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2015.01.11

フォーメーションとシステムはどうやって見分けるのか~バルセロナ対エルチェ戦を参考にして~

実況「エルチェはどういう並びできているのか?」


Photo by Getty Images

 テレビの実況を聞きながら試合を見ていたら、アナウンサーが「エルチェのフォーメーションは5バックを予想しています」と告げる。画面には日本のテレビ局が予想したシステムの図が映し出される。最終ラインが5人並んだ[5-4-1]で中盤の4人はフラット気味だった。

 次に、スペインのテレビ局が予想したシステムの図が現れる。最終ラインに4人がいる[4-2-3-1]でDFの前には2人のCHがいた。

 キックオフを待って両チームの選手がそれぞれのポジションに並んで、試合開始を告げる主審の合図に備えている。そのときに、実況のアナウンサーが「エルチェはどういう並びできているのか?」と述べた。エルチェの選手たちは、キックオフを待ってきちんとした「並び」のままでポジショニングしているのだけれども、アナウンサーは確かな情報を知りたくて解説者に尋ねたのである。

 画面に映されたシステムの図と、実際の試合でチームが採用しているシステムが違っていることはよくあることだ。試合前のシステムの図は、あくまで予想されたものなので、本番と違っていても仕方ないことである。

「選手がどういう並びできているのか?」と思ったとき、システムを正しく見分ける方法がある。それは、次のような見方をすればいい。

システムを見分ける2つのポイント

【1】キックオフの瞬間を見る
【2】GKがゴールキックする瞬間を見る

【1】については、主審が笛を吹く前にセンターラインの中央にボールが置かれて両チームの選手が左右にわかれてそれぞれの場所に並ぶ。そのときには、ほとんどのチームが監督から指示されたシステムできれいに並んでいる。

 1月8日に行われたスペイン国王杯ベスト16第1戦、FCバルセロナ対エルチェCFでのキックオフの瞬間を見てもらえれば、エルチェの「選手がどういう並びできているのか?」がよくわかる。

 最終ラインにDFが3人いて、両サイドにはやや上がり目のポジションをとる2人の選手がいる。合計5人の選手が最後尾に並んでいる。DFラインの前には3人の選手が横一列になって、トップのFWは2人の選手が横並びになる。つまりキックオフの瞬間を見れば、エルチェの選手の並びが[5-3-2]だとすぐにわかるのである。

【2】に関しては、試合中にGKがボールを持ってキックを蹴るときがある。あるいは、GKがボールを手に持っている際、CBやSBにボールを転がして渡すときがある。テレビ画面だとピッチ全体が映されないケースが多いのでわかりにくいのだが、選手たちはそれぞれのスタートポジションに戻ってプレーしようとする。スタートポジションとは定位置のことで、キックオフの瞬間と同じくシステムに従って並んでいる場所のことである。

 GKからのボールには例外もある。GKが、ボールをキックする際や手でボールを渡すときに、注意して見なければならない。アギーレ監督が率いる日本代表などのシステムでも見られることだが、CBが両サイドに大きく開いて、そこの間にCHが下りてきて最終ラインを3人で作るときがある。ビルドアップを開始する際によく見られる光景なのだが、これは3バックではなく4バックが基本システムだということだ。

 例外を除いてほとんどの場合は、キックオフ時とゴールキック時の瞬間に選手はシステム通りのポジションにいる。これが、システムの見分け方になる。

「フォーメーション」「システム」「戦術」の意味区分

 サッカー用語の中に「フォーメーション」「システム」「戦術」という言葉がよく使われる。これら3つの用語は、それぞれきちんとした意味分けがなされている。そのことを少し説明しよう。

 まず「フォーメーション」という用語から始める。「フォーメーション」とは、例題として述べてきたエルチェの[5-3-2]という表記で示す数字のことである。選手それぞれの並びを横のラインから見て、そのラインを単純に数字で表したものだ。数字の5の場合はDFが5人で、3はMFが3人、2はFWが2人となる。したがって「フォーメーション」は、あくまでも人数の並びを数字で示したものと言える。

 余談になるが、オランダやスペインでのライセンス取得の講習会で表現されるのは、GKのポジションも表記して[1-5-3-2]と書く。筆者もそうした慣習にしたがって、GKの1を入れて数字を表記していたのだが、日本では[5-3-2]とGKを省略するケースがほとんどなので、このコラムでもGKの1を省いて書いている。

 では「システム」とは何を意味するのだろうか?

「システム」は、実際にピッチの上で選手がどのように配置されているのかを示しているものである。数字を表記するだけの「フォーメーション」から、その数字が平面のフィールド上に配置されて、図式化できる像を「システム」と呼ぶ。

「システム」によって、それぞれの選手の役割が細かく分けられている。「システム」を理解すれば、監督が具体的にどの選手に何を求めているのかがうかがえる。

「システム」の見方として、DFライン、MFライン、FWラインというようにそれぞれをラインで捉えてから、そのラインにいる選手がどのような形をしているのかを見る。たとえば、エルチェのMFに関して言えば、MFのラインは3人が横一列に並んでいて、FWの2人も横並びになっている、というように理解する。

 MFの3人が三角形や逆三角形になっている場合もあるし、FWの2人が縦並びのときもある。つまり、「システム」の種類は厳密に言えば、無数に存在するのである。

 そして、「戦術」とは「チームの戦い方」のことである。選手それぞれの能力に見合ったチームとしての戦い方のことを「戦術」と呼ぶ。

「フォーメーション」「システム」「戦術」の3つは、それぞれ切り離して考えられないものである。監督がチームに「戦術」を機能させるには、どの「フォーメーション」を採用して、どんな「システム」をやるのかはっきりさせて、「どうやって戦うのか」という意図を選手に植え付ける必要がある。

 では、冒頭のトピックの問いへの答えに戻ろう。

「エルチェはどういう並びできているのか?」という問いには、キックオフの瞬間を見ればよくわかる、と答えればいいのである。

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