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【静岡ダービー直前企画】山本昌邦(元磐田)×長谷川健太(元清水)「静岡ダービーを再び日本の頂上決戦に」

2012.10.02

Jリーグサッカーキング11月号掲載】

 

ジュビロ磐田の前身ヤマハ時代からクラブに携わってきた山本昌邦氏。“サッカー王国”清水でレジェンドと称される長谷川健太氏。選手として、指揮官として静岡を二分するプロサッカークラブを知り尽くしている二人だからこそ、語れることがある。その歴史、熱気、そして対戦相手としてもしのぎを削った元指揮官の特別対談をここに──。

 

インタビュー・文=青山知雄(本誌編集長)

 

写真=新井賢一

 

最初はエスパルスをライバル視する余裕はなかった(山本)

 

山本さんは静岡県の沼津市で生まれ育ちジュビロ磐田の前身であるヤマハでプレーしました。長谷川さんは静岡県清水市出身で日産自動車を経て、地元清水エスパルスで活躍されました。サッカー王国と呼ばれる静岡において、”静岡ダービー”はどのようなものだと思われていますか。

 

山本 ”静岡ダービー”を語る上で、ジュビロ、エスパルスというチームが生まれるにあたっての歴史は欠かせないですよね。ジュビロの前身はヤマハで、JSL時代には浜松市を拠点にした本田技研との”天竜川決戦”がリーグを盛り上げていた。そしてJリーグ発足に合わせてエスパルスが誕生し、初年度からプロリーグに参入。一方のジュビロは諸事情でリーグ初年度の参入がかなわなかった。そういう因縁もあるわけですよね。

 

長谷川 私はね、”天竜川決戦”に関しては正直に言ってそこまで記憶にないんですよ。どちらかというと、サッカーは見るものじゃなくて、やっているタイプでしたから。でも、当然静岡県のサッカー人として”天竜川決戦”がとても盛り上がっていることは知っていましたよ。ただ、清水は県中部ですし、磐田と浜松は西部地区だったので、試合を見に行くことはなかったですけど。

 

山本 当時の”天竜川決戦”はもう、バッチバチだったんだよ。親会社同士の戦いでもあったからね。健太みたいな清水の優秀なサッカー青年は、みんな日産や読売みたいな給料のいい東の方角を向いて東京を目指していくんだよ(笑)。

 

長谷川 そんなことないですよ(笑)。当時はヤマハさんからも誘っていただいたんですが、そっちのほうが条件が良かったような気がしますし。

 

山本 じゃあ、どうして日産に行く決断をしたの?

 

長谷川 筑波大出身なんですけど、進学するまで大学が東京にあると思っていて、行ってみたら茨城県で「清水よりのどかな街なのか」と思ったんですよね。当時は若い青年でしたから。都会に対する憧れがあったんですよ。静岡にはいずれは戻りたいなとは思っていましたけど、「もう少し先でもいいかな」というのが正直な気持ちで(笑)。

 

山本 そこでプロリーグができて、地元に凱旋するわけだ。清水にはそれまでチームがなかったから、求心力のある選手が欲しかったんだろうね。その当時だって結構因縁が生じる要素はあったんだよ。カツミ(大榎克己/現清水ユース監督)だって、当時はヤマハの選手だったわけだし。

 

長谷川 そうでしたね。エスパルスは全くのゼロからスタートしたわけで。プロリーグ発足にあたって地元の清水からオファーをいただき、「帰るならこのタイミングだ」と移籍を決断しました。

 

山本さんは当時、ヤマハでコーチをしていらっしゃいました。Jリーグ参入を目指しながら、「エスパルスに先に越された」という忸怩たる思いもあったのではないでしょうか?

 

山本 ヤマハはJリーグに参加するチームよりも直前のリーグで上の順位にいたんですよ。戦えるだけの人材、チーム力は備わっていた。ただし、様々な諸条件が整わずに加入が実現しなかった。僕はJリーグから「初年度の10チームから落選した」という電話が入った瞬間に立ち会っていましてね。地元密着というJリーグの理念に届かなかったのが落選の理由だったし、まだまだ努力しなければと感じましたね。まずはとにかく現有戦力を引き止めて、良い成績を残して、Jリーグに再チャレンジしようという気持ちでいっぱいでした。夜な夜な練習後に選手をコーヒーショップに連れ出して説得したものです。「頼む。残ってくれ」とね。だから、現場としてはエスパルスのことをライバル視する余裕はなかったんです。自分たちのことで精いっぱいでしたからね。そういう時期があったからこそ、磐田もサッカーどころとして認められてきた歴史があるわけです。

 

長谷川 エスパルスとしても、ジュビロが上がってきたタイミングで「Jリーグの先輩として」という意識はなかったですね。もともと力のあるヤマハという前身のクラブがあって、Jでも十分戦えるだけの戦力を持って正式に参入してきたわけですから。逆にジュビロは悔しい思いをして昇格してきたわけです。そういった気迫にエスパルスが気押されることもあったと思い出します。Jリーグブームに乗って勢いがあった時には好成績を収めることができましたが、一度歯車が狂ってしまうと、立ち返る土台がまだなかった。そういう苦しい時期にジュビロの底力をよく感じましたね。

 

激闘 静岡ダービー Jリーグサッカーキング2012年11月号

Jリーグサッカーキング最新号

 9月24日発売のJリーグサッカーキング11月号は、伝統の静岡ダービーを大特集! 10月6日(土)に開催される大一番を前に、ジュビロ磐田、清水エスパルスの両クラブの思いを徹底的にクローズアップしました! 巻頭二大インタビューでは両チームのエースが登場。山田大記(磐田)と大前元紀(清水)の両選手がそれぞれダービーやライバルに対する意識を語ってくれています。また、チームへの思いが人一倍強いユース出身選手の言葉もピックアップ。山本康裕選手、エスパルスの山本海人選手のインタビューでは、生え抜きの2人ならではの熱い思いが満載。両チームの全選手に取材を敢行したダービーへのコメント集も要チェックです。

 また、今回はクラブとともに叩き続けてきたサポーターの方々にもフィーチャーしました。アンケートを実施した両クラブのサポーターが選ぶ静岡ダービー名勝負ベスト5の結果、そして直撃取材で聞いたダービーに懸ける思いを掲載しています。その他、両チームをよく知る豪華な面々も登場。澤登正朗さんと名波浩さんのレジェンド特別対談や、両チームでプレー経験を持つ山西尊裕さんインタビュー、山本昌邦さんと長谷川健太さんの元指揮官対談では、ダービーの歴史や知られざるエピソードが満載です。ぜひ、ご一読ください。

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