2015.08.07

明治大を率いる栗田監督「勝つことですべての人が納得するのが今年の明治大」

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文・写真=平柳麻衣
 創部94年目の歴史を誇る明治大学サッカー部を率いるのは、同校のOBであり、企業人ながら自ら育成クラブを立ち上げたという異色の経歴を持つ栗田大輔監督。指導方針や明治大の今シーズンの戦いについて話を聞いた。

明治大が作り上げてきたものと自分のやり方がフィットした

――まず、栗田監督の経歴についてお聞きしたいのですが、清水東高校出身だそうですね。
栗田 はい。静岡県の清水市(現静岡市清水区)出身で、清水東高校を出て明治大学に進み、4年間体育会サッカー部に所属しました。卒業後は一般企業に就職し、現在も企業人です。その傍ら、今から20年前に明治大の卒業生たちが駿台クラブという東京都の社会人チームを作った時に初期メンバーとして呼ばれ、明治大とはずっと縁が続いていました。また、2005年には会社勤めを続けながら、FCパルピターレというサッカークラブを自分で立ち上げました。幼稚園児、小学生、中学生が対象で、今230人くらいが所属しているクラブです。余談ですけど、かつて読売クラブ(現東京ヴェルディ)にいたエジソンさん(エジソン アパレシード デ ソウザ)や、伊勢原にあるリトルジャンボSCという少年クラブや神奈川大学の監督を務めたことがある矢田隆さん、僕の清水東高時代の同級生で静岡県選抜のキャプテンとして国体にも出場した竹沢一弘も一緒にスタッフとしてやっている、少しマニアックな育成クラブです。今年で立ち上げからちょうど10年になります。

――珍しい経歴ですね。
栗田 そうですね。最近のサッカー界はプロを経て指導者になる人が多いので、変わり種だとは思います。その後、今から3年前に神川明彦監督(現総監督)と井澤千秋総監督(現 ゼネラルマネージャー)と話す機会があって、育成をやっていること、企業人として培ってきた経験を明治大に還元できたらという話をしたら、コーチとして呼ばれました。そして2年前に神川監督がユニバーシアード日本代表の監督に就任した時に、井澤さんから「神川監督にはユニバ―シアード代表に専念をしてもらい、明治大の方は栗田がやれ」と言われ、昨年は助監督という形で部の統括をしました。昨シーズンは天皇杯に出ることができましたし、リーグ戦も後期は負けなしで2位と結果を出したので、今年は神川さんが総監督、僕が監督という形で、この3年間で一気に立場が変わって今に至ります。

――助監督から監督に昇格し、やりやすくなった面などはありますか?
栗田 やはり助監督は難しいですね。あくまでも“助”なので立ち位置が非常に難しかった。しかし、選手には関係ないことなので、助監督に就任した時にスタッフ間で「選手が混乱しないようにしよう」と話しました。例えばメンバーの選定や交代、スケジュールの統括などは助監督がやるという形にして。正式に監督になった今年は全責任が自分にくるので、ある意味やりやすいですね。

――神川監督が築いてきたサッカーを残すように意識しているところはありますか?
栗田 一般的な監督交替は、「前の監督が結果を残せなかったから」とかいろいろな要因があるのですが、自分の場合は神川さん、井澤さんと話しながら、自分がやってきたことを受け入れてもらっている立場でしたし、明治大がこの10年、20年で作りあげてきたものと自分のやり方がフィットしたと思います。神川さんが残してきたものは残し、またそこに自分の色を出していくという形なので、やりにくさはないですね。

――栗田監督の色というのは?
栗田 自分は社会人を20年やっていますし、育成クラブをゼロから立ち上げた自信もあるので、サッカーの世界だけだと狭く見えてしまうものが多角的に見られると思います。あとは、大学生の指導において明治大が求めているのは、あくまでも「人間形成」。社会に出る一歩手前に大学、体育会、サッカーを通じて人間形成をしようという方針が根底にあります。例えば責任や自立の部分。サッカーだけやっていると、規律の中ですべてを収めてしまって、監督主体で選手の創造性や個性を抑えこんでしまうことがあるのですが、自分は適度にその頃合いを図れるのが特徴だと思います。

「運動量」、「球際」、「切り替え」が明治大サッカーの三原則

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――今シーズンについてお聞きしたいのですが、前期リーグを振り返っていかがですか?
栗田 4勝3分け4敗という結果には満足してないです。やはり選手が良いと言われているだけに、勝たなければいけないですし、勝つことですべての人が納得するのが今年の明治大だと思います。開幕前にユニバーシアード代表や選抜で8名ぐらいが合宿や練習を抜けていたので、とにかく前期の序盤は内容よりも勝ってチームを良くしていこうという割りきりがありました。それが3連勝につながったので良かったのですが、徐々に失点することに対してネガティブになったり、選手の意識が内容にいき過ぎて、逆に少し窮屈になってしまったような感じでした。それが7試合勝てなかった理由だと思います。ただ選手は、やることは終始全く変えずに今年のサッカーを明確に貫いていたので、きっかけがあればまたチームも好転するだろうと。そういう意味ではアミノバイタル杯(「アミノバイタル」カップ2015第4回関東大学サッカートーナメント大会兼総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント関東予選)では無失点で優勝できて、その後のリーグ戦も良い勝ち方ができたので、このまま後期に向けてつなげていきたいなと思います。

――そのアミノバイタル杯の優勝までに、チームが変わるきっかけになった出来事はありますか?
栗田 明治大のスタイルとして「良い守備から良い攻撃へ」という神川監督が提唱した教えがあります。加えて「運動量」、「球際」、「切り替え」という明治大サッカーの三原則。そこをとにかく極めて、きちっとした守備から攻撃に入っていこうと。今年は選手たちも「原点」という言葉を掲げていて、勝てない時期に守備のあり方や意識の共有など、やるべきことにもう一回立ち直ろうと足並みをそろえたことが一番大きく、徐々にまたリズムが出てきたと思っています。

――勝てない試合が続いていた頃、守備がなかなか安定していないようでした。
栗田 GKは昨年まで在籍していた三浦龍輝(現柏レイソル)が3年間不動のレギュラーでした。三浦は非常に守備範囲が広く、足元のうまいGKだったので、DFラインの裏にボールが出ても三浦が当たり前のようにいてくれた。今年は彼が卒業し、GKとDFの連係が一つの課題になると思っていたのですが、加えてセンターバックの山越(康平)が4月の初戦の後に半月板を傷めて手術をしました。山越も一昨年からほとんどの試合に出ていましたので、彼の離脱の影響も大きかったと思います。

――山越選手がいない中でもアミノバイタル杯は大会をとおして無失点でした。その要因は?
栗田 一つは選手が下を向かなかったこと。あとは直前のリーグ戦で非常に内容が良く、良いチーム状態でアミノバイタル杯に行くことができた。それと、アミノバイタル杯の前に、いつもはトップチームとセカンドチームを分けて練習をしているのですが、リフレッシュとして全員でリラックストレーニングをやりました。その時に気持ちが楽になったのかなと思います。

――まもなく総理大臣杯が始まります。今後の試合に向けての意気込みをお願いします。
栗田 総理大臣杯は、94年目を迎える明治大サッカー部の歴史で優勝がありませんので、初優勝を目指していきたいと思います。また、9月からは後期のリーグ戦が始まりますが、首位の国士舘大は勝ち点20で、我々が15なので5差です。一つ一つ積み重ねて、逆転優勝を狙っていきたいと思います。