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大学サッカー4冠を達成して“古巣”神戸に帰還、関西学院大のMF小林成豪「目標はスタメン定着。開幕戦から試合に出たい」

2016.01.08

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インタビュー=安田勇斗、写真=平柳麻衣、平山孝志

 2015年の全タイトルを勝ち取り、大学サッカー界の歴史に新たなページを刻んだ関西学院大学。圧倒的なアタッキングサッカーの中心にはこの男がいた。ヴィッセル神戸の育成組織で磨いたドリブルを武器に、左サイドから数々の決定機を演出。母校へ“4冠”を置き土産に、再び神戸で躍動する。「試合に出られないとプロサッカー選手である意味がない」。飄々とした語り口ながら芯には熱いハートを持つ小林成豪が、ルーキーイヤーから全力疾走する。

トップチームでやっていく自信がなくて昇格を断った

――サッカーはいつ始めたのでしょうか?
小林 小学校1年生の時に友達に誘われて始めました。最初は若草少年サッカークラブという地元のチームに入っていて、そこが土日だけだったので、小学4年からはヴィッセル神戸のスクールに通うようになりました。

――そこから神戸のジュニアユース、U-18へと進みますが、元々神戸のファンだったのですか?
小林 いや、そこまでではなかったです。家族で試合を見に行ったりはしましたけど、有名な選手で憶えているのも三浦知良選手(横浜FC)ぐらいで(苦笑)。

――ジュニアユースにはどういうきっかけで入ったのでしょうか?
小林 スクールのコーチから勧められて、セレクションを受けて入りました。それでジュニアユースで試合に出させてもらい、ジュニアユースの監督からの推薦もあって、ユースに入ることになりました。

――Jクラブのユースに上がることで、プロも意識するようになったのでしょうか?
小林 はっきりは憶えてないですけど、たぶん高3ぐらいから意識するようになったと思います。試合に出るようになって、トップチームの練習にも参加させてもらって、少しずつ意識するようになりました。

――プロを意識しつつも、進路には大学を選択しました。その経緯は?
小林 実はトップチームから声をかけていただいたんですけど、やっていく自信がなくて断りました。体力面とかフィジカル面とかはまだまだだったので。

――断るのは珍しいケースだと思います。では数ある大学の中で、なぜ関西学院大学に行くことになったのでしょうか?
小林 正直に言うと、家から近かったというのが一番の理由です(笑)。それと関西1部リーグにずっといたので。

――決めたのはいつ?
小林 高3の夏休みです。その時ちょうどトップチームの練習に参加していて、昇格の話をもらってたんですが、関学からも話をもらい「すぐに決めてほしい」と言われ結構迷いました。それで親に相談したら「大学に行った方がいい」って言われて。たぶん、プロで活躍できなかった時のことを考えて大学を勧めたと思うんですけど。

――大学生活は間もなく終わりますが、一番記憶に残っていることは(2015年12月15日取材)?
小林 やっぱり初得点ですね。1年生の時の関西選手権(関西学生サッカー選手権大会)で、関西大学相手に決めたゴールです。ドリブルで3人ぐらいかわして決めた得点で、その瞬間は鳥肌が立ちましたし、よく憶えています。

――会心のゴールでしたか?
小林 そうですね。人生最高のゴールだと思います。

――では印象に残っている試合は?
小林 やっぱり一昨日の流通経済大学戦ですね。自分の中で一番熱い試合でしたし、2度負けていてリベンジに燃えていたので。インカレ準々決勝で勝つことができて、すごくうれしかったです。

――延長戦までもつれこんで2-1で勝利しましたが、相手に先制を許す厳しいゲームでした。
小林 1点取られた時は「負けた」と思いました(苦笑)。試合中にチームメートと話した時も「これ終わったな」って感じで。でもどこかで、みんなあきらめない気持ちを持っていて、それで逆転できたんだと思います。まあ、インカレで優勝して、4冠(関西学生選手権、総理大臣杯、関西学生リーグ、インカレ)を達成できたら、決勝が一番思い出に残る試合になるかもしれないですけど(笑)。

――確かにそうですね。現在は左サイドを主戦場としていますが、これまでどんなポジションでプレーしてきたのでしょうか?
小林 1年の前期は右サイドで、後期は左サイドでした。2年の時はボランチで、3年はトップ下。で、4年になって左サイドに戻りました。

――ボランチやトップ下は意外な印象です。
小林 でもやることはそんなに変わらないので。ボールを持ったらドリブルで前に上がって。(成山一郎)監督からもそれを求められてましたし、果敢に前に仕掛けてました。

――難しさはありましたか?
小林 真ん中でプレーしたのは初めてでしたし、結構難しかったですね(苦笑)。体力があまりなかったので、特に守備の部分が難しかったです。

――中央で初めて起用された時、どういう心境でしたか?
小林 あんまり憶えてないですけど、最初は新鮮で楽しかったです。ただ試合を重ねていくごとに難しさを感じてきて。

スピードに乗ったドリブルが一番の武器

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――高校時代はレベルの高いクラブユースでプレーしてきました。その経験を経て、大学サッカーはどのように感じましたか?
小林 ユースよりもレベルが高いと感じました。特にフィジカル面とプレースピードは大きな差があるかなと。

――やれる自信はありましたか?
小林 最初は全然なかったです。「上には上がおるな」と。練習もめっちゃキツかったですし、本当にやれるのかなって不安になったり。入ってすぐに「辞めたい」って思ったこともあります。慣れるまでは自信を持てなかったですし、それまでに結構時間がかかりましたね。

――辞めることを考えたのはどういう理由から?
小林 走りがキツくて。タイムを計るんですけど、みんなが入れるのに僕だけ入れなくて。その走りは、紅白戦で負けたチームが走るんですよ。で、タイムに入れないと次の試合に出られなくて。僕がタイムに入れないと、そのチームは1人少なくなって、また負けて、また走る。体力的にも気持ち的にもキツかったですね。

――走りのトレーニングは多かったんですか?
小林 あとは試合に負けた時に失点数分、走るというのもありました。0-5で負けた時は300メートルダッシュを50本。しかも真夏に。走りきるのに確か3時間ぐらいかかったと思います(苦笑)。ユースでは走ることはあまりなかったので、ああいう練習は初めてでした。

――厳しい練習をこなしていく中で、特に成長したところは?
小林 体力面やフィジカル面もそうですけど、チームのことを考えるようになったかなと。ユースの時はすべて監督やコーチに教えてもらっていて、それが自分にとっては普通のことでした。それが大学に入ってからは選手が主体になって話し合ったり、チームに対して自分が考えて行動を起こす機会が増えて、そういう面で成長できたと思います。

――高校時代は、そこまで考えていなかった?
小林 自分が良ければ、という感じでした。自分がドリブルで目立てばいいって。それが、大学に入ってからはチームを優先して考えられるようになりました。

――ドリブラーの印象が強いですが、自分の一番の持ち味は何だと思いますか?
小林 スピードに乗ったドリブルが一番の武器だと思います。それと、味方がボールを取った後の動きだしとか、守備から攻撃の切り替えは特に意識しているところで、監督からも「速くなった」と言ってもらえるようになりました。

――それはいつから意識するようになったんですか?
小林 4年生になって左サイドに戻ってからですね。左サイドでは縦に上下することが多いですし、監督からもそこを言われていたので。

――ではドリブル以外で得意なプレーは?
小林 クロスを上げるふりをして切り返し、なんかはよくやります。

――攻撃的な選手なのでゴールやアシストも期待されています。
小林 そこはまだまだ足りないですね。得点もアシストも全然できていないですし、一番の課題だと思っています。

――今後伸ばしていきたい部分は?
小林 やっぱり決定的な仕事をもっとできるようにしたいです。得点につながるドリブルがあまりできてないので、ゴールに近い位置で積極的にドリブルを仕掛けて、そこから得点やアシストを増やせればなと思います。

――ドリブラーとして参考にしている選手はいますか?
小林 参考というか、バルセロナの試合をよく見ていて、点を取る選手が好きなので、(リオネル)メッシが好きですね。ドリブルというより、点を取る部分がすごいなと。

――ドリブルを仕掛ける際のポイントなどはありますか?
小林 正直ほとんど感覚です(笑)。まあ相手の軸足とか重心とかは見ますけど。

――大学でドリブルの技術は伸びましたか?
小林 たぶんユースの時とあまり変わらないんじゃないですかね。強いて言えば、今みたいな力強いドリブルは、大学でできるようになったと思いますけど。

――力強いドリブルとは?
小林 ユース時代は相手とぶつかって体がブレてボールを取られる時が結構あったんですけど、大学で体幹トレーニングをするようになってからは、軸が安定してボールを取られにくくなったかなと。

――そもそもドリブラーとしての今のスタイルは、どういう経緯で身につけていったのでしょうか?
小林 ジュニアユース時代の中1と中3、それと高3の時に見てもらった野田(知)さんが僕のドリブルを買ってくれたことが大きかったですね。高1、高2とあまり試合に出られなかったんですけど、高3になってU-18の監督だった野田さんが試合で使ってくれて「どんどん仕掛けろ」って言ってくれて。それが自信になりましたし、野田さんのおかげでここまでやってこられたところもあると思います。

小川選手は憧れの選手、越えることを目標にやっていきます

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――そして再びヴィッセル神戸に戻ることになりました。どういう経緯で加入が決まったのでしょうか?
小林 大学2、3年の頃からシーズン前の合宿などに参加させてもらって、その時から話があり、自分も行きたい気持ちがありました。正式にオファーをもらったのは確か今年の6月か7月ぐらいだったと思います。すぐに返答して加入が決まりました。

――他の選択肢を考えたりは?
小林 他のクラブも見てみたい気持ちはありましたけど、自分の中ではヴィッセルに決めていたので。迷いはなかったです。

――ちなみに同期として、ユニバーシアード代表のチームメートでもあった阪南大学の松下佳貴選手も加入します。
小林 佳貴とはユニバの大会中、同じ部屋だったんですよ。その時からヴィッセルの話もしていて。あいつは大学で一番のボランチだと思ってますし、ライバル意識を持ちながら一緒にやっていきたいですね。

――松下選手のすごいと思うところは?
小林 質の良い縦パスを出せるところです。相手からすると、全然読めないパスを出すので結構嫌な選手だと思います。

――チームメートにいると心強いですね。
小林 そうですね。実際、全日本選抜で一緒だった時も、すごくやりやすかったです。味方の動きだしを見てくれるので、佳貴のパスからゴールにつながるシーンが結構ありましたし、一緒にプレーするのが楽しみです。

――神戸の練習に参加して、大学とはどんな違いを感じましたか?
小林 一番感じたのはフィジカル面で通用しなかったことですね。あと判断スピードが少しでも遅れると、すぐ体を寄せられて止められるところです。

――すごいと思った選手はいますか?
小林 マルキーニョス選手です。決定力がすごかった。体も強いですし、特にお尻周りの筋肉がすごいですね。それと小川慶治朗選手。僕が行った時はけがでいなかったんですけど、ユース時代からの先輩で、憧れの選手でもあります。めっちゃ速いし、シュートもうまいし、すごい選手なんですけど、でも小川選手を超えていかないと試合に出られないので、そこを目標にやっていこうと思っています。

――近い将来の目標は?
小林 スタメン定着です。開幕から出られればと思っています。自信がめちゃくちゃあるってわけではないですけど、試合に出られないとプロサッカー選手である意味がないので。

――対戦したい選手は?
小林 同期の選手ですね。例えば湯澤(聖人/流通経済大学、柏レイソル加入内定)とか。湯澤とはあんまり対戦したことがないんですよ。だからプロの舞台で対戦したいですね。あとは……FC東京の徳永(悠平)選手。全日本選抜の時に練習試合をしたんですけど、ドリブルを全部止められて。壁かと思いました(苦笑)。自分にとって結構衝撃的で、対戦する機会があったらぜひリベンジしたいですね。

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