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【特別連載】広島スタジアム問題のなぜ~第0回 サンフレッチェの提案内容とは~

2016.04.09

サンフレッチェ広島が提案した「Hiroshima Peace Memorial Stadium」 ©サンフレッチェ広島

 紛糾し続ける広島の新スタジアム建設問題。そのバックボーンにはいったい何があるのだろうか。

 交通アクセスや屋根などの諸問題を抱えるエディオンスタジアム広島(旧広島ビッグアーチ)をホームスタジアムとするサンフレッチェ広島。近年は指揮官の森保一や佐藤寿人を始めとする選手・スタッフも一緒になって真剣に新スタジアム建設を呼び掛けてきた。チームは4年間で3度のJリーグ王者に輝くなど、文句のつけようがない成績を残し、広島県や広島市といった行政サイドも新スタジアム建設について検討を進めるとしていた。


 しかし、実際には行政との話し合いは平行線を辿り、議論がかみ合わないシーンが目立っているのが現状だ。そんな中、内容が全く煮詰まらないまま一方的に結論を出されてしまう流れに危機感を感じたサンフレッチェ広島の久保允誉会長が動く。今から約1カ月前の3月3日、サンフレッチェ広島として昨今の議論に問題を投げ掛ける形で旧広島市民球場跡地における独自の新スタジアム建設案を発表したのだ。その後も双方それぞれが見解を発表するにとどまっている。

 では、なぜこのような混乱状態に陥ってしまったのか。

『サッカーキング』では、今回の新スタジアム建設問題に関する歴史的な背景を知ることで理解を深め、今後の方向性を明確にしていくために、広島在住でサンフレッチェ広島オフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』の編集長を務める中野和也氏に、「広島スタジアム問題のなぜ」というテーマで全5回の連載企画を依頼することにした。

 今回はまず第0回として、久保会長が3月3日に行った記者会見の内容全文、そして同18日と同23日にサンフレッチェ広島が発表したスタジアム建設の現状に関する見解をご覧いただき、問題の概略をつかんでもらいたい。この記者会見とクラブ側の見解に目を通していくことで、久保会長、そしてサンフレッチェ広島の思いが存分に伝わってくるはず。この二件を踏まえて、中野さんに筆を執っていただく第1回へのバトンとしたい。

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サンフレッチェ広島 久保允誉代表取締役会長記者会見全文(2016年3月3日)】

久保允誉

3月3日に記者会見を行ったサンフレッチェ広島の久保允誉代表取締役会長 [写真]=中野香代(紫熊倶楽部)

 本日はご案内しましたところ多数おいでいただき、ありがとうございます。本日3月3日の午後3時にはこだわりがあります。“3本の矢”、サンフレッチェの「サン」ということで、一つはサポーターの思い、それから建設に関して署名してくれた40万人以上の方々からの思い、そしてフロント、監督、選手の思いを汲み、3月3日午後3時にこのような発表の場を設けさせていただきました。

 まずは当社が提案したいのは、広島市のど真ん中、旧広島市民球場跡地で多目的使用が可能なスタジアム。仮称ですが「Hiroshima Peace Memorial Stadium」の建設です。

 コンセプトについてお話しします。一つ目は広島のスタジアムは試合中心部にあることで将来の発展基盤となること。二つ目は平和のスタジアム。平和都市広島からの全世界への情報発信機能を高めるための基地になること。三つ目はスポーツ・文化のスタジアム。サッカーだけでなく、広くスポーツ文化そのものの永続的な発展の起爆剤、基盤にしたい。この三点です。

 広島市民球場は全くの焼け野原になってしまった戦後復興の象徴であったわけです。発展の中心軸であり続けた広島市民球場跡地でしか、実現できないスタジアムです。全世界すべてのスポーツファンのために、広島市の発展に貢献できるスタジアムであるというコンセプトです。

 サンフレッチェ広島は、今や広島サッカーの伝統と歴史を背負い、日本を代表するクラブチームに育ちました。現状に甘んじることなく、スタジアム建設と広島の発展のために持てる力のすべてを注ぎ込んでいくべきだと思っています。

 しかし、本当に広島に新しいスタジアムを作るのならば、サンフレッチェの声を聞いてほしい。みんなが納得いく形でスタジアムを作りたいし、作っていただきたい。このプランは監督や選手の声も反映しながら、当社がこれまでに建設に関して提言したことをベースに、コンサルタントの意見も聞きながら、新たな検討を加えたものです。当然、課題はありますが、資金面についてもメドが立っています。

 当社がこの場で説明することになった経緯についてお話をしないといけません。

 昨年始めに多くの課題を残したまま、サッカースタジアム建設協議会が終了しました。その後、当社に対するヒアリングは全くありませんでした。今月末にも候補地が決定されるとお聞きしているこの状況でも、広島市、広島県を含む関係者に、サッカースタジアムが建設された場合に主な利用者となるであろう私どもに意見を聞きに来る方はいませんでした。

 一方、この3年間で私どもにお寄せいただいた広島市民、広島県民あるいは全国のサッカーファンの署名は40万件以上に達しています。そうしたスタジアムを利用する人たちの声も聞かずに候補地が決まってしまうのは、広島市の一市民の感情としても純粋に理解に苦しむわけでございます。そこでやむにやまれず、サポーターの方々の思いも踏まえてこのタイミングで記者会見を開かせてもらいました。

 以前、私は「口も出すが、お金も出す」と申し上げました。本当の意味は、サンフレッチェ広島のクラブ経営を預かるものとして、フランチャイズを使う上で運営上の収支がきちんと取れることが大前提で、最も大切だと思っています。

(宇品地区の)広島みなと公園に新スタジアムの建設が決まった場合、たとえ新しいスタジアムをサンフレッチェがフランチャイズとして使用しても、私どもの試算では収支面で「クラブ運営は非常に困難」との見通しが出ています。みなと公園に新しいスタジアム建設が決まった場合、サンフレッチェはその新スタジアムを使うつもりはございません。

 全世界のスポーツファンに憂慮したい、広島市の中心地につくるスタジアムとして、「Hiroshima Peace Memorial Stadium」がふさわしいのではないかと議論した中で、このような名称を仮称としています。

 ここに作る以上、地球上で最初の被爆都市となった広島の歴史的経緯と歴史と体験を次の世代に継承していくことも踏まえる必要があると思っています。平和記念公園を含む地域と一体運営すべきと考え、スタジアムの南側に大きな開放部を設け、原爆ドームが客席から見えるデザインを考えました。一体運営の意味では、スタジアム内に恒常的な平和発信の機能や設備も考えています。

 次に国際試合の開催も可能なサッカースタジアムとして機能や利便性も追求しました。十分なホスピタリティの場を確保するというFIFAの基準をクリアしながら最大で2万5000人を収容できます。このサイズであれば、良好なアクセスの下で各種国際試合を誘致する可能性も開けるものと考えています。

 今のエディオンスタジアム広島は基準を満たしておらず、国際試合はなかなか厳しいと思います。新スタジアムの収容人員は2万7000~8000人を想定していると申し上げてきましたが、「原爆ドームを常に目にするスタジアム」というコンセプトから検討した結果、開放部を設けたことで2万5000人収容としました。ピッチと観客席の最前列の感覚は、選手が強く要望しております5メートルとしています。この間隔は今のところ日本一。実現すれば、サポーターと選手の一体感は国外でも有数のものとなります。

 Jリーグのホームゲームは20試合程度ですが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)、ヤマザキナビスコカップ、天皇杯全日本選手権、あるいは女子サッカー、大学リーグ、高校年代の大会などいろいろとあります。芝を厳格に管理する前提で年間80試合を上限にサッカーの試合で使うものと想定しました。

 今後の調整となりますが、サッカー以外の球技での使用も可能な仕様を考えています。年間を通じたスポーツコンテンツの開催が可能であると考えています。加えて音楽コンサート、いろいろなスポーツのパブリックビューイング(PV)も可能。一年間を通じてイベント広場としての機能を十分に果たせると思います。

 アクセスの良さは広島県内を見渡しても有数であることは疑うことがありません。本通り商店街を始めとする周辺地域への経済効果も多いに期待できると思っています。

 このスタジアムは建設の段階から具体的な運営に至るまで、市民の皆さまの協力を考えています。例えば、ピッチの芝はサポーター、市民の皆さまと張っていきたいと考えています。

 都市の中心に位置することで、広島の街とともに成長すると思っています。アクセスの良さから、雨の日でも多くの市民がコンコースを走るために訪れることができる。また、かつての市民球場がそうだったように子どもたちが自然と集まる象徴的な存在となり、これからの未来を担う子どもたちがこのスタジアムでの体験を通じて広島に対する愛着と誇りを持ち、教育の象徴になればと思います。

 市の中心にあるからこそ、みんなで作り、みんなで動かすものになっていくと思っている。中心部にあるからこそ、コンコースににぎわいをつくり出すこともできます。コンコース部分に日常的なにぎわいの場を設けることで、スポーツイベントがない日でもスタジアムは紙屋町一体の人通りのハブ機能を持ち得ると考えています。たとえばフリーマーケット、音楽イベント、PV、多角的な使い方でスタジアムが広島の中心にあるからこそ高い効果が期待されます。

 スタジアム内に恒常的な平和発信の機能や設備を敷設するという情報発信機能だけでなく、平和記念公園との一体運営の意味でも8月6日の平和記念式典の第2会場としても想定できます。このようにスタジアムを活用することで、広島から全世界に向けた情報発信は飛躍的に高まると思います。

 広島市のど真ん中にあるから、世界中から訪れる観光客にとっては、広島県の観光のハブとなるには最適だと思います。すぐにもたらせる効果では国内外のサッカーファンが訪れることが期待されますが、観光客が広島中心部の軸に沿って移動することで市内が再活性化し、県内の観光地にも波及していくと思います。この他にも、スタジアムが中心に位置するがゆえのハブ機能が期待され、広島の抱える課題が解決される一助になればと思います。

 スタジアムは災害時の市民の防災施設として十分な機能を備えるべきだと考えています。電力がすべてダウンし、一定期間、多くの人たちが避難生活を送らなければならないことに備えて、普段、すべての使用電力は再生エネルギーでまかない、大型貯水槽を備えることも想定しています。国土交通省、環境省のCO2削減に関する補助金も活用できればと考えています。

 広島スタジアム、平和スタジアム、スポーツ・文化スタジアムとして十分な機能を備え、また維持可能な運営を見据えたつくりとすべきでなければなりません。

 規模は最大で2万5000人の収容です。広島市などが試算する跡地を彫り込む必要がなく、高さ制限もクリアしている前提です。国内の他の地域で成功したスタジアムやマツダスタジアムの事例を参考に、音楽イベント、PVといった多目的な使用を前提とした場合、およその整備費用は140億円と想定いたしました。根拠は一席50万円と言われていることからです。2万5千人であれば、125億円でできる。関連の補修や整地なども含めて140億円としました。

 費用ですが、totoおよび補助金が35億円。スタジアム使用料が45億円、企業寄付金が20億円、個人の寄付金が10億円。私も積極的に働きかけたいと思います。そしてエディオンとして30億円程度を拠出する考えであります。サポーターの利益向上とクラブ運営における将来的な価値向上を考えた時、将来に向けた先行投資です。

 エディオンが67年間、第一産業、ダイイチ、デオデオ、エディオンと地域にお世話になったことを踏まえて、地域に貢献していきたい、将来に向けた投資として効果が高いとして判断した金額です。スタジアムが広島市民球場跡地に決まった場合、役員会で拠出についての決議事項をしっかりして、ステークホルダーも理解できるような形に持っていきたい。30億円程度を拠出する考えがあることは役員会で報告済みです。

 これはエディオンの上場企業の企業価値向上の観点からも、あるいは地域の経済効果が高いと推定されるプランに投資を行っているということです。

 先日公表された県、市、商工会議所作成の資料では、みなと公園における設備費用は約180億円と見積もられていますが、この金額には周辺の道路整備費用を含めた多額のインフラ費は含まれていません。最初に説明したとおり、クラブ経営を預かるものとして運営上の収支が取れることが大事だと考えています。

 収支が得られない以上、どんな理想を掲げてもクラブの発展は望めない。私も何度か債務超過ぎりぎりの中で、エディオン、マツダと支援して、何とか債務超過にならないようにやってきた。エディオンとしても、サンフレッチェに18年間で100億円近く投資してきています。

 今回、エディオンスタジアム広島の収支を基準に、市民球場跡地とみなと公園を比較しました。決して結論ありきだったわけではありません。みなと公園に建設された場合、移転による増益効果を見込んでも移転初年度の営業利益は最大で4億7000万円の赤字が出ると判明しました。これだと2年間で債務超過になります。

 次に市民球場跡地です。移転に伴う入場料の値上げを実施しない場合でも初年度から黒字を確保することができます。

 従いまして、建設候補地がみなと公園に決定した場合は、サンフレッチェ広島のクラブ経営を預かる身としまして、新しいスタジアムをフランチャイズとして使わないという考えであります。また、将来的なクラブやサポーターの発展が望めない以上、私もエディオンもみなと公園プランに投資する考えはございません。以上が当社が提案するスタジアムの建設プランです。

 このスタジアムは、紙屋町、基町一体の再開発の見据えたプランとするのがふさわしいと考えています。この付帯施設の部分については県や市の行政計画、あるいは法律面など多岐にわたる検証が必要になってくると思います。今後スタジアム建設の議論が、利用者すべての視点も踏まえ、もっと深まることを期待します。みんなのための、みんなのスタジアムならば、関係者の声を聞いて議論を尽くしてほしいと思います。

 これが切実な思いです。私もこのような提案をしたということで、進退も視野に入れながら本日は臨んでいます。広島市民球場跡地に、にぎわい広場を作る計画も同様で、スタジアムも跡地には作らないとされた場合でもにぎわい広場の使い方が最適なのか議論をしっかり尽くしてほしいと思います。以上が提案です。

市民球場跡地、広島みなと公園などの位置関係 ©2016 Google、ZENRIN

市民球場跡地、広島みなと公園などの位置関係 ©2016 Google、ZENRIN

<質疑応答>
――再確認ですが、みなと公園の計画が採択された場合は、サンフレッチェ広島として使用するつもりはないのか確認したい。

久保 使うつもりはございません。

――一方で、市民球場として使われていた経緯はありますが、被爆70年以上がたち、鎮魂の場となっている場の近くでサッカーの試合や催し物、コンサートなどが行われる違和感があるという声もある。そういった方々にはどうやって説明をしていくのか。

久保 いろいろな考え方があると思いますけど、それは私が市民球場のちょうど前、いまのエディオンの新本店のところで、中学2年生まで住んでおりました。本当にあの頃はにぎわいがあり、楽しい思いもいっぱいしてきました。それが地域の勢いにもなる。いろいろな意見はあります。私があのエリアに住み、私の母、そしておじいちゃん、おばあちゃんから被爆の体験を聞いて、その中で広島市民球場の位置づけは非常に強いものがある。復興の一つのシンボルとして市民球場が愛された。いろいろな意見はあるにしても、サッカースタジアムが一つの起爆剤となって、あのエリア一体がスポーツ、文化のイベント、そしてにぎわいの広場となるよう議論を尽くしていきたい。十分理解をしていただけるように精いっぱい努力をしていきたい。

――3月中に広島県、広島市、広島商工会議所の3者がトップ会談を開き、最終的な案を決めますが、それが差し迫ったタイミングでこの案を出されたのはなぜですか。

久保 我々の声を全然聞いてもらえていない。広島カープのマツダスタジアムについては球団の意見を聞かれたが、建設協議会が終了後、使用者のサンフレッチェについて何も意見を聞かれない。相対的に考えて、みなと公園に建設が決まった場合は、以前から「採算が合わない」と言ってきたが、今回、県や市から出た試算に対して、その試算を忠実に入れ込んでも、最大で4億7000万円の赤字が出る。そこに決まった場合はいけない。我々の意見は聞いてもらえない。じゃあ、いま話をするしかないということで、今回の提案をするに至りました。

――掘り込みなしで140億円の建設可能とあるが、それはなぜですか。

久保 建築の専門家に作っていただいた。どこかは言わないが、十分検証し、掘り込みがなくても十分可能だということだった。

――半年前とか、なぜ早く提案をしなかったという声もありますが。

久保 それはずっと言ってきたつもり。でも誰も意見を汲み上げてくれなかった。逆に、なぜ旧市民球場跡地ではいけないのですか。意見を聞かせてほしい。私、個人の意見ではなく3者の作業部会で、3万人という規模だとキャパシティーが狭い。高額な税金が投入されるという見解。私もなぜ、市民球場跡地ではいけないのか、あまり明確な答えがもらえない。実際に数字をはじいてみると、2年間で債務超過になる。もし皆さんが経営者だったら、口を出さずにはいられないのではないか。それを強く言いたい。このまま向かった場合、我々としては早めに話をしないといけないと思った。3月3日の午後3時は私のこだわりです。

――みなと公園では赤字、旧市民球場跡地では黒字というこの差はどこから出てきているのか。どういう要素なのか。

久保 建設費用としては同じように140億円前後だけれども、私も耐震構造などは専門家ではないから分からないですが、くい打ちをしっかりするとか、そういったところで180億円かかると聞いている。建設費用の大きな違いは、みなと公園は埋め立て地なので、基礎をかなりしっかり造らないといけない。

――みなと公園に作ったとしてもフランチャイズとして使用しないというのは、みなと公園優位という今の状況では、かなりインパクトが強いが、話し合いなどの試みはされてきたのか。

久保 それはない。

――湯崎知事からこの提案について先日、「理解に苦しむ」という発言がありましたが、その点に関しては。

久保 湯崎知事があのような発言をされましたけど、私としては逆に純粋な気持ちでわれわれの意見を聞いてくれないことを理解に苦しむ。

――今回2万5000人規模を想定されているのはなぜか。

久保 3万人というのは一つの基準としていまの協議会の中で出ていたり、あるいは広島県サッカー協会が4万人を基準にしたりしていたが、逆にFIFA(国際サッカー連盟)であるとかいろいろ確認すると、2万人以上でも、席の幅、前後の間隔などがFIFAの一定の基準を満たしていれば国際試合をできるという裏が取れたので、2万5000人でも十分、国際試合は可能であるとした。我々は当初から2万5000人~3万人と言ってきている。

――高校、小学生の大会を運営している。今は第一球技場で試合をしているが、平和公園近くなら平和学習ができる。サンフレッチェが独占的に使うなら残念。小学生、中学生、高校生の大会でも使えるのか。

久保 今回は芝の状態を考慮し、年間80試合としているが、その中には高校年代の大会の決勝、小学生やジュニアなどいろいろなクラブの大会の決勝、それからジュニアユースの年代のゲームもできるようなことも考えている。大学の大会の準決勝、決勝の試合も組んでいけるのではないか。

――この構想はマツダも賛同されているのか。

久保 まだ詳しくは話はしていない。でも提案することは話している。賛同して頂けると思う。

――今後は3者との話の場を持つつもりはあるのか。

久保 話し合いの場があるのであれば私は喜んで説明に参加する。積極的に思いを伝えていくことに変わりはない。

――資金調達は大事だと思うが、今回はマツダスタジアムの際のスキームを基にしているのか。

久保 いろいろなスキームを基にしているが、今回大きな違いは、県と市からの補助金がゼロであるということ。(大阪府の)吹田スタジアムをベースに考えている。費用をあのエリア一体をスポーツ文化、老朽化している科学館であるとか、いろいろなスポーツ施設などの改装に使ってもらい、市民が生涯学習としてあのエリア一体が新しく開放的に使えることを望んでいる。にぎわい広場として広島市として23億円拠出すると聞いているが、そのような拠出の金額も、あのエリア全体のスポーツ文化拠点として新しい施設を増やし、広島の起爆剤となればと思い、今回のスキームは県と市の補助金をゼロとした。

――3者は「旧市民球場跡地は都市公園法の関係で複合開発が難しい」とするがどうクリアするか。

久保 詳しくは分からないので、いろいろなところと調整をしながら、いろんな意見を聞きながら、私自身精力的に動いていきたい。まだまだ十分つかめていないので、回答は控えさせていただきたい。

――みなと公園に決まった場合、フランチャイズとして使用しないと言われたが、その場合はエディオンスタジアム広島を利用するのか。

久保 みなと公園では採算ベースに合わない。そして試算すると2年後に債務超過になる。私自身18年間、サンフレッチェを経営してきて、その間、苦労の連続だった。また債務超過に陥ることは避けたい。もし、みなと公園に決まった場合、興行事業では身の丈に合った経営が大事。私がサンフレッチェの社長を受けた時、12億円あった選手の人件費を7億円まで落とした。相当苦労した、そして、7年後、10年後を見据えてアカデミーを強化した経験がある。旧市民球場跡地が使えないことが決まってしまえば、エディオンスタジアム広島を使わざるを得ない。

――進退を視野に入れながらとあったが、それはサンフレッチェ広島の会長という立場でしょうか。

久保 それくらいの重みを持って今回の提案をしています。

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サンフレッチェ広島 Hiroshima Peace Memorial Stadium】
http://www.sanfrecce.co.jp/peace_stadium/

【3月18日/サッカースタジアム建設プランにかかる関係者との協議状況について】
http://www.sanfrecce.co.jp/news/release/?n=9312&m=3&y=2016

【3月23日/広島みなと公園サッカースタジアム(案)における使用料の考察】
http://www.sanfrecce.co.jp/news/release/?n=9323&m=3&y=2016

【3月28日/サンフレッチェ広島から県知事・市長・商工会議所会頭との四者トップ会談の開催要請状況について】
http://www.sanfrecce.co.jp/news/release/?n=9336

【3月29日/県知事・市長・商工会議所会頭からの共同コメント発表を受けて】
http://www.sanfrecce.co.jp/news/release/?n=9343&m=3&y=2016

第1回 広島ビッグアーチが長らく抱え続けてきた問題点
第2回 広島における都市計画失敗の歴史
第3回 久保允誉会長が推し続けた専用スタジアム建設への思い
第4回 旧広島市民球場跡地の利用法を巡る議論
第5回 新スタジアム建設のために考えるべきこと

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