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【親子スポーツ】子どものパフォーマンスを引き出すお父さん、お母さんの声かけ方法

2015.01.05


文=飛田 基(ライフコーチ、理学博士)

 私事で恐縮ではなりますが、我が家の子どもはかつてアイスホッケーをやっておりました。今は、テニスをしています。チームに所属して、定期的に練習をしています。時には試合もあります。そうすると、チーム所属しているお子様のお父様、お母様とも顔を合わせる機会があります。

 私は、人の可能性を引き出し、可能性を可能性で終わらせずにそれを本当に実現するためのお手伝いをする、「ライフコーチ」という仕事をしています。スポーツ、学業、ビジネスに関係なく、可能性を引き出すことができるスキルをお伝えしています。そのような職業柄一部のお父様、お母様の言動が気になってしまうこともあります。前向きに物事をとらえれば、そのくらい一生懸命に子どものスポーツを応援しようとしているお父様、お母様がいるのですから、この力を活用して、もっともっと強いチームを作り、子どもにより多くの成功体験をしてもらうことが可能なはずなのです。

 そこで、ここでは、「ライフコーチ」の観点から、我が子のパフォーマンスを引き出すために、お父様、お母様は何に留意し、どのようにお子様に声をかけていくと良いのかをご紹介できればと思います。

声掛けの基本は「子どもが主体でないとならない」

 お伝えしたいと思う内容が溢れるほどたくさんあるのですが、それを、一言で申し上げますと、「子どもが主体でないとならない」ということです。それをいくつかの例を使って、お伝えしたいと思います。

 例えば、これから家を出て練習に行く時間がやってきたとしましょう。その時に、「ほら、◯◯時から、練習始まるんでしょ?」「早く準備しなさい」「××は持ったの?」こんな声かけを日々繰り返してはいないでしょうか?

「日々、繰り返して」というのが、実は大きなポイントです。こういう声かけでは、子どもは自分で準備をする習慣を身につけるのに、長い時間が必要となります。なので、毎日毎日同じことを繰り返して言わないとならないのです。時には、「何度言ったらわかるの!!!」と大声を張りあげたくなってしまう気持ちもわかります。でも、それは子どものせいではありません。声かけのしかたが、十分に効果的ではないから、子どもが分かるまでに時間がかかってしまうのです。

「子どもが主体でないとならない」

 これを実践するには、声かけ方法を変えればよいのです。どのように声をかけるかは、子どもの発達段階(たとえば年齢)に大きく依存します。小学校の低学年であれば、こんな会話になれば最高です。

「今日はサッカーの練習いくんだよね?」
「うん、行く!」
「練習には何をもっていくんだっけ?」
「練習のジャージと、水筒!」
「じゃあ、練習のジャージを持ってきてごらん」
持ってくる
「じゃあ、水筒を持ってきてごらん」
「水筒、どこにあるかわかんないよ」
「それじゃあ、どこにあるか教えてあげよう」
「これだけあれば、サッカーの練習にいける?」
「あと、靴下とサポーターと、、」
「じゃあ、靴下は持ってこれるかな?」

 こんな感じです。子どもがサッカーを習うのだから、子どもが自分で準備をする。これは当然のことです。子どもが自分でできないこと(例えば、水筒がしまってある場所がわからない)ときに、その都度、教えていけば、すぐに出来るようになるとは思いませんか?

 習い事をはじめて1年くらいが経ち、リズムが分かってきたら、時間感覚についても教えたいですね。これは小学校の中学年くらいからになると思います。

「練習は何時からだっけ?」
「17時からだよ」
「じゃあ、17時から練習できるようにするには、何時に家をでればいいの?」
「んーと、16時半くらいかな」
「そっか。それじゃあ、16時半に家を出るためには、その前に何をすればいいの?」
「それには何分くらいかかりそう?」
「うーん、10分くらいかな」
「じゃあ、16時20分にはこれが終わってないといけないんだね?」

 こんなやりとりを繰り返すと、何時に何ができていないと遅れているのかが分かるようになります。

 さて、そんなこんなで練習場所に到着しました。

 ここでも、「子どもが主体でないとならない」が有効です。

 そもそも教えることが仕事であるコーチは、そのことをよく分かっています。では、お父様、お母様がどのようなことをすると、子どもが主体ではなくなってしまうのでしょうか?

 1つは、親が教えてしまうことです。教えることはコーチがやるのですから、その役割を奪ってしまうのは、失礼なことです。さらに、教えることが違うと子どもは混乱します。そして、もっと悪いことに教えれば教えるほど、子どもは自分で考えなくなってしまいがちです。

「聞く力を育てること」の重要性

 では、親はどう接したらいいのでしょう? まずは、子どもがコーチのいうことをきちんと聞くように指導することです。家庭であれば、親が話を始めたら、テレビを消す、箸を置くなど、顔を向けるなどの指導をして、「ながら聞き」をしないようにしつけをすることです。

 スポーツの指導現場では、お父様、お母様は周りで見ているだけかもしれません。ですので、練習を終えて子どもが戻ってきたら、「今日、コーチに習ったことで一番大切なことは何?」と聞いて見ましょう。もしかしたら、親が期待するような答えは帰ってこないかもしれません。そうしたら、「次の練習のあとでも、また同じ質問をするからね」と伝えて上げましょう。練習が終わったら、コーチが何を話したかったのかを聞かれるということがインプットされれば、それが聞く力を育てることになります。

 お父様、お母様がそのスポーツの経験者である場合には特に強い傾向がでるのですが、子どもができていないプレーを「あれができていない」、「これはこうでしょ」と事細かに指摘してしまうという光景もよく見られます。

 この行動には、多くの弊害がありますが、利点は見当たりません。できていないことを指摘すると、それができるようになるでしょうか? スポーツの特定の動作を覚えるということに関しては、ほぼ期待できません。なぜ期待できないかというと、そもそものあるべき姿を理解していないケースがあまりに多いことが1つの理由です。コーチがいくら、大人からわかりやすく説明しているように見えても、子どもが分かっているとは限りません。これは、20歳を過ぎたプロスポーツ選手とコーチの間でさえ見られる現象です。もう1つは、あるべきプレーが理解できていたとしても、体がその通りに動かせるとは限らないからです。

 むしろ、「あれができていない」、「これはこうでしょ」と子どもに指摘することは、子どものやる気をそぐ可能性が高いのではないでしょうか? また、できていないことばかりを指摘されることは、自信を植え付ける上でも有効ではありません。さらに、コーチはそんなことをすべて分かっていて、子どもの発達段階(年齢)に応じた、適切かつ長期的な視野の育成方法をすでに実践している可能性が高いです。

 一方で、できないことをできるようになることは、プレーを上達させるために必要なことです。では、どうしたらいいでしょう?そのために使う3つの質問があります。

「どんなことで困っているの?」
「それがどうなったらうれしいの?」
「そのために、どんな練習をする?」

 最初の質問で、子どもが感じている問題意識を引き出します。子どもが感じている問題点を話題にするからこそ、「子どもが主体」となるのです。そして、2つ目の質問を使うと、問題点を口にすることが、単に文句を言って終わるのではなく、目標に変換されるのです。さらに3つ目の質問を使うと、目標をやるべき練習がつながってきます。

 さらに、「今日の練習とどんな関係があった?」と聞いてみてもよいでしょう。すべての練習には意図があるはずです。それはコーチが持っている意図です。しかし、子どもがその意図を感じているとは限りません。年少の子どもであれば、そのような意図は感じる必要さえないでしょう。しかし、小学校の高学年か、それ以上になってくると、練習の意味を分かってやるのと、そうでないのとでは大きな差がついてきます。

 それを、「言い聞かせる」のではなく、「質問を使って、子どもの口から引き出す」ことこそが、お父様、お母様にできるコミュニケーションの極意です。

まとめ

 時間を守って動く、自分のことは自分で準備する、コーチのいうことをきちんと聞くという基本的生活習慣を身につけさせる。そしてコーチが教えようとしていたことが子どもの言葉で話させ、理解を定着させる。こういったことを質問をし、対話をしながら身につけさせることができれば、子どものパフォーマンスは大幅に高まります。

 何でもかんでもやって上げすぎると、伸びなくなります。なぜならば、子どもは親に依存してしまうようになるからです。

 何でもかんでも指摘し、教えすぎてしまうと、伸びなくなります。なぜならば、子どもは自分で考えなくなり、大人に聞けば答えがもらえると思うようになるからです。

 自主性を育み、自分で考える子どもを育てることが、あらゆるスポーツにおいてパフォーマンスを向上させるキーです。そのためには、「子どもが主体である」ことをいつも覚えておき、子どもの主体性を引き出すような質問を使ってみましょう。

【関連記事】
●自主性を育む小学生のサッカーチーム作りと、指導の実例(教育のためのTOC 日本支部)

飛田 基 1974年生。米国フロリダ大学で博士号(化学物理)を取得後、日立製作所基礎研究所に7年間勤務。コンピュータシミュレーションと材料設計の専門家として、10報以上の論文を執筆し、第一線の科学者としての経験を積む。 その後、人間のヤル気を引き出す、そしてより充実した人生を送るといったソフト面への興味から現在の仕事を始める。ゴールドラット博士による制約理論(TOC)のエキスパートとして、ビジネス、教育、スポーツの分野に科学的な考え方を持ち込むことで大きな成果を出している。非営利活動団体「教育のためのTOC」の事務局長でもある。
http://www.global-optimum.com/

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