開に合わせた戦い方がチームとしてできなかったことが敗因だと分析している。

 「相手をリスペクトしすぎた」ことは、スタメンからも明らかだ。高さと強さのある相手に対応するために、センターバックはこの4年間のメインセットである「今野・吉田」ではなく、「森重・吉田」のセットを選択。そして、ヤヤ・トゥレ擁する相手の中盤に対応するために、ボランチのスタメンは「長谷部・山口」という守備力の高いセットで臨んだ。加えて、これはおそらく、攻撃力に優れるコートジボワールに対して、前半は守備的に戦い、後半勝負、という戦略で臨もうとしたための選択だろう。

 このスタメンが間違いだったとは思わない。現に、本田の素晴らしいゴールによって、前半を1-0リードで終えるというアドバンテージを手にしている。ただ、スコアとは裏腹に、試合の主導権自体は、完全にコートジボワールに渡してしまった前半でもあった。これは、守備的に臨んだことで、結果的に「受け身」で戦うことになってしまったことが原因だと考える。つまり、「基本的に高い位置を取って戦い、ポゼッションを上げてリズムを作りゴールを狙う」という、自分たちのやりたかった戦い方は全くできなかったのである。

 しかも、コートジボワールは、日本の攻撃の生命線である左サイドを明確にターゲットに定めてきた。ジェルビーニョを中心としたスピードあふれるアタッカーで日本の左サイドを攻めることにより、長友、香川を自陣に釘付けにする狙いにより、見事に日本の良さを消すことに成功した。日本の戦い方をしっかりと研究して、その対策を実行してきたのである。

 そして、試合を決定づけたのは、後半の選手交代だった。日本は後半から長谷部に替えて遠藤を投入。これはザッケローニ監督が試合後の会見で明らかにしたとおり、試合前から決めていた交代であるが、前半を“想定外に”リードして折り返したことで、結果的にこの交代が日本の選手たちに混乱を生じさせてしまった。「2点目を取りにいくのか、それとも守るのか?」。1点をリードした状況でどう戦うのか、その意識を徹底できなかったことは、明らかに監督のミスだろう。そして、後半17分にドログバを投入したことにより、コートジボワールの狙いが結実してしまう。コートジボワールの得点は、2得点とも右サイドのオーリエのクロスから生まれているが、このクロスが実ったのは、ドログバの投入により、日本の最終ラインが下がってしまったためだ。オーリエは前半から同様のクロスを何本も上げていたが、前半は日本のDF陣も最終ラインをある程度は高く保てていたため、ゴールにはつながらなかった。しかし、長谷部を下げてしまったことで中盤の守備力が下がった結果、オーリエによりフリーでクロスを上げさせてしまい、ドログバ投入によって最終ラインが押し込まれてしまっては、失点は必然だったと言えるだろう。

 第2戦のギリシャ戦、ザッケローニ監督は「自分たちのサッカー」を取り戻すため、センターバックに今野を、そして、初戦の敗戦の責任を、必要以上に感じてしまっていた香川に替えて大久保をスタメンに起用してきた。試合は、序盤から日本が主導権を握る展開となる。右サイドに入った大久保は、縦横無尽な動きで相手をかく乱し、チャンスを作る。1トップの大迫も、初戦とは違い、周囲との連携からたびたび、相手ゴールを脅かす。ギリシャも何度か鋭いカウンターをくり出してきたが、守備陣の踏ん張りもあり、ゴールを許さない。

 そして前半38分、長谷部のドリブルを後ろからのスライディングで阻んだカツラニスが2枚目のイエローカードを受けて退場。日本は数的優位となる。これで、日本のゴールはより近くなったように思われた。しかし、結果的にはこの退場が、この試合を難しくする。数的不利となったギリシャは、ハーフタイムを挟んだ後半、完全に自陣に引き、「スコアレスドローでOK」という戦い方を選択してきたのである。無論、この狙いは、第3戦にグループリーグ突破の可能性をつなぐためだ。日本戦で勝ち点1を奪えば、最終戦でコートジボワールに勝利することでグループリーグ勝ち抜けの可能性が残る(そして実際、その狙いどおりに勝ち抜けることになるわけだが……)。

 このギリシャの戦い方に対し、日本は後半から投入した遠藤を中心に圧倒的にポゼッションで上回りながらも、決定的なチャンスを作り出すことができない。こうなってしまった要因としては主に3つの理由が考えられる。1つは試合後に数人の選手が口にしたように、ギリシャのカウンターを恐れて、縦パスを入れることを怖がってしまったこと。1つは攻撃に工夫が足りなかったこと。ほとんど通用しなかった山なりのクロスをくり返すなど、残念ながらアイデア不足は明らかだった。ただ、一番の理由は、ギリシャの守備力が絶対的に高かったことだ。ヨーロッパ予選で10試合4失点と、ただでさえ守備力の高いギリシャが、守備に専念すれば、数的不利などほとんど関係なくなる。ましてや、日本はワールドカップに出るような国に、ガチガチに守られた経験は皆無なのだ。むしろ、何度かカウンターから決定機を作られたことを踏まえると、スコアレスで勝ち点1を獲得できたことはラッキーだったと言えるかもしれない。

 そして第3戦のコロンビア戦。もう勝利するしかない一戦において、ザッケローニ監督は、この4年間の集大成とすべく、スタメンを「いつもの布陣」に戻した。GK:川島、DF:内田、吉田、今野、長友、MF:長谷部、青山、岡崎、本田、香川、FW:大久保。いろいろな選手を試し、最後まで固定しなかった1トップを除けば、「いつもの布陣」から変更したのは遠藤を青山に替えただけである(青山を起用したのは、大久保の良さを活かすためと思われる)。

 前半、この大会で初めて、日本は躍動した。格上のコロンビア相手に、リスクを恐れず、主導権を握りにいった。まさにザッケローニ監督の下、4年間かけて築いてきた「自分たちのサッカー」を見せてくれた。PKにより先制されるも、前半終了間際に、本田のクロスから岡崎のヘディングゴールが決まり、同点で前半を折り返した。同時刻キックオフのギリシャvsコートジボワール戦を、ギリシャが1-0でリードして折り返したこともあり、日本のグループリーグ勝ち抜けは、もはや「奇跡」ではなく、現実的に狙えるところまで来ていた。

 しかし、後半開始から投入されたコロンビアのエース、ハメス・ロドリゲスによって、すべては打ち砕かれてしまう。ハメス・ロドリゲスが加わったコロンビアは、前半とは全く違う攻撃を仕掛けてきた。明確な対応が必要な場面だったが、ザッケローニ監督は動かず、後半10分に、ハメス・ロドリゲスのアシストから、マルティネスに勝ち越しゴールを奪われてしまう。この失点は、やられるべくしてやられたものだったと思う。後半17分に、青山に替えて山口蛍を投入したが、時すでに遅し。前半からハイペースで戦っていた日本には、コロンビアに傾いた流れを再び取り戻すことはできなかった。この点に関しては、後半の同点の場面でこの交代を決断していたら、山口蛍をマンマークでハメス・ロドリゲスにつけていたら……正直、そう思わざるを得ない。

 コロンビア戦の翌日、ザッケローニ監督は「責任はすべて自分にある」として自ら退任を発表し、4年間に渡るザッケローニ体制の幕を閉じた。集大成となったブラジル・ワールドカップでグループリーグ敗退を喫したことで、ザッケローニ監督を日本代表監督としたこと自体が間違いだった、失敗だった、という批判が一気に噴出しているが、個人的には、そういった批判は全くお門違いだと思う。

 そういう批判をする人たちは、いったい、日本代表監督に何を求めているのだろうか。4年に一度のワールドカップで絶対に結果を出すこと? すべての試合で、完璧な戦いをすること? 忘れてはいけないのが、日本代表のレベルは、まだ世界のトップクラスではないということだ。もちろん、98年から5大会連続で出場し、日本代表のレベルは間違いなく上がっている。世界からもたびたび称賛されている。しかし、日本代表がワールドカップベスト16以上の常連となるには、まだ相当な時間が必要なのも事実だ。今大会のグループリーグ3試合において、日本代表よりも格下のチームはあっただろうか? 勘違いしないでほしいのは、日本のグループリーグ突破は不可能だった、と言っているわけではない。可能性は十分にあった。もう少しだけ運が味方してくれれば、突破していたと思う。ただ、「日本がグループリーグ突破の本命」ではなかったことは、目を背けてはならない事実である。

 確かに、ザッケローニ監督の今大会での采配、特に選手交代には疑問が残るものも多かった。元々、試合中の采配で違いを見せるタイプの監督ではないこともあり、ワールドカップ本番だけでなく、試合中の采配には疑問を感じていた。また、試合終盤にパワープレーを選択するのであれば、空中戦で強さを発揮する選手を23人にいれておけば、とも思う。大会直前でサプライズ招集した大久保を、もっと早く呼んで主力との連携を高めておけば、結果は違ったんじゃないか、とも思う。さらに言葉を選ばずに言えば、ザッケローニ監督が的確な采配ができていれば、日本代表はグループリーグを突破していたんじゃないか、とすら思う。

 しかし、だからと言って、ザッケローニ監督という選択が間違いだったとは微塵も思わない。それは、「もう少しでグループリーグ突破」というところまで来れたのは、ザッケローニ監督の功績だと思うからだ。この4年間の日本代表を振り返ると、アルゼンチン戦での勝利に始まり、アジアカップ優勝、対韓国戦4戦無敗(2勝2分け)、アウェーでフランス、ベルギーに勝利、オランダとドロー。歴代の日本代表で、これだけ多くの勝利の喜びを与えてくれた4年間があっただろうか。そして、日本サッカーの「軸」であるJリーグのレベルアップにも、とても貢献してくれた監督だったと思う。4年間で足を運んだJリーグの取材は232試合。Jリーグから多くのメンバーを試し、23人の最終メンバーにも11名を選んだ。プライベートにおいても、日本食を愛し、日本の文化にも積極的に触れ、日本を理解しようと努めた。

 それだけに、グループリーグ敗退という結果は、本当に悔しい。この4年間をより素晴らしい結果として残すためにも、日本代表にはワールドカップで結果を出してほしかった。おそらく、常日頃からサッカー漬けになっているサッカーファン、サポーターは、その多くがザッケローニ監督の功績をわかってくれるはずだ。ただ、できることならば、普段はサッカーを観ない、それこそ、4年に一度のワールドカップでしかサッカーを観ない、という人たちにも、ザッケローニ監督の下、4年間で築いてきた日本代表のサッカーの素晴らしさを味わってほしかった。この4年間が素晴らしかったからこそ、それが残念でならない。

 とはいえ、ザッケローニ監督への感謝の気持ちは変わらない。思えば4年前、より高いレベルを求めて、日本サッカー協会は監督探しを行った。ゼロから監督探しをするのは、ほぼ初めての経験だった日本サッカー協会の監督探しは、難航を極めた。その中で、歴代の日本代表監督と比べても、図抜けた実績を持つザッケローニが、日本代表監督を引き受けてくれた。そして、前述のように、真摯に、実直に、日本代表の強化に取り組んでくれた。そのことに、改めて、感謝の意を表したいと思う。

 この素晴らしい4年間を受けて、日本代表はさらに前に進んでいく。まずは新しい監督を決めるところから始めて、この4年間で足りなかったところを具体的に検証し、改善していく(個人的に最も改善してほしいポイントは、強化試合の質だ。これについてはまた違う機会に述べたいが、アジアでの戦いだけではこれ以上の強化は難しい。列強国とのアウェーでの強化試合を増やすことが、今後の代表強化には欠かせない)。これから始まる4年間が、さらに素晴らしい4年間にするためには、日本サッカー全体で向上心を持ってやっていく必要があるだろう。日本サッカー協会、代表チーム、Jリーグ、選手、ファン&サポーター、そして我々メディアを含めて、ここからが新たなスタートである。

文=岩本義弘

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