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【静岡ダービー直前企画】大前元紀(清水)「ジュビロだから負けたくない。理由はそれだけ」

2012.10.04

Jリーグサッカーキング11月号掲載】

 

この男、”お祭り男”だ。日本中の注目を集めた高校選手権での活躍、そして静岡ダービーがプロデビュー戦。4月の対決では2ゴールを挙げ、存在感を示している。プロ入り5年目――。清水エスパルスのレジェンド候補が、すごみを増してきた。

 

インタビュー・文=飯竹友彦

 

写真=兼子愼一郎

 

僕、ダービーにはかなり縁があるんですよ

 

突然ですが、こんな質問から始めさせてください。大前選手にとってのダービーとは?

 

大前 清水エスパルスとジュビロ磐田の試合。最近は日本中にいろいろなダービーマッチがあるけど、「ダービー」と言われたら、まずエスパルスとジュビロだと思う。

 

大前選手は2008年5月25日のヤマザキナビスコカップ予選リーグ第4節の静岡ダービーがプロデビューでしたね。

 

大前 そうですね。よく覚えています。しかも僕、ダービーにはかなり縁があるんですよ。1年目はそもそもJリーグの公式戦に5試合しか出ていないのに、そのうち3試合がダービーでした。ナビスコ杯のホームとアウェイに加えて、リーグ戦のアウェイも。だから個人的にはジュビロとのダービーでの出場率が高いんですよ。1年間の4試合で、出なかったのはリーグ戦のホームゲームだけでしたからね。

 

確かその週はトゥーロン国際大会で北京オリンピック世代のU―23日本代表メンバーが不在となり、主力選手にもケガ人が出ていたこともあって、練習から大前選手に出番が回ってくる雰囲気もありましたよね。

 

大前 僕も1年目はU―19日本代表に呼ばれていたこともあって、エスパルスの練習で試合のメンバーと絡む時間も少なかったんですが、その時期は代表招集もなくてチームでしっかり練習できていたこともあって、出場のチャンスが巡ってきた感じですね。それが本当にたまたまダービーだったんです。

 

プロデビュー戦は交代出場でした。緊張はしましたか? その時の雰囲気は覚えていますか?

 

大前 覚えていますよ。でも、そんなに緊張するタイプではないんですよね。ただ、プロとして初めて出たという記憶は強く残っているし、(名前が)呼ばれた時にスタンドから歓声が上がったのは覚えています。あのザワザワとした感じはすごく印象深いし、見てくれていたサポーターはいまだに当時の雰囲気を言ってくれますね。

 

実際にダービーを経験して大前選手が感じたものは?

 

大前 清水で1年目からダービーに出たし、試合に出ていない時でも、スタンドで見ていると静岡ダービーはやっぱり違うなという感じを受けました。他のダービーと言われている試合よりも盛り上がっていると感じるし、やっぱりサポーターの熱が違うなと感じましたよ。

 

試合前には横断幕などが飾られて練習場の雰囲気も違います。

 

大前 のぼりもたくさんありますね。初めて見た時はすごいなと思いました。サポーターの皆さんが練習場に朝早くから来て、張ってくれているのも知っています。それだけジュビロに負けたくないんだなという気持ちを感じます。こういう体験ができていることはすごく貴重だと思いますし、ありがたいですね。

 

ダービーとそれ以外の試合、何が違うのでしょうか?

 

大前 もちろん人の多さが違うし、サポーターの声の大きさも違う。それが僕らのモチベーションにもつながるし、プレーしている選手も「違うな」と感じてやっていると思います。

 

これまでは長年在籍していた伊東輝悦選手や市川大祐選手などダービーをよく知るベテラン選手がいました。これまで頼っていたところが、”頼られる”存在に変わってきた部分もあると思います。

 

大前 確かに僕が1年目の時を振り返ってみると、もう(山本)海人くんくらいしか残っていないですからね。そういう意味では自分の中では自覚や責任感を持って取り組んでいかなければいけないと思う。下の世代の選手もすごく増えてきて、年齢で言えば真ん中ぐらいの位置にいるので、チームを引っ張る気持ちは出てきています。僕のポジションなら、ゴールに絡んでチームを引っ張っていければいいかなと思いますし。

 

ダービーという特別な感覚も若いチームに伝えていかなければいけないと?

 

大前 そうですね。平岡(康裕)くんや(杉山)浩太くんもいます、僕もチームに長くいるし、ダービーに対する特別な思いもあるので、伝えていかなければいけないという気持ちはあります。

 

市川選手や伊東選手から、ダービーに関して何か話をしたことはありますか?

 

大前 そういう話をわざわざしたことはないです。むしろ肌で感じることのほうが多かった。2年目なんて自分は全然試合には出ていなかったけど、他の試合を見ていて思うことと、ダービーのスタンドやサポーターの雰囲気は違うなと感じるところがありました。

 

エコパでもホームの雰囲気を作ってもらいたい

 

ダービーはお互いのプライドを懸けた重要な試合です。一方で「長いシーズンにおける34分の1」という言い方もできますが、大前選手の見解はいかがですか?

 

大前 両方だと思います。もちろん、リーグ戦において「34分の1」という計算は間違いないです。でも、僕らもそうだけど、周りの人はある意味僕ら以上にダービーという意識を持っていると思う。僕はエスパルスに来て5年目ですが、もっともっと長い歴史がある。それを見てきた人がいる。試合前になると、そういう熱を僕らも感じて、気持ちが盛り上がっていくんです。

 

当然、ダービー前は練習後にサポーターから声を掛けられる回数も違いますか?

 

大前 いつも以上に声を掛けられます。「ダービーには絶対に負けないでください」とか、老若男女を問わずに強く言われます。普段なら「試合、頑張ってくださいね」とかだけど、ダービー前はそういうところからして全然違います。だから試合までにモチベーションはかなり上がりますよね。もともとジュビロには負けたくないと思っているし、ダービーは意識している。サポーターの人がもっと負けたくないと思っているから、その気持ちが伝わってさらに熱くなります。

 

そういったサポーターの応援はプレッシャーにならないですか?

 

大前 プレッシャーと言うよりも、危機感のほうが強いですね。ダービーでジュビロに負けたら、絶対にサポーターからブーイングされる。でも、それは悪いプレッシャーではないんです。それを良い方向に変えていく。いい意味での重圧がチームとしても力に変えられていると思うし、変えられているからこそ4月の対戦でも逆転勝ちできた。そこからチームも調子を上げましたし、やはり34試合の中の単なる一試合という捉え方はできない試合です。そういった力を次のダービーでも出したいと思っています。

 

ダービーで磐田と対戦する際に、何か心掛けている点はありますか?

 

大前 ジュビロに対しては、サイド攻撃に警戒が必要ですね。中に詰める人が強いので、しっかり対応しなければいけないです。前田(遼一)さんには分かっていてもやられてしまう可能性があるし、サイドでは駒野(友一)さん、中盤では山田(大記)くんなど、攻撃面で危険な選手がいっぱいいる。山田くんは完璧に司令塔として定着していますし、ジュビロには優れた選手がいっぱいいるイメージです。技術の高い選手が試合をコントロールしてくるので、ボランチのところをしっかり潰すのも大事になってくる。センターバックは誰が出てきてもヘディングが強いイメージがあります。

 

では、逆に攻撃時の狙いは?

 

大前 対戦前に言える範囲では、あまりないですね(笑)。ただ、前回のダービーで僕が点を取った時は、裏への抜け出しに対して相手があまり見えていなかったと思う。今回もそういう裏のスペースは狙っていきたい。サイドバックの駒野さんが攻撃的に上がってくるので、その空いたスペースも突いていきたいとは思います。

 

強敵の磐田ですが、清水が「ここは負けていない」という部分はありますか?

 

大前 もちろんサッカーでは負けていないと思いますが、それ以上にスタジアムは絶対にうちのほうがいい。アウスタの雰囲気とピッチの芝は絶対に負けていないと思います。だからサポーターの皆さんには、次のエコパでもホームの雰囲気を作ってもらいたいですね。4月のダービーでは勝ちましたけど、そこから半年くらい時間がたっているので、お互いに違うチームになっていると思う。もちろん今回も勝つつもりだし、勝てると思って取り組んでいるので、自信を持って臨みたいと思います。

 

激闘 静岡ダービー Jリーグサッカーキング2012年11月号

Jリーグサッカーキング最新号

 9月24日発売のJリーグサッカーキング11月号は、伝統の静岡ダービーを大特集! 10月6日(土)に開催される大一番を前に、ジュビロ磐田、清水エスパルスの両クラブの思いを徹底的にクローズアップしました! 巻頭二大インタビューでは両チームのエースが登場。山田大記(磐田)と大前元紀(清水)の両選手がそれぞれダービーやライバルに対する意識を語ってくれています。また、チームへの思いが人一倍強いユース出身選手の言葉もピックアップ。山本康裕選手、エスパルスの山本海人選手のインタビューでは、生え抜きの2人ならではの熱い思いが満載。両チームの全選手に取材を敢行したダービーへのコメント集も要チェックです。

 また、今回はクラブとともに叩き続けてきたサポーターの方々にもフィーチャーしました。アンケートを実施した両クラブのサポーターが選ぶ静岡ダービー名勝負ベスト5の結果、そして直撃取材で聞いたダービーに懸ける思いを掲載しています。その他、両チームをよく知る豪華な面々も登場。澤登正朗さんと名波浩さんのレジェンド特別対談や、両チームでプレー経験を持つ山西尊裕さんインタビュー、山本昌邦さんと長谷川健太さんの元指揮官対談では、ダービーの歴史や知られざるエピソードが満載です。ぜひ、ご一読ください。

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