2012.10.06

【コラム】長友佑都 「世界一のサイドバック」になるために必要なこと

ワールドサッカーキング増刊 カルチョ2002 1015号掲載]

「世界一のサイドバック」になるために必要なこと

  もしヨーロッパリーグで早期敗退を喫して、選手が余るようなことになったら? あまり考えたくないケースだが、それでも長友の重要性が無視されることはないだろう。左サイドバックのポジション争いのライバルとして最も有力なのはペレイラだが、彼は中盤の左ボランチとして起用されている。クリスティアン・キヴはサマーキャンプからずっとセンターバックとして使われており、エムバイェは先述の通り経験不足。本来はセンターバックのフアン・ジェズスを左サイドバックで使った試合もあったが、十分な出来ではなかった。そしてサネッティは、今シーズンはマイコンの抜けた穴を埋めるべき右サイドバックでプレーすることになりそうだ。

 ペレイラは中盤の左サイドで素晴らしいプレーを披露していて、ここが主戦場になりそうな様子。ローマ戦を見る限り、指揮官はペレイラの攻撃的資質を生かそうと考えているように思える。そのローマ戦、チームは1-3で敗れたが、ペレイラと長友のコンビネーションは悪くなかった。長友としては“自分のプレー”に集中するとともに、ペレイラとの連係を高めていくことで、左サイドバックとしての自身の地位を高めていくことができる。

 連係という点で言えば、ペレイラだけでなく、スネイデルやカッサーノを含めた左サイド全体のコンビネーションをいかに高めるかが重要となる。もともと、スネイデルの卓越したキープ力は、長 友の攻撃参加を引き出すのに大いに役立っていた。今シーズンは、キープとパスという点ではスネイデルに匹敵するカッサーノが加わった。ご存知の通り、カッサーノは左サイドに流れて起点となるプレーを得意とする。スネイデルとカッサーノの2人がチャンスメークの大きな部分を担うのは間違いない。そこにペレイラと長友が交互に絡んでいく形を確立できれば、インテルは極めて強力な武器を手にするだけではなく、長友としてもスピードに乗った突破という自分の武器を最大限に生かせる状況が生まれることになる。

 長友がイタリアで最初に出会った監督、マッシモ・フッカデンティは、長友の攻撃的資質を最大限に評価するとともに、「攻守のバランスを状況に応じて使い分けることが必要だ」と指摘している。つまり、どれだけ攻撃参加が得意であっても、DFである以上は背後のケアが重要で、自分が攻め上がることで生まれるスペースを相手に利用されないための方法論を用意しなければならないということだ。そういう点では、スネイデルとカッサーノのボールロスト率の低さは長友が積極的に前に出る上での保証となるし、カバーリング能力に長けたペレイラの存在もリスク管理としては有効である。

 そうなると、次に重要なのは、長友が得意の攻撃参加をゴールという結果に結びつけられるかどうか。一般的に長友が批判される時は一対一での対応だったり、カウンターを浴びた場面でのポジショニングやコース取りなどディフェンス面の弱さを指摘されることが多い。それでも彼が守備のできない選手という見方は間違っていると私は思う。敗れたローマ戦でも、相手チームで最も精力的なマッティア・デストロ、ドリブル突破に自信のあるエリック・ラメラとのマッチアップで完勝していた。そう、長友の守備は実は相当高いレベルにあるのだ。だが一方で、攻撃面での精度をもっと高める必要があると私は見ている。

 スピードに乗ったオーバーラップは大きな魅力だ。身長は低いが足腰の粘り強さは相当なもので、ドリブルで並走する状態に持ち込めば当たり負けせずにグイグイと突破していく。俊敏性も申し分なく、トップスピードから切り返されたら、相手DFは対応できない。そしてドリブルは縦一辺倒ではなく、中に切り込むタイミングを適切に見極めることができる。ところが、突破した後のプレー精度が低い。カットインで相手を振り切ったのにシュートが枠から大きく外れたり、クロスが無人のファーサイドに飛んだり……。キックの精度を高める必要もあるし、その瞬間に落ち着いていられる冷静さも求められる。50メートルを駆け抜けた後に最高のキックを蹴るだけの筋力も必要だ。長友が「世界一のサイドバック」になるために必要なのは、守備よりも“フィニッシュのプレー精度”だと思うが、読者のみなさんはどう考えるだろうか。