2011.11.06

出遅れた王者、天才カッサーノの“穴”をどう埋めるかがミランの逆襲のカギを握る


文/翻訳協力=Giovanni Battista OLIVERO/小川光生

 マッシミリアーノ・アッレグリがミランの指揮権を託されて以降、“ディアボロ(悪魔)”のスタイルは著しい変化を遂げた。アッレグリはボール支配率にさほどこだわらず、守備をしっかりと固めた上で迅速な攻撃を仕掛けるという、それまでのミランとは全く異なるサッカーを標榜している。

 結果、ミランのサッカーはかつてよりもスペクタクルに欠けてしまったが、そのスタイルは堅実さを増し、何より結果を手に入れた。昨シーズンのミランが7年ぶりのスクデットを獲得できたのは、セリエA最高の守備力があったからだ。

 相手がボールを持った際のミランは、最前線から最終ラインのフィールドプレーヤー10人が守備に専念する。“異端児”のズラタン・イブラヒモヴィッチやアントニオ・カッサーノでさえ、最低限の守備のタスクを遂行しなければならない。とはいえ、実質的なファーストDFはケヴィン・プリンス・ボアテングだ。90分間のハードワークが可能なスタミナと走力を備えたボアテングは、高い位置からファウルをも辞さない激しさでプレッシングを実行し、指揮官からロビーニョやクラレンス・セードルフにはない運動量と守備力を買われ、トップ下の座を確保した。さらに、両脇からサンドするように相手を追い込む新加入のアントニオ・ノチェリーノとアルベルト・アクイラーニのコンビも効果的な働きを見せ、マルク・ファン・ボメルが持ち前のポジショニングセンスと対人プレーの強さを生かし、最終ラインの前の“番人”を担う。

 一方、ポゼッション時のミランは、カウンターを仕掛けることで相手を恐怖に陥れるチームとなる。プレーメーカーは中盤の選手ではなく、センターフォワードのイブラヒモヴィッチだ。後方からのパス(主にロングパス)を受けた後、チームのプレービジョンを決めるのはイブラヒモヴィッチ自身である。ボールをキープして味方の攻め上がりを待つ、サイドに走り込んだ選手にボールを流し、自身はゴール前に突進する、あるいはオープンスペースにスルーパスを供給するなど、攻撃のバリエーションは実に多彩だ。最近では、スペースに走り込んだボアテングがイブラヒモヴィッチのパスに合わせてゴールを陥れる形が定石となっているが、「イブラ&プリンス」のホットラインは、ゴールを奪う手段として今のミランに不可欠な武器だ。

 そしてもう一人、イブラヒモヴィッチと好連係を築いていたのがカッサーノだ。敵を欺くテクニックと豊かなイマジネーションを備えたファンタジスタは今シーズン、同じ天才肌のイブラヒモヴィッチとフィーリングを共有することに成功した。この“天才コンビ”は仮に相手がゴール前を固めたとしても、2人にしか分からない予測不能なコンビネーションで数的不利な状況を打開し、崩しからフィニッシュまでを2人で完結させる強大な力を持つ。

 そういう意味でも、カッサーノの離脱はミランにとって大きな痛手だ。しかし、チームには「カッサーノのために勝利を」という団結心が生まれている。ロビーニョや、スピードでカウンターの威力を倍増させるパト、ベテランのフィリッポ・インザーギなど、個性的な顔触れの並ぶミランのアタッカー陣が“カッサーノの穴”をどう埋めるか、それが今後のミランにとって大きなポイントになるだろう。

◇カッサーノの離脱
・カッサーノの手術が「完璧に成功」、復帰は約6カ月後
・ドローに終わったアッレグリ監督「勝利をカッサーノに捧げたかった」

◇攻撃陣の奮闘で巻き返しを
・イブラヒモヴィッチの2ゴールで王者ミランがローマ下し4連勝
・王者ミランが3点差をひっくり返す大逆転劇…ボアテングがハットトリック

◇冬の補強戦略は?
・ミラン副会長、デル・ピエロ獲得に意欲「若手より才能ある選手は貴重」
・リヴァプールに続き、ユーヴェとミランも香川獲得に興味か

【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(@SoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではCover&Cover Interviewページを担当。