伝統の一戦“クラシコ”
[ワールドサッカーキング 1004号掲載]
ハビエル・マスチェラーノは今やバルセロナにとって欠かせないピースだ。センターバックとしてチームの守備を統率する28歳のアルゼンチン人は、今シーズンの覇権奪回に向けてどのような策を練っているのか。
インタビュー・文=セルヒオ・レビンスキー 翻訳=工藤 拓
バルサの根底に流れる哲学は何も変わらない僕らに迷いはない
君はバルセロナに来て、ピボーテからセンターバックにポジションを変えた。それまでとは異なるポジションでのプレーに苦労はない?
マスチェラーノ 最初のうちは難しかった。何せ突然のことで、全く準備していなかったからね。初めてセンターバックとしてプレーしたのは、ドネツクで行われたチャンピオンズリーグのシャフタール戦で、2度目は(レアル)マドリーとのコパ・デル・レイ決勝だった。つまりどちらも非常に難しい相手だったんだ。でも今思えば、あの経験は自分のためになったと感じている。強い相手との対戦で信頼を得られなければ、これほどプレー機会を与えられることもなかったはずだからね。
君が中盤でプレーするのは、最近ではアルゼンチン代表での試合だけだ。
マスチェラーノ そうだね。アレハンドロ(サベージャ代表監督)は僕に、中盤でプレーすることを望んでいるとはっきり言ったんだ。もちろん、本職だから最高のプレーを見せるつもりだ。僕にとって複数のポジションで信頼されるということはとても大きい。監督に選択肢を与えられるわけだからね。
バルセロナからジョゼップ・グアルディオラが去ったことで、チームに悪影響は出ていない?
マスチェラーノ チームは今まで通りのプレーを続けているよ。新監督はペップ(グアルディオラの愛称)のアシスタントを務めていたわけだし、退団した選手だってセイドゥ(ケイタ)だけだ。もちろんティト(ビラノバ)は自身の色を出しているけど、それはディテールの部分であってバルサの根底に流れる哲学は何も変わらない。僕らに迷いはないよ。
新監督のビラノバはグアルディオラほどの結果を残せると思う?
マスチェラーノ 僕らはティトがどれほどの知識を持っているのか、よく知っている。ペップにとってティトがどれほど重要な存在だったかも、全員が理解しているんだ。だから、僕らは新監督をこの上なくリスペクトしている。今シーズンだってきっと良い結果を残せるはずさ。
R・マドリーと戦ったスーペル・コパでは守備面の不安を露呈した。このことについてはどう感じている?
マスチェラーノ バルサは常にリスクを冒してレーしている。リスクの代償として守備組織が乱れる可能性はいつだってあるんだ。時には一対一での守備を強いられたり、広大なスペースをカバーすることになったりね。しかもトップレベルの選手をそろえたマドリーのような相手であれば、背負うリスクだって大きいし、守備陣に乱れが生じることも頭に入れておかないといけない。それでもリスクを冒して攻撃しようとするバルサの勇敢さを評価してほしいな。僕らはこれがベストの戦い方だと信じている。リスクを恐れていては何もできないからね。
バルセロナは今シーズン、どこに目標を置いて戦おうとしているの?
マスチェラーノ もちろん、すべてのタイトルを目指している。そのために必要なものは既にそろっているからね。
バルセロナとR・マドリーの選手の間に、ライバル心以外のいざこざやわだかまりはない?
マスチェラーノ すべてが通常の関係だ。どちらも強烈なプライドを持っているからライバル意識は激しいけどね。
君たちチームだけがタイトルを争い続けていけば、リーガは魅力を失ってしまうと考える人も多い。この意見について君はどう感じている?
マスチェラーノ 2強時代が永遠に続くとは断言できない。確かに近年、リーガのタイトルが2チーム間で争われてきたのは事実だ。でも、僕がイングランドにいた時だって、タイトルは(マンチェスター)ユナイテッドとチェルシーの間で争われていた。それが今は状況が一変したよね。同様に、イタリアでも勢力図は変わってきている。それに、リーガは誤解されている部分も多い。バルサとマドリーがその他のクラブに大きな勝ち点差をつけているからといって、どの試合も楽勝ってわけじゃないんだ。昨シーズンだってとても苦しい試合がたくさんあった。勝ち負けは常に紙一重の差で決まっているんだ。バルサやマドリーを脅かすクラブが突然出てきたって、不思議じゃないよ。
伝統の一戦“クラシコ”