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バルセロナの強さの秘密を解き明かす超戦術論 第3回「動きを止める技術」

2011.12.11

 ペップ・グアルディオラ率いるバルセロナの戦術については、すでに語り尽くされた感がある。 しかし、本当にそうだろうか? 「ポゼッション重視」、「流動的にポジションを入れ替える」、「ショートパスをつなぐ」、「人もボールも動く」は、ペップ・バルサの戦術を表面上でとらえ 分かりやすく説明するためのキャッチコピーに過ぎない。練習や試合で見られる特徴的な動きから ペップ・バルサの“真の戦術”を読み解くことで、新しいバルサのスタイルが見えてくる。(第3回/全9回)

 
 日本で持てはやされる「ボールも人も動く流動的なサッカー」だが、よく考えてもらえれば分かる通り、余程のスキルがない限り、ボールも人も動いているサッカーではパスの成功率は著しく低下する。
 
 クライフが「(人が走るのではなく)ボールを走らせろ。ボールは疲れない」という格言を残している通り、バルサのコンセプトは「人よりもボールが動くサッカー」である。
 
 そのために必要なことは、意外かもしれないが「足を止める技術」だ。要するに、走らなくていい時には無駄に走ってエネルギーを浪費せず、良いポジションを捨てないことだ。
 
 例えば、第2回で説明した四角形の中心にパスを挿し込む上で、中心に入る選手に求められるのは、「常に中心に留まっている」ことである。これが簡単なようで簡単ではないことが、今年バルサのアレビン(U-12)に入団した久保建英君のプレーを見て確認できた。
 
 10月に久保君がプレーするバルサのアレビンCの試合を現地で観戦したのだが、センターフォワードに入った久保君は動き過ぎるあまり自身のポジションとパスコースを同時に捨ててしまうシーンが何度か見られた。ボールを持った時のスキルやゴールに向かっていくドリブルはバルサの中でも飛び抜けていたが、オフ・ザ・ボ ールの動き方は質の高低ではなく、日本での指導の延長線がバルサのサッカーとマッチしていないことを示していた。


 
 日本の場合、「ボールと人が動くサッカー」という言葉が安易に飛び交いすぎるあまり、選手は育成年代からひたすら「動け、走れ」という指導を受けている。そのため、「動きを止めること=悪いこと」という認識を持っており、「動きを止める技術」や「タイミング良く動くことの重要性やその見極め」が見過ごされている。今や日本では、“パス&ムーブ”以上に“パス&スプリント”(パスを出した後にフルパワーで走ること)が求められるが、それは常に必要とは限らない。チャビやイニエスタを見れば分かる通り、時にはパスを出した後に足を踏み留めることも必要になるのだ。
 
 バルサとピッチ上で対戦したマジョルカの家長昭博に、イニエスタとチャビのプレーの印象について聞いた際、「彼ら全然動かないですね」と発言していた。とはいえ、チャビは毎試合10キロ以上を走行している。つまり、動くにしても、その質やタイミング、四角形の中心をキープす るためのポジションの微調整にこだわっているのだ。パスを出した後に何が何でも走るのではなく、ムーブすべきかストップすべきかを判断する。その前提がバルサの選手にはある。

(第4回につづく)

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