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最終予選進出を決めた日本が臨む北朝鮮戦は「消化試合」ではなく課題克服の絶好機

2011.11.14

 11日のタジキスタン戦に4-0で勝利した日本。同日の試合でウズベキスタンが北朝鮮を1-0で破った結果、日本とウズベキスタンのグループ2位以内が確定し、最終予選進出を決めた。15日に平壌で開催される北朝鮮戦は「3次予選突破を懸けた一戦」ではないが、戸塚氏はこのシチュエーションが「課題を克服するのに打ってつけの状況」だと語る。


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 ブラジルW杯アジア3次予選突破を決めた日本は、12日から北京でトレーニングを行なっている。

 タジキスタン戦後は、慌ただしい時間を過ごした。11月11日の16時に試合を終えると、シャワーも浴びずにホテルへ戻り、21時前にドゥシャンベ市内の空港へ。VIP専用の出発ゲートか ら、チャーター機で北京へ向かった。このときすでに、同日行なわれた北朝鮮戦でウズベキスタンが勝利し、日本の2位以内、すなわち3次予選突破が確定して いた。

 現地時間の12日早朝に北京へ到着したチームは、夕方からの練習をまえに北朝鮮入国に必要なビザを取得した。当初の予定では14日の出発直前に発給を受けるはずだったので、「移動前に少しでも長く選手が休める」と、チーム関係者はほっとした表情を浮かべた。

  北京五輪のメイン会場だった"鳥の巣"にほど近い競技場で行われた練習は、前日の先発メンバーが身体をほぐす程度の内容で、試合に出場しなかった選手たち はボールを使ったメニューに取り組んだ。途中出場の前田は先発組と同じようにランニングなどで切り上げ、出場時間の短い清武と伊野波は控え組に交じって汗 を流した。

 2試合を残して予選突破が決まったことで、チーム内はひとまず落ち着いた空気に包まれている。

「まずは3次突破をするのが目標だったので、それを早い段階で達成できたのは良かったです」という遠藤のコメントは、チーム全体に共通するものと理解していい。

 ドゥシャンベで行なわれたタジキスタン戦は、結果だけをなぞれば快勝だった。36分に今野の代表初ゴールで先制すると、後半に3ゴールを追加して4-0にまとめた。

  コンクリートを踏み固めるローラーでデコボコを矯正したピッチは、それでも不規則なバウンドをすることがあった。しかし、「それも想定内。前日に練習をし ていたし、ピッチが悪くてもある程度できるのは分かっていた」と、香川は影響がなかったことを明かす。「僕自身もそんなに気にならなかったですね」と、遠藤も話している。

 むしろ選手たちが気にかけているのは、先制するまでの時間帯だ。序盤からポゼッションをしたのは日本だったが、タジキスタンの意欲的な姿勢に気圧されたのも事実だ。31分には、左ポストを直撃するシュートも浴びている。

 振り返れば9月のウズベキスタン戦も、序盤の主導権を譲った。アウェイゲームになると、試合の入り方が課題として浮上する。吉田は言う。

「結果的に4点取れましたけど、立ち上がりに攻められる回数が多かった。それは9月のウズベキスタン戦の同じで。昨日のタジキスタン戦も、先制するまでは自分たちのサッカーができなかった。そこが課題かなと思う」

 15日の北朝鮮戦も敵地でのゲームである。目の前に横たわる課題を、修正できる機会だ。3次予選突破を受けてなお、選手たちの表情が引き締まっているのも当然だろう。

 キャプテンの長谷部が指摘した。

「ホーム、アウェイで戦い方が変わってくるとは思うんですけど、アウェイのなかでもう少し、自分たちの時間を増やしていきたいとは思います。W杯予選は、突破が決まっていても緊張感がある。そこで結果を残していけるかは大事というか、自分たちの今後につながると思うので」

 9月2日にさいたまで行なわれたゲームは、日本が攻め、北朝鮮がしのぐ構図で進んだ。今回はまったく違う展開が予想される。

 3次予選敗退となった北朝鮮には、もはや失うものがない。ホームゲームということも考えれば、序盤から攻撃のアクセルを全開にしてきてもおかしくない。日本にとっては、課題を克服するのに打ってつけの状況となる。

 ゲームの入り方はどうか。相手の流れをどうやって断ち切るのか。最終予選進出が決まっても、北朝鮮戦は消化試合ではない。

【戸塚啓 @kei166】 1968年生まれ。サッカー専門誌を経て、フランス・ワールドカップ後の98年秋からフリーに。ワールドカップは4大会連続で取材。日本代表の国際Aマッ チは91年から取材を続けている。2002年より大宮アルディージャ公式ライターとしても活動。著書には 『マリーシア(駆け引き)が日本のサッカーを強くする(光文社新書)』、『世界に一つだけの日本サッカー──日本サッカー改造論』(出版芸術社)、『新・ サッカー戦術論』(成美堂出版)、『覚醒せよ、日本人ストライカーたち』(朝日新聞出版)などがある。昨年12月に最新著書『世界基準サッカーの戦術と技術』(新星出版社)が発売。『戸塚啓のトツカ系サッカー』ライブドアより月500円で配信中!

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