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日本代表の新体制2試合目を実況…日テレ中野謙吾アナウンサー「視聴者のハテナを解消したい」

2015.03.31

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写真●瀬藤尚美 インタビュー●小谷紘友

 選手やサポーターにとって特別な試合である日本代表戦。その位置付けは、伝える側のメディアにとっても変わらない。取材には何百人もの報道陣が集結し、日本サッカーの最高峰を伝えるべく、熱を込めている。

 3月31日に行われるサッカーJALチャレンジカップ2015のウズベキスタン代表戦は、ヴァイッド・ハリルホジッチ新体制の2戦目。注目度がさらに跳ね上がることが予想される試合で、実況を務めるのは日本テレビの中野謙吾アナウンサー。自身も学生時代にテニスで全国大会に出場した経歴を持つスポーツマンで、今春で入社12年目を迎えるベテランアナウンサーだ。

 数千万人が見つめる日本代表戦の生中継。画面に映らないところでは、声に乗せて視聴者に過不足なく情報を届けようと「言葉のスポーツ」が行われている。

数ある中継の中でも、日本代表戦は一番経験したいもの

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――今回のウズベキスタン代表戦で、日本代表戦の実況は3回目と聞きました。

中野謙吾アナウンサー(以下、中野)「そうですね。2013年8月のグアテマラ戦と、その年の10月に行われたヨーロッパ遠征のセルビア代表戦。それに、去年はワールドカップに行かせてもらって、アルゼンチン対イラン戦で(リオネル)メッシのゴールも実況しました。そして今回、ワールドカップ後に日本テレビが中継する最初の代表戦を実況させてもらうことになりました」

――アナウンサーの方にとって、日本代表戦はどのような試合になりますか?

中野「特別ですね。順序をつけていけないとは思いますが、数あるサッカー中継の中でも、代表戦は一番経験したいものだと思います。会社としても力を入れ、生中継で視聴率も20パーセント近くなるなど、色々なことが含まれています。加えて、一つのテレビ局が中継できるのは多くて年間3、4試合。そこで自分が実況できるチャンスがあるということは、本当にありがたいことです」

――思いが強いからこそ、プレッシャーも大きいのではないかと思います。

中野「ものすごいですね。グアテマラ戦を実況した時は、既に入社9、10年目でしたが、試合前日に過呼吸になりかけました。あまりのプレッシャーで、呼吸の仕方を忘れてしまったんですよ。初めての代表戦ということもあり、2カ月ほど前から『8月の代表戦やるから』と言われていて。そこからの2カ月間は家族と何をしていても、食事をしていても、常に日本代表が頭をよぎるような状態でした」

――達成感という意味では、いかがでしょうか?

中野「もう半端ではないですよ。毎回終わる度に、自分にプレゼントを買おうと思うぐらいです(笑)。スポーツ実況は何が起こるかわからない。台本がないので、90分間自分で『好きなように料理していいよ』と言われている状態です。ただ、その代わり、ものすごく考えます。材料を決めて調理して、お客さんの食べる瞬間まで気をつけるということと一緒で、実況も試合中は頭をフル回転させて、良いシーンを切り取りながら一番良い言葉を選び、一番良い質問を解説者にぶつける。だからこそ、終わった後の達成感はとんでもないですね。やめられないと思います。オリンピックやワールドカップも実況されて、既に引退された先輩アナウンサーの方が以前、『何もやり残したことはない。後悔していない。でも、一つだけ寂しいなと思うことは、前日に緊張で眠れないような、吐きそうになるような緊張感を味わえないことが寂しい』とおっしゃっていました」

アナウンサーは、視聴者のハテナを解消することが仕事

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――今まで実況された中で思い出に残っているシーンはありますか?

中野「良かったというのは人の評価でもあるのでわからないんですが、初めてネイマールという選手を世に伝えたことは思い出に残っています。2011年のクラブワールドカップでサントスと柏レイソルが対戦した時に、ネイマールが右足から持ち替えて左足でシュートを決めたシーンがあったんですが、あの試合を実況させてもらいました。あの時は取材でブラジルまで行かせてもらって、当時のブラジルでも既にスーパースターでした。ただ、日本の中ではあまり露出もなく、知られていなかったと思いますが、日本に来てカッコいい選手だとちょっと人気になりはじめて、そしてゴールを決めた。あのゴールを実況できたことは、思い出に残っていますね」

――確かにすごいゴールで、日本でも一躍有名になるきっかけでした。

中野「それと、一番最初にサッカー実況をした試合も思い出に残っています。入社3年目の11月、高校サッカーの茨城県大会決勝で鹿島学園対水戸商業でしたが、忘れられないですね。本当に緊張しました」

――実況をする上で、何か気をつけていることはありますか?

中野「一番は目の前のことをしっかりと伝えるという部分です。アナウンサーは、視聴者のハテナを解消することだと思っています。視聴者の方には生中継を見ながら、大きいところでは試合の見どころはどこなのかというハテナがあります。細かいところでは、ボールを持ったのは誰か、シュートを決めたのは誰かというハテナがあると思います。そのハテナを大きいところから小さいところまで解消していくことが、アナウンサーの仕事だと思っています」

視聴者の方がワクワクすることを織り交ぜていく

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――試合では、解説者の方とも連携しながら実況を進めていくと思います。

中野「一番気をつけているところは、試合が終わった時、解説者の方に『今日は言いたいことが言えなかった』などのフラストレーションを持たせないようにするという点です。『今日はいっぱい解説できた』と思わせたいですよね。やはり、私たちは影なんですよ。解説の都並(敏史)さんや北澤(豪)さん、城(彰二)さんといった、日の丸を背負って戦った方々がこの試合をどう見ているのか。それが、視聴者の方の一番気になるところだと思います。一方で、アナウンサーは淡々と目の前のプレーを逃さず伝えることに、視聴者の方がワクワクすることを織り交ぜていくという作業があります」

――「ワクワクすることを織り交ぜる」という部分を詳しく教えて頂けますか。

中野「選手が右サイドでボールを持っている場合、見ている人はそれしか見えていない場合もあります。実況するならば、『右サイドの内田。ボールを持って上がる』となります。ただ、これをどうやったらワクワクさせられるか。例えば、内田選手が利き足ではない足でトラップしてドリブルしているならば、そこをピックアップしたりします。他には、『内田、ドリブルで上がる。中央には香川がいる』と。『中央に香川がいる』という一言で、ちょっとワクワクしませんか?」

――そうですね。確かに今、ワクワクしました。日本代表戦はファンはもちろん、普段はサッカーを見ない方も注目するので、意識することも多くなりそうですね。

中野「クロスが上がって香川選手がダイレクトボレーでシュートを決めるかもしれないという、次に何かあるかもしれないというワクワク感を実況でも出していきたいですね。それと、今回はハリルホジッチ新監督になり2戦目で、わかりやすい放送になります。色んなことを整理して、試合当日の天気、会場の雰囲気、相手の強さ、日本代表がどのような練習をしてきたのか、新監督の人物像など、視聴者の方のハテナを解消しながら、目の前のことをしっかりと伝えたいですね」

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