2012.06.05

【ユーロ開幕直前インタビュー】ハート「国と自分のプライドのためにプレーする」

EURO2012 完全ガイド 全16カ国選手名鑑 掲載]
「生まれ変わったイングランド代表」を象徴するのが南アフリカ・ワールドカップ後に正GKの座を手に入れた25歳のジョー・ハートだ。マンチェスター・シティーの一員として、今シーズンはプレミアリーグ優勝に貢献。飛躍を続ける守護神が、大舞台への意気込みを語った。
ハート

インタビュー・文=レオ・モニハン

 2年前のワールドカップ初戦、ロバート・グリーンが見せたファンブルにより、イングランドのサポーターは、GKの重要性を改めて痛感した。彼らは必死になって正GKを任せられる人材を探した。そして、南アフリカで第3GKを務めたジョー・ハートこそが、信頼するに足る存在であると知った。

 4月に25歳になったばかりだが、その振る舞いは実に堂々としている。ファビオ・カペッロの指導を受けながら経験を積み、マンチェスター・シティーの正GKとして周囲の信頼を得た。

 ゴードン・バンクス、ピーター・シルトン、 デイヴィッド・シーマン。そんなイングランドの“伝説のGK”の座をハートが受け継ぐと、誰もが信じている。もっとも、それが事実かどうかは、彼自身が証明しなければならない。

僕はもう成熟しているって大声で言いたい気分だった

バンクスやシルトン、シーマンと比較される気分はどう

ハート そう言ってもらえるのは光栄だけど、肩を並べたと思えるのは随分先のことだろうな。彼らの名からは厳粛なオーラを感じる。大舞台で結果を出した者だけに許されたものだ。でも、僕は予選の数試合でプレーしただけ。まだ何も達成していない。

代表の正GKのポジションを手にしたことをどう感じている?

ハート 重要な役回りを任されたと感じているよ。このままレギュラーとして起用してもらいたい。僕はいつだって試合に出ていたいタイプだからね。クラブでも代表でも、その気持ちはいつも同じだ。

第3GKとして南アフリカW杯のチームに身を置くのは厳しかった?

ハート そうでもなかった。僕としては当然プレーしたかったけど、スタメンに選ばれることはなかった。自分では準備万端だと思ってても、周囲はそう見てくれなかったということさ。でも、それが事実だったんだろう。実際のところ、南アフリカでの経験はポジティブなものだったと感じている。W杯に参加しながらピッチに立つことなく、失望と向きあったけど、それも人生だ。すねたところで何も変わらない。W杯という舞台を肌で感じられたのは事実だしね。

他に南アフリカで学んだことは?

ハート どのチームも独自のプレースタイルを持っているから、対応するのは大変だった。アルジェリアのような予選突破が期待されていなかったであろうチームでも、イングランドを前にしたアルゼンチンぐらいの闘志で向かってきたよ。

「GKは30歳になってから成熟する」なんて言う人もいるけど、君の意見は?

ハート 「僕はもう成熟しているよ!」って大声で言いたい気分だった(笑)。南アフリカでのカペッロは年齢を理由に僕の起用をためらったのだろうか? その可能性もなくはないね。

君は対戦相手のFWを研究するタイプ?

ハート そうでもないね。だって、トップレベルのFWはプレーの引き出しを数多く持っている。一つのプレーに注目することは、他のことに対処できなくなるリスクを含むんだ。彼らが僕のことを注目していないのに、僕が彼らを恐れる必要はないよ。

PKの傾向もチェックしない?

ハート いや、そちらはチェックする。でも、頭には入れるけど意識しすぎないよう注意しているよ。僕は予測して動くタイプじゃないからね。

プレッシャーはあるけどポジティブに受け止めるよ

最近の選手は代表チームよりもクラブのためにプレーするという意識が強いと言われているけど、それは正しい?

ハート それは個人次第だから、一概にどちらとは言えないよ。でも僕の場合は、一人のイングランド人として、一人のイングランド・サポーターとして、国のためにプレーすることに十分すぎるほどの幸せを感じているよ。その気持ちを、今こうして話せるのも幸せなことだね。

一人のイングランド人として、ユーロで優勝することは何を意味する?

ハート 「すべて」だね。世界のすべてを手に入れた気分になるんだろうな。

大げさじゃない?

ハート いや、きっと達成感で胸がいっぱいになるよ。決勝戦を終えてロッカールームに戻り、チームメートと互いの目を見て、「僕たちが歴史を作ったんだ」って確信する。しびれる瞬間だよね。まあ、それを達成するまでには長い道のりが待っているんだけど(笑)。

長い道のりの最初に立ちはだかるのがフランス代表だ。君にとってもユーロ初戦は難しい試合になるだろうね。

ハート フランスは若いチームだ。イングランドと同じだよ。恐らく、どちらも追い詰められたようなプレッシャーを感じながら戦うことになるだろう。グループリーグの初戦、勝てば大いに優位に立てるけど、負けたら一気に後がなくなる。だから負けるわけにはいかない。いや、勝ち点3が必要な試合と言うべきだね。プレッシャーは感じるだろうけど、それこそがユーロのような大会の醍醐味だ。嫌でも向き合わなきゃならないなら、ポジティブに受け止めるよ。

ウェイン・ルーニーを失ったことで、チームは少なからず影響を受けるはずだけど、彼の不在をポジティブに受け止めることもできるだろうか?

ハート うまく付き合ってみせるよ。本当に深刻なのは、試合前日に彼をケガで失うことだ。僕たちはウェインの出場停止を知っている。だから、彼の不在を言い訳にすべきではないよ。

イングランドは優勝候補とは見なされていない。“第2グループ”といったところだ。過剰な期待を寄せられることがなくてラッキーと思うべきか、過小評価に腹を立てるべきか……。

ハート さあね。でも、大事なのは僕たちに期待してくれるファンがいるということだ。通路からピッチに出てきた時、観客がたった一人しかいなかったとしても、僕はその存在を重要だと感じるし、国と自分のプライドのためにプレーするつもりだ。勝利を望むファンの気持ちが僕たちのプレッシャーになることはない。むしろ、支えになるんだ。

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