FOLLOW US

なでしこの敵は“焦り”…攻め急ぎに要注意、正確なプレーで初勝利へ

2016.03.04

開幕2試合を1分け1敗で終えたなでしこジャパン [写真]=Getty Images

「ボールを回せたとは思うけど、スピードアップをするタイミングが早かった」

 2日に行われたリオデジャネイロ・オリンピック 女子サッカー アジア最終予選第2節、韓国と1-1で引き分けたなでしこジャパン。主将MF宮間あやが口にした問題点は、攻撃時における焦りに起因するものだ。15本ものシュートを放ちながら1ゴールを挙げるにとどまった一戦で露呈した課題は、プレー選択と精度の低さだった。中1日で迎える4日の第3節中国戦では、いかに落ち着いて1つひとつのプレーを確実にこなしていけるかが重要なテーマとなる。

 2月29日の第1節オーストラリア戦では、選手間の距離が開いてしまい、個々が孤立する中で劣勢を強いられた。FW大儀見優季は「もう少し早くサポートに来てほしい場面はもちろんあった。そういった部分も含めて、少しナーバスになりがちだった。そこでいかにリスクを冒してサポートに行けるか。ボール保持者を追い越していけるかがカギになる。緊張感がある試合こそ、もっとリスクを冒してプレーしていかないと得点は生まれにくいと思う」と、初戦特有の緊張感に言及しつつ、意識改革の必要性を説いていた。

 それから中1日で迎えた韓国戦、なでしこジャパンは見違えるような動きを見せた。オーストラリア戦で採用した[4-4-2]ではなく、宮間をトップ下に据えた[4-2-3-1]でスタート。中盤と前線の経由点に宮間が入ることで、縦のパスコース(いわゆる“深さ”)を確保することができた。大儀見は「1人ひとりの距離が近くなったし、(ボールを)“前へ運ぼう”という意識が強くなったから、良くなったと思う」と、選手間距離の改善に一定の手応えを示している。

 オーストラリアとは異なり、韓国が最終ラインへのプレスをかけてこなかったこともあって、前半はボールポゼッション率を高めて敵陣へ押し込むことができた。「『敵陣でサッカーをしよう』ということで、最終ラインを設定する位置をかなり高くした」と大儀見が言う通り、陣形をコンパクトに維持。最後尾から戦況を見つめていたGK福元美穂も「特に前半は前線からボールに(プレスをかけに)行けていて、セカンドボールも拾えていたのが良かった」と、守備面での好感触を口にしている。選手間の距離が近くなったことで、ボールを失った後も素早くセカンドボールへアプローチできていた。

 だが、攻勢をかけた前半45分間でゴールネットを揺らすことはできなかった。大儀見は「相手の守りは堅かった。ペナルティーエリアの前でブロックを作って守備をされると、決定機を作り出すことはそんなに簡単ではなかったと思う」と悔しそうに振り返っている。ただ、韓国が人数をかけて守備を固めてきたことは確かとはいえ、なでしこジャパンのプレーにミスが目立ったのも事実だ。ゴール前までボールを運んだ後、ポストプレーやラストパスの精度を欠いたことで自らチャンスを手放していた感は否めなかった。

 佐々木則夫監督もその点に言及し、「ゴールが決まらない理由はフィニッシュの精度だけでは片付けられない。その手前のプレー、もう1つ手前のパスの精度を欠いていることが大きいと思う」とコメント。福元は「ボールを持っている時間は長かったと思うけど、焦れずに攻めていかないといけない。時には(ボールを下げて攻撃を)やり直すことも必要」と、前へと急ぎすぎていることを指摘した。

 初戦を落とし、「勝たなければならない」との思いが焦りとなってプレーに影響を与えた面はあるだろう。後半に入るとその傾向は顕著なものとなり、運動量が落ちてオープンな展開となる中でイージーミスが増えていった。「前へ」という焦りは守備面にも波及。前線に選手を残した韓国に対して前がかりになってしまい、カウンターからピンチを招く場面が何度もあった。「相手の選手が“攻め残り”をしていた中で、リスク管理で甘い部分が出たのかなと思う」と、福元は反省の弁を残している。

 中国戦では、的確なプレー選択を繰り返す中で精度を高めていく作業を徹底しなければならない。苦しい状況だからこそ、基本に忠実に――。焦ることなく、1つひとつのプレーを確実にこなしていきたい。

 第3節の中国戦は4日19時35分、キンチョウスタジアムでキックオフを迎える。

文=内藤悠史

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO