2012.06.19

ユーロ連覇へ…“古くて新しいスペイン”が真紅の旗を打ち立てる

ワールドサッカーキング 2012.07.05(No.221)掲載]

 グループCを2勝1分けで突破したスペイン。オランダら、決勝トーナメント行きが有力視されていた強豪国が苦戦する中、前評判通りの力を示している。

 ユーロ、そして世界を制した経験を持つ無敵艦隊。今大会においても、その力は決して衰えていない。進化あるのみ。真紅のユニフォームを身にまとった王者の歩みは止まらない。

華麗な連係から得点を挙げたセスク
文=ロベルト・フザーロ

 グループCの初戦でスペインがイタリア相手にドローを演じたのは、多くのサッカーファンにとって意外だったに違いない。イタリアは古豪ではあるがここ数年は低迷が続き、開幕時のチーム状態も決して良くはなかった。多くの人が「順当にスペインが勝利」と見ていたのだ。だが、スペインは持ち味の多くを封じられ、イタリアの堅守に苦労した。
 
 キャプテンのイケル・カシージャスを始め、多くの選手が「スペインは警戒され、研究されている」と言う。まさにその通りで、イタリアはスペインのプレースタイルを熟知していた。
 
 スペインの試合運びの基軸となるのはバルサ流のパスワークだ。縦のショートパスでくさびを入れ、そこから個人技と連係を駆使して多彩な攻めを見せる。イタリアの対策は、最初のくさびのパスを徹底的に狙うことだった。くさびのパスを合図にスペインの攻撃はスピードアップし、多彩さも増す。その前に激しいタックルでつぶしてしまうという狙いは見事に当たった。優勝を狙うチームすべてが独自のスペイン対策を練っているはずだが、この初戦は大いに参考になっただろう。
 
 サッカーは名前でやるものではない。「スペインだから」という楽観論は排除すべきだ。もっとも、ビセンテ・デル・ボスケ監督はそのことを熟知している。彼はそのために、チームに適切な変化を加え続け、停滞を起こさせていない。南アフリカで世界王者になってから2年、チームには重要な変化が起きた。

 イタリア戦で攻撃の核となったダビド・シルバとセスク・ファブレガスは、ユーロやW杯では脇役に甘んじた選手である。U−21のユーロで優勝を果たした《黄金世代》もチームに加わっている。絶対的レギュラーであるはずのカルラス・プジョルやダビド・ビージャがケガで欠場することになり、チーム内の《序列》が否応なく変化したことは、チームに刺激を与えるという点でプラスになったと見ていいのかもしれない。

 もう一つ、絶対王者スペインを見ていて感じる進化がある。《勝者のメンタリティー》を備えたという点だ。4年前のユーロは勢いで優勝した。南アフリカではまさにピークを迎えたチームで世界を制した。そして今、スペインは世代交代を進めながら精神的な成熟をより良い形で備えつつある。
 
 昨年11月、イングランドとの親善試合で敗れた時には批判の声が挙がったが、真剣勝負となれば彼らは負けない。予選は組み合わせにも恵まれて全勝したが、いくつかの試合では苦しい状況に追い込まれている。敵地でのスコットランド戦では《完全アウェー》の状況下で劣勢に立たされた。リトアニアでは劣悪なピッチにより《生命線》であるパスワークを断ち切られた。そしてホームでは、すべてのチームが当然のように自陣ゴール前に人数を置く超守備的戦術を選択した。一つ負けても何の痛手でもないにもかかわらず、スペイン代表の選手たちは勝利を求めて全力で戦ってきた。その経験がヨーロッパでは小柄な彼らを一回りも二回りも大きく見せている。
 
 結局のところ、デル・ボスケ監督は自身に課せられた任務である「プレースタイルを下手に変化させることなく、チームに必要な刺激を与える」という、ともすれば矛盾する2つの要素を両立させて、本大会へと乗り込んだ。
 
 古くて新しいスペイン代表がメジャー大会3連覇を果たせるかどうか、結果は神のみぞ知るところだが、勝利に必要な《ツキ》さえあれば、彼らはまた大会の頂点に真紅の旗を打ち立てるはずだ。

【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING @SoccerKingJP』の編集長に就任。

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