[ワールドサッカーキング 0103号 掲載]
悲劇的な形でのタイトル喪失、ユーロでの早期敗退……、
ウェイン・ルーニーの2012年は決して順風満帆ではなかった。
それでも彼は、変わらずサッカー界の主役であり続けた。
悲喜こもごもがあった激動の1年を本人自ら振り返る。
インタビュー=クリス・ヘザラル
翻訳=田島 大
写真=兼子愼一郎
タイトル喪失の瞬間を今でも覚えてる
2012年も残りわずかとなったけど、今回はこの1年を改めて振り返ってほしい。今年の始めにはポール・スコールズの現役復帰というサプライズがあったね。
ルーニー(以下R)―誰も知らなかったし、あれは驚いた。試合に帯同しているだけだと思っていたら、急にユニフォームに着替え始めたんだからね。22番という背番号には違和感があったけど、みんなが彼の復帰を歓迎した。戻って来てくれてすごくうれしかったし、これからも彼の力が必要になるんじゃないかな。
昨シーズンはタイトルを目前にしながら、最後の最後でマンチェスター・シティーにリーグ優勝をさらわれてしまった。
R―タイトルを失った瞬間を今でもはっきりと覚えてる。あれは二度と経験したくない感情だよ。自分たちがサンダーランドに勝って、あとはシティーの結果を待つだけだった。ロスタイムに入った時点でシティーの1点ビハインドと聞いていたから、連覇を確信していたんだけどね。
2チームは勝ち点で並び、最後は得失点差の争いだった。
R―今シーズンはチームとしてもっとゴールを決めないといけないと思ってる。監督も「ちゃんととどめを刺せ」といつも言ってるよ。リードを奪った後も攻撃の手を緩めず、攻め続けてもっとゴールを決めようってね。
夏に開催されたユーロも結果は残念なものだった。ベスト8という成績をどう捉えている?
R―残酷な形での敗退に全員が失望したよ。PK戦での敗戦というのは、誰だろうと惨めな気持ちになってしまうもんさ。でも、俺たちは顔を上げなくちゃいけない。あの経験が次のトーナメントの助けになるはずだからね。
心機一転で新シーズンを迎えたものの、開幕2戦目で太ももに裂傷を負った。ひどいケガだったね。
R―確かにあれはおぞましいケガだった。医者も「もっと深刻な事態になっていてもおかしくなかった」と言っていたよ。傷口が開かないように注意する必要があって、復帰までは苦労した。まあ、今はコンディションもいいし、フレッシュな気分だけどね。
ケガから復帰した後、10月中旬までゴールがなかった。心配にはならなかった?
R―ゴールがないことは全然気にしてなかった。ウチには自分以外にも点を取ってくれる選手がたくさんいるからね。ゴールというのは、決まる時は簡単に決まるもんさ。だからチームが勝っている限り、不安にはならないんだ。
今夏のウチの補強はタイトルへの意思表示
今シーズンはロビン・ファン・ペルシーと香川真司が加入した。一時は君でさえ、レギュラーの座を確約されてなかったよね。
R―今は一つのポジションを大勢で争っている状態だけど、あれだけのクオリティーを持った選手が加わったんだから当然さ。チームにとっては、むしろ健全なことだよ。それに、監督が必要な時にメンバーをいじれるというのは大きな強みだ。シーズンは長いし、ゲームも多い。休みながら戦うことも必要なんだよ。
FW陣は君とファン・ペルシーの他に、ダニー・ウェルベックとハビエル・エルナンデスもいる。
R―俺たちは全員違ったタイプだから、誰とコンビを組んでも楽しいよ。ダニーはサイドでも前線でもプレーできるし、チチャリート(エルナンデスの愛称)は相手の裏のスペースを突くのがうまい。そして、ファン・ペルシーはもう説明する必要がないよね。
香川はどう? 彼はチームに何をもたらしたのかな?
R―シンジは優秀だよ。チームになじむのも早かった。互いにケガをしてしまって、まだ数試合しか一緒にプレーできていないけど、いずれエキサイティングな連係プレーを見せられると思う。
香川の離脱もあって、今シーズンの君はトップ下でプレーする機会が多い。ストライカーとしてプレーするのと比較して、どちらがしっくりきている?
R―正直、どっちでもいいと思ってる。もちろん、前線でプレーしたほうがゴールチャンスは多いけど、トップ下ではボールに触る回数が増えるから、今のところは楽しんでやってるよ。常にプレーに絡まなくちゃいけないからスタミナが必要だけどね。
チームはリーグの首位を走っているけど、先制点を奪われる試合が多い。試合運びのまずさは今のチームの悩みの種なのでは?
R―イエスと言わざるを得ないね。俺たちは大抵の試合でゲームをコントロールしているのに、先にゴールを決められて試合を難しくしている。原因はまだはっきりと分からないけど、いつか止めないといけないと思ってる。
前半戦はチェルシーやシティーとの直接対決に勝利した。彼らを抑えて優勝できるかな?
R―そうなることを願ってる。今はロッカールームの雰囲気もいいし、チーム内にタイトルを奪い返そうというエネルギーを感じる。何より、今夏のウチの補強はタイトル奪還へ向けての大きな意思表示になった。
リーグタイトルはもちろんだけど、チャンピオンズリーグ制覇も大きな目標だよね?
R―CLはすごい大会だよ。グループステージの最後の2試合を見てもらえば分かると思うけど、100パーセントの力を出さないと勝たせてもらえないんだ。
今年はピッチ外でうれしいニュースがあった。二人目の子供が生まれるそうだね。
R―そうなんだ。10月に俺とコリーンが発表した通りさ。産まれてくる日が本当に楽しみだね!
10月のサンマリノ戦では代表チームで初めてキャプテンマークを巻いた。うれしかったでしょ?
R―ウェンブリーで代表のキャプテンを務めるのは、最も誇らしいことさ。子供の頃から夢見てきたことが現実になって、本当に名誉に感じた。一生、大切にしたい思い出だね。
君がキャプテンを務めたのは、スティーヴン・ジェラードの出場停止とジョン・テリーの代表引退がきっかけだった。人種差別発言の容疑を掛けられていたテリーのことをどう思う?
R―俺が言えることは、彼がこれまで代表に多大な貢献をしてきたってことさ。本人が引退を決めたわけだから、彼の決断を尊重しないといけない。ただ、テリーの不在は間違いなく代表にとって痛手だ。彼とパウロ・マルディーニは、俺がこれまでに対戦した中で最もタフなDFだからね。
代表チームでの目標は? ブラジル・ワールドカップの予選は既に始まっているけど。
R―まだブラジルには行ったことがないから、あの国でW杯の舞台に立てたら特別なことさ。まずはしっかり予選を戦って、本大会行きを決めたいね。
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