2015.04.17

【FAカップ準決勝】アーセナルが圧倒的な有利な状況でレディングは“魔法の瞬間”を生み出せるか

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 アマチュアからプロまで、総勢736チームが参加した第134回FAカップもいよいよ準決勝。しかし、数字を辿れば辿るほど、アーセナルの決勝進出は“決定事項”に思える。それほどまでに、あらゆる点でレディングは分が悪い。

 アーセナルは、6回戦で宿敵マンチェスター・Uを2-1と撃破して前年王者の貫禄を見せつけた。一方で、下部ディヴィジョンから唯一4強にコマを進めた2部レディングの対戦相手は、同じ2部のハダーズフィールド、カーディフ、ダービーに、3部のブラッドフォード。ここまでは相手に恵まれた感が否めない。正直、アーセナル陣営からしてみれば、チェルシー相手に金星を挙げたブラッドフォードの方が嫌な相手だったかもしれない。

 そのレディングが準決勝を戦うのは、1926-27シーズン以来なんと88年ぶりである。対して、連覇を狙うアーセナルは2年連続、28回目の準決勝だ。これはマン・U(27回)を抜いて歴代単独トップの数字。ガナーズは決勝進出回数(18回)と優勝回数(11回)もマン・Uと並ぶ歴代トップであり、すべての数字でライバルを上回るべく燃えている。踏んできた“場数”の差は明らかだ。

 さらに、アーセン・ヴェンゲル政権下のアーセナルがFAカップで下部のチームと対戦したケースは過去に33回あるが、負けたのはたった1度だけ(12-13の5回戦ブラックバーン戦)。

 また、“相性”を見てもレディングにとっては最悪だ。彼らは過去にアーセナルと対戦したFAカップで3戦全敗。それどころか、公式戦全12試合ですべて負けている。最後の対戦は彼らがプレミアに在籍した12-13シーズンだったが、リーグではホームで2-5、アウェーで1-4といずれも完敗。このシーズンはリーグカップでも5-7という野球のようなスコアで負けている。

 今回も、直近3度の対戦で16失点という“トラウマ”を思い出す羽目になるかもしれない。というのも、いまアーセナルの攻撃陣は絶好調なのである。

 ガナーズは年明け以降のプレミアで最も多くの勝ち点を稼いでいるチームであり、目下リーグ8連勝中と勢い十分。3月のプレミア月間最優秀選手に輝き、プレミア最近7試合で7ゴールのオリヴィエ・ジルーがなにしろ調子がいい。

 現在プレミア21試合14ゴールのジルーだが、特筆すべきはシュート数58本に対して決定率24.1%という数字である。プレミアで彼より多く得点を挙げている選手は4人いるが、そのうち決定率に関してジルーを上回るのはジエゴ・コスタ(24.3%)のみ。セルヒオ・アグエロ(15.8%)、ハリー・ケイン(21.8%)、チャーリー・オースティン(14.2%)よりも“効率のいいストライカー”であることがわかる。さらに、ジルーはここまで枠内シュート数が37本。枠にシュートを飛ばせば半分以上をネットに収めるという効率の良さは驚異的だ。

 また、そのジルーの周囲に散らばる選手たちも負けず劣らず好調だ。チーム最多のシュート数(94本)を誇るアレクシス・サンチェスは、ジルーと同じ14得点を挙げ、チーム最多タイの8アシストをマークしている。そのサンチェスと同じアシスト数は、左右両足を使いこなす技巧派サンティ・カソルラ。この3枚だけでも十分強烈だが、急激に調子を上げてきたメスト・エジルとアーロン・ラムジーがここに加わるのだから相対するDFは泣きたくなる。

一方で、レディングはウェンブリー行きを決めた3月16日の6回戦再試合のブラッドフォード戦(3-0勝)以降、リーグ戦5試合で0勝3分け2敗。1カ月も勝ち星から見放されているチームの守備陣が、多士済々のガナーズ攻撃陣を抑えるのは不可能に思える。

 数字を見れば見るほど、レディングに勝ち目はない。

 ただ、あらゆる数字を覆す“魔法の瞬間”こそ、FAカップの醍醐味でもある。

 2部リーグ24チーム中18位に位置するレディングは、3部降格の心配も、プレミア昇格の希望もないからこそ、FAカップに全精力を傾けることができる。また、15歳でアーセナルの下部組織を放出された過去を持つFWハル・ロブソン・カヌが「僕らにプレッシャーはない。ウェンブリーを楽しむだけだ」と語るように、“負けて当然”の弱者には一切の気負いがないのもポジティブな要素だ。

 加えて、不気味なのはスティーヴ・クラーク監督の存在である。昨年12月に解任されたナイジェル・アドキンスから指揮を引き継ぎ、チームをウェンブリーまで連れてきたクラークは、かつてチェルシーでジョゼ・モウリーニョの副官を務めていた男。そう、モウリーニョといえば、ヴェンゲルが公式戦で一度も勝ったことがない“天敵”である。

 モウリーニョ流を知り尽くす戦術家だけに、驚きのアーセナル対策を用意している可能性も十分にある。中立のファンなら、“世紀のジャイアントキリング”を期待して試合を見てみるのもまた一興である。

 最後に、「おまけ」をひとつ。

 もしレディングのメンバー表に「Keown」の文字を見つけたら、それは元アーセナルの英雄マーティン・キーオンの息子ナイアル・キーオンのことだ。まだ20歳になったばかりで主力とは言えないが、もし英雄の息子がピッチに立つことがあったら、アーセナルのサポーターも温かく見守ってあげてほしい。

アーセナル情報・分析データはこちら http://foxsports.jp/world_soccer/premierleague

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