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【インタビュー】ジャンルイージ・ブッフォン「この上ないロマンを求めて」

2012.01.08

ワールドサッカーキング 2012.01.19(No.204)掲載]
この数年、ジャンルイージ・ブッフォンはマスコミだけでなく、ユヴェントスのファンからも「彼の時代は終わった」と批判を受けていた。しかし、今は違う。周囲からの信頼を取り戻したブッフォンは全盛期を想起させるプレーで、ユーヴェとイタリア代表の守護神として君臨する。
ブッフォン

インタビュー・文=グイド・ヴァチャーゴ 翻訳・構成=高山 港

 この数年はジャンルイージ・ブッフォンにとって順調な時期だったとは言い難い。ユヴェントスはセリエAの中位に低迷し、自身はヘルニアの手術を受けて昨シーズンの前半戦をすべて欠場した。かつての彼は“スーペル(スーパー)・ジジ”の愛称で呼ばれていたが、この数年で“スーペル”の文字は取り除かれ、単なる“ジジ”と呼ばれるようになった。

 十数年間にわたり世界最高のGKと称され、2006年のドイツ・ワールドカップ(以下W杯)で世界制覇を実現したブッフォンにとって、それは屈辱以外の何物でもなかったはずだ。しかし、今シーズンは好調を維持するチームとともに、ブッフォン自身も本来あるべき姿を取り戻している。“スーペル・ジジ”に戻った彼は、「ユヴェントスのブッフォン」としてだけでなく、チェーザレ・プランデッリ監督率いるイタリア代表のキャプテンとして、ポーランド、ウクライナ共同開催のユーロで母国の勝利に貢献したいという意識を強めている。

誰もが自然に進化しているんだ

早速だけど、歴史あるイタリア代表でキャプテンマークをつけてプレーすると、特別な責任を感じるものだろう?

ブッフォン 確かにそうだね。ファビオ(カンナヴァーロ)からキャプテンマークを引き継いでからずっと感じてきたことさ。キャプテンマークを身につけるたびに自分に託された仕事の重要性を感じるよ。試合開始前、ピッチの中央に歩み寄り、相手チームのキャプテンとペナントを交換する時、そしてレフェリーと会話を交わす時、自分自身がイタリアの外交官になったかのように感じるのさ。すごく重要な任務を背負っているという意識を持っているよ。

キャプテンは優勝トロフィーを掲げるという重要な役割も持っているよね。

ブッフォン そんなことを言っちゃダメだよ! お願いだから「優勝」なんて言葉は口にしないでくれ(笑)。俺は縁起を担ぐタイプの人間なんだ。だから、耳にしたくない言葉というのがいくつかある。「優勝」もそのうちの一つさ。もちろん、優勝した時にキャプテンが何をするかは知っているよ。ただ、そのことに関しては、大会が終わったら話をしよう。願いごとは口に出してはいけないんだ。

ユーロ予選は比較的楽な戦いが続いたと思うけど……。今のイタリア代表が申し分なく、どのチームにも勝てるようなチームだと思っているかい?

ブッフォン ピッチ上での結果を見ないことには何とも言えないな。ただ、申し分のないチームだとは確信している。今の代表チームは個人技に長けた選手が多いし、最近では最強のチームだと思っている。プランデッリ監督は団結力のあるグループを作り上げることに成功したんだ。これまでのイタリア代表は数多くのフオリクラッセ(超一流の選手)に支えられてきた。今のイタリア代表にもフオリクラッセと呼ぶべき選手はたくさんいる。だけど、それに加えて現代的なサッカー、つまり正確な組織プレーを軸にしたサッカーをやろうとしているのさ。「天才的な選手にボールを渡しておけば、彼が何とかしてくれる。他の選手は全員守備に専念しておけばいい」なんて考え方は今のイタリア代表には存在しない。その逆さ。勝利を手にするためには11人全員が働かなくてはならないんだ。

今のイタリア代表が、あまり「イタリア的」ではなく、「スペイン的」だと言いたいのかな?

ブッフォン イタリアンスタイル、スペインスタイルという表現は単なるイメージに過ぎない。まあ、今のイタリア代表が「イタリアらしくないサッカー」をやっていることは事実だろうけどね。しかし、「イタリアらしいサッカー」とは何か、というのは大事なポイントだよ。確かにイタリアには守備的サッカーの伝統がある。でも、現代サッカーに革命をもたらしたキーマンの一人がアリゴ・サッキだったことを忘れちゃいけないよ。彼はイタリア人だし、アッズーリ(イタリア代表の愛称)の監督を務めていた。俺が何が言いたいかと言うと、物事を型にはめないでほしいってことさ。イタリアサッカーのシンボルと言われているユヴェントスにしても、今は以前よりはるかに現代的なサッカーをやっている。誰もが自然に進化しているんだと思うね。

それはどういう意味? もう少し詳しく聞きたいね。

ブッフォン 以前のイタリアサッカーでは、個人能力が大きな意味を持っていた。もちろん今でも個人技はすごく重要な部分だ。だけど、それ以上に重要なのはグループの力であり、チームとしての組織力なんだ。グループの力が大事だという流れを作ったのは(マルチェッロ)リッピが監督だった頃のユーヴェだったと思う。あの頃のユーヴェにだって、若き日の(アレッサンドロ)デル・ピエロのように個人能力の高い選手はいた。だけど、俺が驚いたのはグループとしての力だよ。ユーヴェの選手は全員が常にチームメートを助ける準備ができていた。全員が90分間走り回っていたよ。それに最も重要なこと、それはチーム全体が攻めの意識を持っていたことだ。守備的なサッカーという印象は一切受けなかった。リッピが攻撃的サッカーの種を植えつけたんだ。そして今、リッピの時代にユーヴェのキャプテンを務めていたアントニオ・コンテが、監督となってリッピのサッカーを更に進化させていると言えるだろうね。

<続きはワールドサッカーキング 2012.01.19(No.204)でお楽しみください>

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