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選手権に臨む桐光学園のテーマは「破壊」、鈴木勝大監督「最後に一番いい景色を見られると信じている」

2015.12.23

suzuki

インタビュー=安田勇斗、写真=平柳麻衣

 監督に就任して3年目。1年生から指導してきた選手たちが最高学年になり、鈴木勝大監督の目指すスタイルが確立されつつある。夏のインターハイでは久御山に敗れ初戦敗退。それでも確かな手応えをつかみ、選手権でも激戦区の神奈川県予選を勝ちあがった。「逆境に立ち向かう姿勢が成長した」桐光学園が「破壊」をテーマに「頂上」を狙う。

1年間を通してブレることなく戦っています

――選手権の前に、まずはインターハイについてお聞きします。桐光学園は1回戦で久御山相手に2-2、PK戦4-5で敗れました。
鈴木 久御山が非常に良かったこともありますが、それ以上にうちが2-0でリードしている場面で3-0にできなかったところが敗因の一つだと思います。我々が追求している部分で上積みができなかったところかなと。もちろん、あの試合に負けたことでスタイルを変えようとは思いませんでしたし、1年間を通してブレることなく戦っています。

――敗れながらも手応えを感じたようですね。
鈴木 そうですね。負け惜しみに聞こえるかもしれませんが、我々が引けを取ったとは思っていません。2点失ったのは反省点ですが、ゲーム全体では負けていなかったと思います。

――改めて目指しているサッカーを教えてください。
鈴木 攻撃的な守備からの「破壊」というテーマで取り組んでいます。高い位置でボールを奪って、ドリブル、パス、ワンツーなどで相手の守備を破壊していく。最終ラインでブロックを作られても、うちの最終ラインが攻撃に関わっていくことで破壊し、点を取るサッカーを目指しています。

――インターハイの時点で、そのサッカーはどの程度浸透していたと思いますか?
鈴木 良い攻撃から得点につながるシーンもありましたし、手応えはありました。目指すところの景色も見えましたし、あとは勝負強さや駆け引きといった点で積みあげていけばもっと良くなると感じました。

――迎えた選手権の予選では3試合無失点で、全国への切符を手にしました。
鈴木 正直難しかったです。初戦の桐蔭も、準決勝の湘南工科も、本来とは違う0-1で逃げきるようなロースコアの展開を狙ってきたので。その中で我慢強く戦いゼロに抑えてきたことは自信につながったと思います。ただ、点を取れる場面はいくつかあったので、そこで決めきれなかったのは、インターハイから続いている課題ですね。

――決勝の相手は、日大藤沢を破った市立東でした。
鈴木 失礼な言い方になってしまいますが、正直に言うとノーマークでした。インターハイ予選の準決勝でも戦ってるんですよ。その時は4-1で勝利したのですが、先制を許して後半20分ぐらいまではリードされていたんです。我慢強いチームなので、ベスト4まで来た時は、もしかしたら日藤に勝つんじゃないかというのはありましたけど。

――試合内容はいかがでしたか?
鈴木 この予選で、自分たちのサッカーが一番できたと思います。相手は5-4-1というシステムだったのですが、自分たちのスタイルを出して良い勝ち方ができました。

――いい形で全国に行けそうですね。
鈴木 そうですね。準々決勝、準決勝と苦しんだ中で、決勝では自分たちのスタイルをしっかり出せたので。自信を持って全国大会に臨めると思います。

とにかく目の前の相手を破壊していくことを目指していきます

toko

――予選から本大会まで1カ月半あります。その間のテーマなどはありますか?
鈴木  大きな変化ありません。桐光学園が見たことがない景色は頂上だけです。そこを目指す意味で“奪首”すること、それを実現するために破壊というテーマで戦っていくこと。それを継続する中で、精度やコンビネーションを高めていきたいと思っています。

――初戦の相手である長崎南山に対して印象はありますか(取材は12月上旬)?
鈴木  選手権のことはいったん置いて、プレミアリーグに上がることを目指していたので、これから選手権モードにチャンネルを切り替えていこうという段階です。感覚的に長崎のチームだと国見のイメージもあって、長崎南山もタフで粘り強いチームなのかなと。我々もそういう部分では負けていないので、自分たちのスタイルを出して勝てればと思っています。

――気になるチームなどはありますか?
鈴木  久御山のようなリベンジする相手もいませんし、勝ちあがれば3回戦で青森山田と戦うという方もいますけど、そればかりはどうなるかわからないので。実力が拮抗していますし、一戦一戦、とにかく目の前の相手を破壊していくことを目指していきます。

――現在のチームは、理想とするチームにどの程度近づいていますか?
鈴木  7割ぐらいは来ていると思います。今年のチームは、負けた時に立ちあがるエネルギーが強いんですよ。久御山に負けた時も、プリンスリーグで2試合続けて大敗した時も、そこから立ちあがる気迫やメンタリティーが良い効果を生みだしました。なので、プリンス最終節の浦和戦での敗戦も、これからの成長につながるかなと。その力を利用して7割を8割に上げることも可能だと思います。

――キープレーヤーになってくるのは?
鈴木  前戦の小川(小川航基)とゼイン(イサカ・ゼイン)、あとDF安部(安部崇士)です。前の2人は破壊力を表現する上で重要になる存在で、タレント性があって高いクオリティを持っています。副キャプテンの安部は夏以降劇的に変わり、絶対的に外せない選手になりました。2人とはタイプが違いますが、重宝している人材です。

――戦い方は予選と変わらず1トップになるのでしょうか?
鈴木  皆さんは「1トップ」と表現されますが、僕自身は3トップをイメージしています(笑)。ゼインや西川(西川公基)、桑原(桑原孝太郎)がサイドハーフのように見えることもありますが、破壊を生みだすのはこの3トップです。そこにトップ下の鳥海(鳥海芳樹)やサイドバックが関わって変化をつけていく形で戦っていきます。

――ちなみにチーム作りは、毎年選手を見て変えていくのでしょうか?
鈴木  そうですね。ただ、僕が監督に就任して3年目になるのですが、守備面のコンセプトは大きく変えました。前監督(佐熊裕和)はブロックを作って中に入ってくる選手を捕まえる形でしたが、僕はボールを奪いに行く形で指導してきました。大げさに言うと相反するやり方でしたし、変えるのは本当に大変でした。今の3年生は1年生の時から指導していて、そういう意味でチームの完成度は年々高まってきたと思います。2トップや1トップなどシステムはメンバーによって変えてきましたが、守備などの方向性は同じ形でやっています。

――その3年間で伸びてきた部分は?
鈴木  特に人間性は高まったと思います。逆境に立ち向かう姿勢は成長したなと。去年は選手権の県予選で負けて、プレミアリーグにも昇格できず、インターハイにも出られなかった。苦しい想いをして、ハングリー精神が育ったと思います。彼らが桐光学園に来たのは、全国で勝負するためです。それが1年間何もできなかったのですから。また個人的なことを言えば、小川がアンダー世代の日本代表を経験してきて成長したところも大きかったですね。小川は1、2年の時、チームよりも自分のプレーにこだわっていたところがあるのですが、代表で自己犠牲などを学んで精神面が変わり、さらにキャプテンという役割を与えて視野も変わってきました。それによってチームメートにかける言葉も変わり、チームに良い影響が出ています。

――最後に選手権への意気込みをお願いします。
鈴木  できれば先の目標を言いたいですけど、本当に一つひとつ勝っていくことが大事だと思っています。最後に一番いい景色が見られると信じて、しっかり戦っていきたいと思います。

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