2015.07.01

ユニバ女子代表の望月聡監督「ただ優勝するだけではなく、感動を与えるような試合を見せたい」

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インタビュー=安田勇斗

 現役時代は浦和レッズや日本代表でプレーし、1996年に引退して指導者に転身。男女各育成年代を指導して、2011年女子ワールドカップではなでしこジャパンのコーチとして日本女子代表の初優勝を支えた。迎えた2014年、ユニバーシアード女子代表の監督として新たな挑戦を決意。望月聡監督はいよいよ光州での本大会に臨む。

世界で通用する選手を選んだ

――ユニバーシアード女子代表の監督に就任した経緯を教えてください。
望月 今大会は日本サッカー協会と全日本大学サッカー連盟が協力してコーチングスタッフを選出したそうで、僕自身は昨年夏に日本サッカー協会から推薦していただき、監督を務めさせていただくことになりました。詳しくはわかりませんが、佐々木(則夫)さんが監督を務め優勝した2011年女子W杯で、僕がコーチを務めていた実績も評価していただいたようです。とても名誉なことなので、お話をいただいた時、すぐに「よろしくお願いします」と返事をしました。

――監督就任が決まってから、どのようなチームを目指して始動したのでしょうか?
望月 僕はチームの特徴はあまり考えないんです。「うちは攻撃のチームです」とか「うちは守備のチームです」とか、色があるのは当然ですけど、そもそもサッカーにはその両面がある。相手が強ければ守備的になるし、弱かったら自然と攻撃的な戦い方になる。結局、相手によって変わると思うんですよね。どんな試合にしろ、ゴールを奪うためには攻撃も守備も必要で、状況に合わせた戦い方ができないといけないと思うんです。例えばポゼッションにこだわりを持つチームもありますが、いくらパスをつないでも意味はない。さっきも言ったとおり目的はゴールを奪うことですから、そのためにサッカーをしないといけないですよね。選手たちにはその目的を失わないようにと、常々言っています。

――それはあらゆる状況に対応できる柔軟性を持ったチームを目指している、と置き換えてもいいのでしょうか。
望月 そうですね。そこで大事になってくるのが選手それぞれの基本技術です。ボールを蹴る、止める、シュート、ドリブル……その基本ができないといけない。感謝する時に「ありがとう」と言うことと同じで、基本技術はサッカーでごくごく当たり前のことです。その基礎があって初めてサッカーができる。

――チーム始動から1年近くが経ちました。その指導が選手たちに浸透してきた実感はありますか?
望月 正直に言って、まだ大したことはできていません。男子はスペイン遠征やデンソーカップなど招集機会がそれなりにありましたが、女子は昨年11月のトレーニング、今年2月の地域対抗戦、そして4月の最終選考だけなんです。ですので、本大会直前の合宿でどこまでできるか、ですね。これまでは自主性を持つこと、自己決定力のある選手になること、そういう大きなテーマを選手たちに言い続けることぐらいしかできませんでした。

――本大会に向けて20名の選手を招集しました。メンバー選出のポイントは?

望月 一言で言うと「世界で通用する選手」を選びました。それぞれが世界で戦えるだけの武器を持っています。例えば世界レベルの速さ、守備での一対一の強さ、ヘディングの強さ、パスの正確さ、世界基準のゲームメーク。そうした武器を持つ選手がそろっています。

女子サッカーの価値を高め、普及発展につながる結果を残したい

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――監督自身はユニバーシアードという大会をどのような位置付けとして見ていますか?
望月 “大学のオリンピック”とは言っても、テレビで全国放送されることもないですし、世間的には有名な大会ではありません。ただ、それでも選手たちにとっては憧れの大会だと思います。世界一を決める大会ですし、日本を代表をして戦うわけですから。僕自身も楽しみにしています。

――おっしゃるとおりまだメジャーな大会ではないと思います。そのチームを率いるにあたり、環境や体制などはいかがでしょうか?
望月 ユニバーシアード女子代表を率いたばかりでまだわからないこともありますが、まだまだだと思います。強化費も限られていますし、それこそドリンク一つ取ってもそろえるのに苦労するので。一生懸命プレーしている選手たちのためにも僕たちスタッフががんばって環境を整えられればと思います。

――対戦相手の情報を収集するのは難しいそうですが、グループリーグで戦うロシア、コロンビア、メキシコの印象を聞かせてください。
望月 そうですね。ほとんど情報が入ってこないですし、まだイメージはありません。なでしこジャパンのコーチ時代に対戦経験があるんですが、ユニバーシアード代表のコーチ陣に聞くとそのイメージもだいぶ違うみたいで。なので、全く情報がない中でやるしかない、というのが現状です。

――ではほとんど“ぶっつけ本番”になりますね。
望月 実は以前、ゲーム分析や情報戦略などを専門的にやっていたんです。ですが、やればやるほど必要ないかな、というのも感じています。相手の特徴がわかれば選手の安心材料にはなるでしょう。でも、選手たちはいろいろな相手と対戦していますし、足の速い選手や体の大きな選手などとも過去にマッチアップしている経験があります。問題はその時にやるべきことをできるかどうか。例えば守備の時に相手に対して準備ができているか、味方がカバーに入れるか、当たり前のことです。先ほどの目的に共通しますが、結局サッカーは基本がしっかりできているかです。その基本ができれば自然と応用もできます。

――そのような考えはいつから持っているのでしょうか?
望月 気づいたのは指導者になってからですね。選手時代はもう少し感覚的にやっていました。指導者になりチームを機能させるためにはどうすればいいか、サッカーの本質とは何なのか、そういうことを考えるうちに生まれてきたんです。

――これまで男女の育成年代を指導されてきましたが、女子選手を指導するにあたって気をつけていることはありますか?
望月 サッカー自体は同じなので、選手に話すことは基本的に変わりません。ただ、動きや身体能力の差や人間性の違いもあるので、それに合わせた指導は心掛けています。例えば選手に「見ろ」と言ったとします。でも何を見ろとは言いません。答えを言うと選手が考えなくなってしまいますし、考えられる選手になってほしいので。教えることは学ぶことの最大の敵なんです。そのように何かを考えさせる時、男子に比べて女子の方がより丁寧に対応しているのは確かです。

――話を戻して、最後に大会への意気込みをお願いします。
望月 優勝しかないと思っています。箸にも棒にもかからないというチームではなく、可能性は十分にあるチームです。その上で先ほども言ったような、攻撃も守備もできるオールラウンドチームであることを証明したいですね。点は取れるけど守備は不安とか、守備はがんばるけど攻撃力はないとか。どんな勝ち方でも勝ちは勝ちですけど、できれば両方できるチームにしたい。わかりやすい例を挙げるなら昨年のブラジルW杯のドイツ。攻撃も速攻で点が取れるだけでなく、じっくり攻めても点が取れる。女子ではまだ最先端のサッカーは難しいと言われるかもしれませんが、それを先取りして優勝できるチームにできたらいいですね。関わった以上は女子サッカー、女子スポーツを発展させたいですし、プレーする環境も変えてあげたい。そのためにはただ優勝するだけではなく、それこそなでしこジャパンがW杯で優勝したように、感動を与えるような試合をして女子サッカーの価値を高め、サッカーの普及発展につながる結果を残したいと思います。