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次々とヤングスターを生み出すアーセナルの育成理念…​​【2016夏キャンプ】来日コーチ陣の下で芽生える「自信」と「自覚」

2016.03.31
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 1886年に創設され、13回のリーグ優勝、12回のFAカップ制覇など、数多くのタイトルを獲得してきたプレミアリーグの名門アーセナル。1996年にアーセン・ヴェンゲル監督が就任してからはスピーディーで美しく、テクニカルなフットボールを展開し、世界中のファンを魅了してきた。

 また、若手の発掘と育成に手腕を発揮する指揮官の下、アカデミーからはジャック・ウィルシャー、ヴォイチェフ・シュチェスニー(ローマ)、フランシス・コクランらを輩出。また、セスク・ファブレガス(チェルシー)、セオ・ウォルコット、アーロン・ラムジーなど、若くしてクラブに加わった選手たちがヴェンゲル監督の下でトッププレイヤーへと成長を遂げた。

 クラブ全体で一貫したスタイルを目指すアーセナルは、ヴェンゲル監督の指導論をトップチームだけに留まらず、アーセナル・レディースやユースアカデミー、そしてアーセナル・サッカースクールにも導入。トップチームからアンダーカテゴリーまでが共通の理解を持ち、アーセナルのフィロソフィーをベースに指導を続けている。

 そして2016年夏、本国イギリスからアーセナル・サッカースクールのコーチ陣とネイティブの英語講師が来日。アーセナルの理念に基づいたトレーニングと、生きた英語に触れる貴重な機会が設けられた。今回はキャンプの主催者であり、イギリスで28年に渡りスポーツ+英語留学を手掛けているプレミアスポーツアカデミーさんに、アーセナル・サッカースクールを開講することになった経緯を伺った。

Arsenal v Singapore XI: Barclays Asia Trophy

――はじめに、今回はなぜアーセナルのスクールキャンプを開催しようというお考えに至ったのですか? 世界中には約30万のプロサッカークラブが存在すると言われていますが、アーセナルというクラブを選んだ理由を教えて下さい

 世界のサッカーをリードするヨーロッパの5大リーグ(スペイン、イングランド、ドイツ、イタリア、フランス)の中でも世界中の名選手が集まるのはプレミアリーグだと思います。攻守の切り替えが早く、スピーディーな展開は世界中のファンを魅了するリーグになっています。

 当然、そのプレミアリーグの中には育成に力を入れているクラブが沢山ありますが、一方で現代サッカーが商業化したこと、移籍市場がバブルを迎えたことにともない、長期育成よりも目先の勝利を優先する傾向が顕著になっています。それらの影響で度重なる各クラブの監督交代、有名選手獲得での短期的なチーム作りという方向性に向かざるを得ないという弊害が生まれてきています。

 育成という点に目を向ければ、かつてのマンチェスター・Uがそうであったように、監督が長期政権(長期的戦略)を築いてこそ、育成が充実するということが証明されています。アーセナルは5大リーグの中でも唯一20年という長期政権を維持しているクラブです。そして、アカデミーで育成した選手をトップレベルに育て上げ、トップ選手として成功に導くだけでなく、前述の商業的な意味でも、他のビッグクラブへ選手を売却することで高い利益を生むことに成功しているのです。

 また多くのクラブはアカデミーまではクラブが運営していますが、その下のスクールレベルは別組織で運営、あるいは外部に任せる手法をとっていることが多いです。しかし、アーセナルはスクールもクラブ内部に運営部門があり直接運営していることも大きなポイントと言えるでしょう。それによって、アーセナルというクラブが持つ理念を小さな頃から身につけることができます。それからもう一つ、どのリーグでも共通語である英語圏のイングランドにあるリーグであることは言うまでもありません。

Soccer Schools 3v3s 21 150607PAFC

――もう少し具体的にお話していただくと、アーセナルの理念とはいったいどのようなものですか? また、その理念を導入することでどのような技術を身に付けることができますか?

 アーセナルには「A」、「R」、「S」、「E」、「N」、「A」、「L」の7文字を元に、7つのフィロソフィー(理念)があります。

A – Attitude(姿勢/態度)
 サッカー選手としての可能性を広げるためにも、ピッチ内やピッチ外のどちらでも正しい心構えが不可欠です。また、技術を完璧にマスターするために、ポジティブであることや、物事に対して専念する強い気持ちが必要です。どんな状況におかれても、常に冷静で対処する必要もあります。

R – Respect(リスペクト)
 常にチームメイト、相手チーム、コーチ、そして審判をリスペクトすることを大事にしています。チームを最高の状態にするためにも、周りで努力してくれている人たちに感謝することはとても重要なことです。もし、相手を過小評価し、リスペクトできなければ、自身のレベルをも下げることになります。サッカーは、フェアプレー、激励、そして楽しみの精神でなければなりません。コーチからのアドバイスをしっかりと受けとめ、プレーの改善に生かす必要があります。そして、選手としても人としても成長するために、自分に自信を持つことを忘れてはいけません。

S – Skills(技術)
 アーセナルでは想像力やセンスを豊かにすること、そしてエキサイトメントや楽しさを与えるためには、技術が重要な鍵を握っていると考えています。技術はサッカーの面白さを引き出し、選手としての成長にも欠かせないものです。しっかりとした技術を持っていれば、相手チームを翻弄することもできます。ボールを動かすときに使うターンやトリックの創意性を豊かにすること、両足を使い基本的なコントロールやパスの技術練習に取り組むことも重要です。

E – Energy(エネルギー)
 サッカーをするためには、多くのエネルギーが必要になります。高いフィットネスレベルを維持することは、試合において非常に有利に働きます。もし、フィットネスレベルが低ければ、試合でのプレーにも影響を及ぼします。水分をしっかりと補給し、何を食べるべきなのかしっかりと考えることも重要な要素です。そして、日々の生活の中でも活発に生活することが大切です。

N – New thinking(新しい考え方)
 コーチの考えを受け入れながら、常に戦術面でも技術面でもさらに向上できる新たな方法を考えることです。考え方をクリエイティブにし、チャンスがあればそれをピッチ上で表現することにより、自らの成長につながります。

A – All together(チームワーク)
 サッカーはチームスポーツです。チーム一丸となってプレーすればするほど、選手としても成長し、チームとしても成功します。ご自身が誰でどこの出身かということは関係ありません。サッカーはチームのみんなによって成り立つスポーツなのです。チームの一員であることを楽しみ、チームメイトの力になれるよう全力を尽くすことが重要です。

L – Listen(話をよく聞き、学ぶこと)
 学び続けることが人としても選手としても成長につながります。サッカーの基本はパス、動くこと、そして技術です。それに加え、フェアプレーやチームワーク、表現することや楽しむことの基本的原理を取り入れることで、もう一つ上のレベルに達することができるでしょう。

――これら7つの要素がアーセナルのトレーニングに落とし込まれているということですね。イギリスからスクールのコーチが来日されるとのことですが、実際にどのような方が指導してくれますか?

 もちろん、来日するのはイングランドのアーセナル・サッカースクール所属でUEFA(欧州サッカー連盟)やFA(イングランドサッカー協会)の資格を持ったコーチ陣です。それだけでなく体育教員資格を持っているコーチもおります。

 ヘッドコーチのポール・マニングは、サウサンプトンでコーチを務めていた際に、当時U-18チームに属していたギャレス・ベイル(レアル・マドリード/ウェールズ代表)やセオ・ウォルコット(アーセナル/イングランド代表)を指導していました。

 選手としてはユース時代に元チェルシーのフランク・ランパード(ニューヨーク・シティ/元イングランド代表)とともにプレーしていましたし、プロ時代に所属したブラックバーンでは、プレミアリーグ通算260ゴールを挙げたアラン・シアラー氏ともチームメイトとしてプレーした経歴を持っています。選手としてもコーチとしても、数多くのトップレベルの選手たちを目にしてきました。

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――素晴らしいキャリアをお持ちのコーチが来日されるということですね。今回のキャンプでは、イギリスから現地のコーチが来日することが一つの目玉であるように感じますが、合宿先の環境も大きな魅力の一つのようですね。キャンプは新潟県妙高市のリゾートホテル「アパリゾート上越妙高」で開講されるとのことですが、こちらを選ばれた理由はどういったところにありますか?

 過去数年日本中の施設を見て回りました。我々の理想とする施設がなく、改めて日本のサッカー環境についての問題点として認識するようにもなりました。夏のキャンプを想定していて、実際に夏休み期間にも多くの施設や実際の練習風景を見学して気付いたのが近年の日本の夏の暑さです。

 見学したほとんどが人工芝のグラウンドでしたが、選手はみんな汗だくで、中には熱中症でテントに引き上げる選手の姿も見かけました。そうした課題に直面し、諦めかけていましたが、人づてに「アパリゾート上越妙高」を紹介頂き、直ぐに見学に向かいました。そこで見たこの施設の素晴らしさに、「これだ!」との思いで交渉し、実施の運びとなりました。

「整備された天然芝のピッチ」、「宿泊施設とピッチの程よい距離感」、「室内スイミングプール」、「室内人工芝ピッチ」、「標高600mの涼しさ」と、我々の理想に近づけたことを実感しました。また、アクセスも北陸新幹線が開通したことで非常に便利になったこともポイントです。

Soccer School 46 150806PAFC

――なるほど。キャンプに参加する選手たちは、日本最高峰の環境の中で、世界トップクラスのコーチから指導を受けることができるということですね。しかし、今回のキャンプを通じて得られるものは、技術面や環境面といったものだけではないようですね。海外で活躍する選手になる上で、その他に必要とされるものは何ですか?

 キーワードとしては 「コンフィデンス(自信)」、「それにつながる意思疎通」だと思っています。

――具体的にはどういったことでしょうか?

 時には豪華なタレントをそろえた強豪チームが、突如として負け続けることもありますよね。様々な原因があるのとは思いますが、その一つとして挙げられるのがチーム全体の「lack of confidence(自信の欠如)」です。

 逆に、突出した有名選手のいない状態で今シーズンの開幕を迎えたレスターの強さはどこにあるのでしょう? ほとんどの有名解説者は口をそろえて、「full of confidence(自信満々)」だと言います。

「攻撃では必ず点が取れる」、「守備では必ず守りきれる」。レスターの選手たちは、ピッチ上の11人全員がそう信じて戦っています。また、そう信じてプレーすることは何よりもプレーを楽しめることなのです。

 そのように自信を持って入るべきところで、日本人にはサッカーの能力以外の壁があります。一つ目が「適応力」です。言葉の壁だけでなく、例えば新しい環境に適応するまではサッカーの能力以外でプレッシャーがかかります。新しい仲間や環境に素早く溶け込むことは非常に重要です。

 そしてもう一つが「(言葉による)意思疎通」。言葉がわからず、「相手の意図が理解できない」、「自分の気持ちが伝えられない」というのは、もっとも自信の喪失とフラストレーションの蓄積につながってしまいます。

 例えば、プレミアリーグの監督は試合前後のメディアへのインタビューが義務づけられています。トッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ監督はプレミアリーグに来た1年目はスペイン語の通訳を介してインタビューを行っていましたが、現在は完璧でないながらも、しっかりと英語でインタビューを受けています。

 また、世界のトップで活躍する有名テニスプレイヤーたちは、英語も流暢に話すことができ、様々なことに壁がないことがトップに上り詰めた要因の一つだと思います。

 この二つの問題の重要性を、身をもって知ることは育成世代において非常に重要な要素であり、このキャンプはそれを肌で感じることができる機会なのです。

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――それゆえに今回のプログラムは、ネイティブスピーカーの英語を体験し、イギリス人講師とコミュニケーションを図ることも、大きな要素の一つになっているのですね。ただ、参加する生徒さんの中には、英語があまり得意ではない方もいらっしゃると思います。それぞれの生徒さんにレベルがある中で、クラスはどのようなに振り分けられますか?

 初日のレベル分けテストでレベル毎にクラスを編成しますので、初心者でも全く問題ありません。英語を母国語としない人たち向けの英語教授法を元に、サッカーに特化した内容で楽しみながら学べる独自の英語授業ですので安心です。

――それでしたら、苦手意識を持つことなく英語と触れ合える機会となりそうですね。実際に本場の“スキル”と“コミュニケーション力”を身につけられたとしたら、いよいよ世界を相手に挑戦したくなります。今回は日本キャンプからも代表選手が選抜されるようですが、具体的にどのような特権がありますか?

 U-12とU-17で各15名を目標に優秀選手を選抜し、今回のキャンプの代表としてチームを編成いたします。そして、その2チームで2017年の春にイギリスへ遠征する予定です(※別途参加費が必要となります)。

 イギリス遠征中はチーム練習や同年代のアカデミーチーム訪問、地元クラブ等との親善試合、アーセナルの公式戦観戦などを予定しています。

――実際に現地を訪れることで、さらに多くの刺激を受けることができそうです。では、最後に改めて今回のスクールキャンプのアピールポイントを教えて下さい。

 様々なスケジュールが目白押しで忙しいであろう夏休みに、あえて1週間という期間を設定したのには理由があるのです。確かに1週間で劇的にサッカーも英語力も変わる事はありません。ただ、「気づき」と「自覚」が芽生える事でしょう。それが今回のキャンプの一番の目的なのです。

 保護者の方々には、今、子どもたちに何が大事なのかを検討し、是非ともお子さまの背中を押してあげていただきたいと願っています。多くの参加をお待ちしております。

Soccer theory
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By サッカーキング編集部

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