VILLARREAL, SPAIN - DECEMBER 21: Luciano Dario Vietto (C) of Villarreal celebrates with his team-mates after scoring during the La Liga match between Villarreal CF and Deportivo de La Coruna at El Madrigal on December 21, 2014 in Villarreal, Spain. (Photo by Manuel Queimadelos Alonso/Getty Images)

ビジャレアルが最高の形でクリスマス休暇を迎えた。リーガ・エスパニョーラ第16節でデポルティボをホームで3-0と粉砕。2009-10シーズン以来のリーガ5連勝を達成し、公式戦7連勝と最高の形で2014年の日程を終えた。
目下、公式戦22連勝のレアル・マドリードと比較するとビジャレアルのそれは3分の1にも満たないが、レアル・マドリードとバルセロナの2チームとリーガの他のチームを比較すること自体に無理がある。スペイン紙『エル・パイス』によるとレアル・マドリードの年間予算は5億2000万ユーロ(約714億円)で、バルセロナは5億900万ユーロ(約700億円)、そして次に予算の多いアトレティコ・マドリードが1億4600万ユーロ(約200億円)だ。
ビジャレアルはリーガで9番目に予算が多いチームで4400万ユーロ(約65億円)だ。レアル・マドリードの予算の11分の1となっている。ちなみ最も予算が少ないのはエルチェで1600万ユーロ(約24億円)。下位が自分たちの何十倍も予算のある上位に勝てるはずがない。リーガでは2強が図抜けるのは予算を見れば明らかだ。この数字を見ていると2大クラブが下位チームに大量得点で勝てないのが、不思議に思えてくる人もいるのではないか。
予算が上から9番目のビジャレアルは16節終了時点で勝ち点30の5位につけている。チャンピオンズリーグ出場権が手に入る4位のバレンシアとはわずか勝ち点1の差しかない。チャンピオンズリーグ出場も十分に狙える位置につけている。

そんな好調のビジャレアルを語る上で欠かせないのが、今シーズンからチームに加わった2人の選手だ。1人は21歳のアルゼンチン人ストライカー、ルシアーノ・ビエットだ。アルゼンチン代表のヘラルド・マルティーノが招集するのも近いのではないかと言われている。
ビエットはアルゼンチンのラシン・クラブで17歳でプロデビュー。70試合18得点という結果を残し、今シーズン前にビジャレアルにやって来た。序盤はベンチスタートが多かったが、ジオバニ・ドス・サントスが負傷で戦線を離脱している間に結果を残し、すっかりツートップの一角に定着。今シーズンは公式戦で12得点7アシストと移籍初年度とは思えないパフォーマンスを披露している。ハイライトは第15節、アウェーでのアトレティコ・マドリード戦だった。ビエットはカウンターからドリブルで対峙するリーガ屈指のセンターバック、ディエゴ・ゴディンを抜き去り決勝点を奪った。昨シーズンの王者を破ったビエットの一撃はスペインだけでなく、欧州で大きく取り上げられた。
このゲームのキックオフ直前にビエットは相手チームのベンチに近寄り、敵将に挨拶していた。17歳のビエットをプロデビューさせたのが、アトレティコの指揮官ディエゴ・シメオネだったからだ。ビエットは「自分をプロデビューさせてくれた感謝はずっと忘れない」とコメントしている。本拠地のビセンテ・カルデロンでシメオネのチームは12勝5分と2014年は1敗もしていなかったが、自分がプロデビューさせた選手のゴールにより、今年最後の本拠地のゲームを落としてしまった。シメオネはビエットのゴールをこう称えている。
「ホームで長い間負けておらず、重要な敗北を喫してしまったが、ビエットのゴールは私を満足な気持ちにさせた。彼が持っているクオリティの高いプレーを指し示す得点だった」
ビエットの名前はすでに多くのビッグクラブのリストに入っており、同時に決定的なゴールを連発するのでビジャレアルの顔にもなりつつある。地元メディアはビエットを2007年から2013年まで在籍していたイタリア人ストライカーになぞらえ、新たな“ジュゼッペ・ロッシ”と評していたが、今ではそんな枕詞は必要なくなった。ビエットという名前は入団から半年にしてすでにビジャレアルで市民権を得ている。

ビエットと共にビジャレアルの新たなアイドルとなったのが、デニス・チェリシェフだ。スペインとロシアの二重国籍を持つ23歳のサイドアタッカー。父親は元ロシア代表でスペインのスポルティング・ヒホンなどに在籍。その息子のデニスはレアル・マドリードの下部組織でプレー。トップチームでは出場機会に恵まれず、昨シーズンはセビージャにレンタルに出されていた。しかし、負傷もあり試合にほとんど出場せず、今シーズンはビジャレアルにレンタル移籍。マルセリーノ・ガルシア・トラル監督の信頼を受け、左サイドアタッカーのレギュラーとして活躍し。第16節終了時点でアトレティコ・マドリードのコケと並んでリーガ最多の8アシストを記録している。レアル・マドリードが同選手のパスを保有しているが、ビジャレアルのサポーターがシーズン終了時には彼の買い取りを願わずにはいられない結果を残している。
ビジャレアルのようにスペインの大半のクラブはこのように名前を知られていない若い才能を伸ばし、その伸びしろで他クラブとの予算の差から生じる戦力差を埋めている。今シーズンはビジャレアルは若手に賭けて勝った。彼らのお隣のバレンシアもそうだ。しかし、成長した若手選手はビッククラブに引き抜かれる運命にあり、賭けはそう何シーズンも勝てるものではない。ゆえに絶対的な予算を持つ2大クラブの優位はリーガでは絶対に揺るがないのだ。