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C・ロナウドの飽くなき向上心「『自分が完璧だ』と思ったら、僕は現役を引退するだろう」

2014.12.26

[ワールドサッカーキング1月号掲載]

バロンドール、ゴールデンシュー、そしてチャンピオンズリーグ……。クリスティアーノ・ロナウドはこれまで、あらゆるタイトルを手にしてきた。それでも彼の口をついて出るのは「もっとうまくなりたい」という言葉。CR7の最も特筆すべき能力は、“努力を怠らない才能”なのかもしれない。
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インタビュー=ホセ・フェリックス・ディアス
翻訳=高山 港
写真=ゲッティ イメージズ

これまでのクラシコで最も良いゲーム

――今シーズンも驚異的なペースでゴールを量産しているけど好調の要因は?

C・ロナウド トレーニングの成果、努力の賜物と言うしかないな。それにゴール量産はチームメートの協力があってこそだと思っている。今のレアル・マドリードは自信を持ってプレーしている。(カルロ)アンチェロッティ監督の指示どおりのサッカーができているんだ。

――でも序盤戦はレアル・ソシエダとアトレティコ・マドリード相手に連敗を喫した。あのままずるずると後退してしまう危険性もあったのでは?

C・ロナウド 僕らはあの敗戦をバネによみがえった。ポジティブなメンタリティーを取り戻したんだ。僕自身は今、最高のコンディションにある。精神的にもすごく充実しているし、何より身体的に何の不安も抱えていないのは大きい。昨シーズンは故障に苦しんだ。年間を通して常に痛みとつき合いながらプレーしていたという感じだった。

――試合を休むという選択肢はなかったの?

C・ロナウド レアルとポルトガル代表の勝利に貢献したいという思いから、ちょっと無理をしてしまった。結果、ひざの状態は悪化して、一時はキャリアの継続さえ危険な状態にあったんだ。今シーズンも開幕を迎えた時点では、ひざの痛みが完全には癒えていなかった。騙しだましプレーするしかなったのさ。

――そして、ついにストップすることを余儀なくされた。

C・ロナウド そう。僕は第2節のソシエダ戦とユーロ予選のアルバニア戦を休むという決断をした。2週間、治療に専念したんだ。でも結果としてそれが良かった。痛みは完全に消え、最高のコンディションでプレーできる状態になったんだ。僕の究極の目標はすべての試合を最高の状態でプレーすること。それが今は実現できているのさ。それが好調の要因だと思う。

――先日のクラシコを振り返ってほしい。ずばり勝因は?

C・ロナウド レアルに加入してから何度もクラシコを戦ってきたけど、あの試合は僕が出場したこれまでのクラシコでも最も良いゲームだった。まさに完勝と言える内容だったよ。あの日のレアルはあらゆる面でバルサを上回っていた。スコアは3-1だったけど、正直言って、もっと差を広げることもできたと思う。あの試合で僕らはバルサに優っているということを証明できた。勝因は何かって? そうだな、全員が勝利を信じて戦ったことかな。

――あの試合まで、バルサは完璧なプレーを見せていた。試合前の時点では順位表でもバルサのほうが上だったね。

C・ロナウド そんなことは全く気にならなかった。僕らはあくまでも僕らのリズムでプレーした。ナーバスになることもなかったよ。あのゲームでは完全にボールを支配できた。インテンシティや勝利への意欲という点でもバルサを上回っていたと思う。それも勝因の一つだ。バルサとの対戦はいつも紙一重だけど、重要なのは「勝ったチームが強い」という事実だよ。もちろん、チーム力だけじゃなく、あの試合では選手個々でもバルサを上回っている事実を示せた。クラシコは「ロナウドとメッシの対決」じゃない。あくまで「レアル・マドリードとバルセロナ」の対決なんだ。その対決をウチが制したということさ。

――改めて今シーズンのバルサをどう見ている?

C・ロナウド 偉大なチーム、偉大なライバルであることに変わりはないよ。今はまだ、新監督の下で新たなチームを作っている段階だと思うけど、今シーズンも当然、すべてのタイトル争いに絡んでくるはずだ。サッカー活動を禁止されていたルイス・スアレスもピッチに戻って来たし、クラシコに勝ったからといっても油断は禁物だ。

――クラシコでの敗戦を機に彼らは急激に調子を落とした。周囲からも批判の声が上がり始めているけど。

C・ロナウド 彼らが何らかの問題を抱えているのかどうか、もちろん僕には分からない。と言うか、僕にそれを語る資格はないよ。メディアが伝えるような問題をバルサが抱えているかどうかは気にならないし、僕らは僕らのプレーを続けるだけだ。今のレアルには何の不安もないし、僕らは勝ち点を積み重ねることだけ考えるようにしている。

この夏の新戦力はすぐに馴染んだ

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――今夏のアンヘル・ディ・マリアとシャビ・アロンソの放出には君も納得がいってなかったようだけど、あの放出劇についてどう思う?

C・ロナウド 2人とも昨シーズンの“デシマ”(10度目の欧州制覇)に貢献した偉大な選手だ。その偉大な選手を2人も同時に失うことになれば、納得できる人なんていないよ。僕は彼らと一緒にずっとここでプレーしたかった。ただ、2人にはそれぞれマドリードを出る個人的な理由があった。彼らの希望、そしてクラブの決断に口を挟むつもりはないよ。まあ、あれほどのプレーヤーだから、2人とも新天地で活躍するだろう。彼らの幸運を祈っている。

――2人が抜けた穴はもう埋まったと言える?

C・ロナウド チームはこの夏、トニ・クロースとハメス・ロドリゲスを獲得した。その成果はチームの成績を見れば明らかさ。僕らはリーガの首位を走っている。更に、内容的にもかなり良いサッカーをしていると思うけど。

――補強は成功だったと?

C・ロナウド まずクロースはワールドカップ(W杯)を制したドイツ代表の一員だ。彼の加入でレアルの中盤に秩序とクオリティーがもたらされた。チームの“完璧な頭脳”だよ。ハメスのクオリティーの高さも疑いの余地はない。特に左足のキックは類まれなものだよ。チチャリート(ハビエル・エルナンデスの愛称)の加入も大きかった。早速ゴールを挙げているし、彼はレアルでのプレーをエンジョイしているようだ。とにかく、この夏に加入した新戦力のすごいところは、全員がレアルのサッカーにすぐに馴染んだという点だね。

――新戦力についてもう少し詳しく聞きたい。ハメスのプレーの印象は?

C・ロナウド 高度なテクニックを持った選手。プラス、練習でも試合でも常に全力を尽くすプロ意識を持った選手という印象だ。さっきも言ったとおり、彼の左足キックの正確さは驚異的だ。狙ったところに数センチも違わずにボールをフィードできる。もちろん、ラストパスの精度もシュート力もある。これ以上、何を望むというんだい?

――ではクロースは?

C・ロナウド クロースの獲得はレアルにとって非常に重要なものだったと思う。バイエルンが彼を手放したことが信じられないよ。彼は驚くべき能力を持った選手だ。それに、ここに来て更にうまくなっている。レアルのサッカーにも完璧に順応した。ほとんどボールを奪われることはないし、彼の存在で周囲の選手がどれだけ助かっていることか。W杯優勝の原動力になったのも決してまぐれじゃないよ。

――続いてチチャリートは?

C・ロナウド この夏、クラブはアルバロ・モラタをユヴェントスに譲渡した。僕らは新たなセンターフォワード、カリム(ベンゼマ)のバックアッパーを務められるような9番を求めていたんだ。チチャリートはひたむきな姿勢でチームの一員になろうと努力している。ここでチャンスを手にしようと必死に練習しているよ。彼はピッチに上がるたびにゴールを決めている。今ではチーム全員が彼の姿勢とプレーに一目置いているよ。チチャリートの獲得は大成功だったと思う。

アンチェロッティと一時代を築ける

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――ベンゼマとは“阿吽の呼吸”だね。好連係の秘訣は?

C・ロナウド ベンゼマは今や世界最高のセンターフォワードの一人だ。エリア外でも効果的に動くことができるし、サイドに開いてチームメートが中央に入り込むためのスペースを作ることもできる。ラストパスも出せるし、もちろんゴールを決めることだってできる。常にそばでプレーしていてほしい選手だよ。最高のパートナーだ。

――クラブを10度目の欧州制覇に導いたカルロ・アンチェロッティ監督についても聞きたい。彼はどんな人物?

C・ロナウド 今まで出会った中で最高の監督だと思っている。彼は僕が自由に動くことを認めてくれている。まあ、自由にプレーするということは、同時に責任も求められるわけだけどね。いずれにせよ、そういうタイプの監督と出会ったのは初めてだった。彼は選手としても一流だったから、選手のことをよく理解してくれるんだ。多くの選手が「自分がチームにとって大切な存在だ」と感じられるように接してくれる。問題が生じた時は、選手との会話を通じて解決策を見いだす。チーム内の調和を求める監督だよ。

――それは就任当初から?

C・ロナウド 監督に就任してすぐに、このチームのロッカールームを理解するのは単純じゃないと分かっていたようだ。選手個々の考えをいかにチームの利益へと結びつけるか、その難しさを理解したのさ。そして選手の個性を生かしたチーム作りを始めた。それが成功の理由と言えるんじゃないかな。彼が監督に就任してすぐに、中盤の軸だった(メスト)エジルがいなくなった。でも、彼はすぐにエジルの放出に対応してみせた。ディ・マリアとX・アロンソがいなくなった時も同じさ。チームが最も機能する方法をすぐに見つけ出す。変化に対応する柔軟性を持った監督だと言えるだろうね。

――アンチェロッティとジョゼ・モウリーニョの違いは?

C・ロナウド 2人は監督としても人間としても全く違ったタイプだね。唯一の共通点は勝者のメンタリティーを持っているという点かな。モウリーニョとは良い思い出を作ることができた。キャリア最多ゴールを記録できたし、チームもリーガを制した。ただ、クラブの最大目標だった10回目のCL制覇を手にすることはできなかった。それは、チームにとっても彼にとっても残念なことだった。モウリーニョにとってレアルでの最後のシーズンはあまり良いものではなくなってしまった。リーガとカップ戦で無冠に終わったのだからね。アンチェロッティはモウリーニョとは全く違った姿勢でチームに接した。問題が生じた時、彼はまず問題の鎮静化を図るんだ。そして解決策を見いだす。そんな姿勢がチームに大きな成功をもたらしたと思う。僕らはアンチェロッティの下でデシマを達成した。彼はすべてのマドリディスタが望んでいたタイトルをチームにもたらしたんだ。僕らはアンチェロッティの下で、一時代を築けると信じている。

――レアルに入って、君自身はどのように変わったと思う?

C・ロナウド 選手として成長できていると思う。このチームにいると、選手は成長するものなんだ。今の僕は以前と比べて、フィジカル面でもメンタル面でもより試合で戦うための準備ができている。リーガで勝利を収めるのは簡単じゃない。バルサだけじゃなく、この1、2年はアトレティコも強くなったからね。強敵に勝つためには、各選手が常に成長しなくてはならない。今の僕は以前と比べて、ゴールマウスがよく見えるようになった。それはチームのおかげでもある。90分間で20回以上もチャンスを作ってくれるのさ。僕のゴール数が増えたのもそのおかげなんだ。

――君は既に完璧なプレーヤーだけど、まだ「ここを伸ばしたい」という部分はある?

C・ロナウド 「自分が完璧だ」なんて思うようになったら、僕は現役を引退するだろうね。伸ばしたいところは常にある。少なくとも、僕は常に「もっとうまくなりたい」と思っているよ。さっきも言ったように、このチームで素晴らしい選手たちと一緒にプレーしている限り、更に向上できると信じている。仮に1シーズンで60ゴールを記録したとしても、僕は決してそれに満足しない。翌シーズンはそれ以上のゴールを決めるよう努力するつもりだ。よりうまくなるために、トレーニングを重ねるよ。

――チームとしても個人としてもすべてを手に入れてきたはずだけど、そのモチベーションはどこから沸いてくるの?

C・ロナウド 「もっとうまくなりたい」という気持ち、そしてこのチームメートと一緒にタイトルを分かち合いたいという気持ちがあるからさ。もちろん、ライバル意識もモチベーションの一つだ。今は特にメッシを意識して、メッシに負けないようにと努力を続けている。これから先、また新たなライバルが出てくるだろうし、そのライバルに負けないためにも、毎日のトレーニングで成長することが大事になる。今の僕が、成長する上で最高の環境にいるということも強調しておきたい。先日、3度目となるゴールデンシューの授賞式に出席してきたけど、「ゴールデンシューを3度獲得したからこれで十分」と言ったら嘘になる。僕は4回、5回と賞を取っていきたいんだ。

バロンドール? 取れたら最高だね

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――古巣のマンチェスター・Uが苦戦しているね。現在のチーム状況をどう見ている?

C・ロナウド ユナイテッドは選手もクラブもずいぶんと変わってしまった。とにかく、ユナイテッドが以前のようにすべてのタイトル争いに絡んでくるチームに戻ることを願っているよ。僕が5年前にクラブを去った後、すべてが変わったようだ。そして彼らは今、チームの再建を(ルイ)ファン・ハールに託している。新監督とともにチームに幸運がもたらされることを願う。ユナイテッドはいつまでも“僕のチーム”だからね。スポルティングと同じように“心のチーム”なんだ。「マンチェスター・ユナイテッド」と「クリスティアーノ・ロナウド」は切っても切り離せないものだからね。

――今シーズンのCLを展望してほしい。本命はどこ?

C・ロナウド 本命は僕らでしょ? 何と言っても前年度の覇者だからね。ライバルはどこかって? 昨シーズンはアトレティコの躍進もあって優勝争いは混沌としたけど、今シーズンは〝いつもの?顔触れがタイトルを争うことになるんじゃないかな。バイエルン、チェルシー、バルサなどがライバルだ。ただ、繰り返すけど本命は僕らだよ。今のレアルはヨーロッパチャンピオンの名に恥じないサッカーをしていると思うし、昨シーズン以上に良い状態にあることは確かだからね。

――今年度のバロンドールを受賞するのは誰だと思う?

C・ロナウド もうしばらくすると最終ノミネートの3名が発表されるよね。まずはその3人に入りたいと思っている。現時点の23名のリストの中にはチームメートのクロースとハメス、セルヒオ・ラモスも含まれている。できれば最終リストの3名をレアル勢で独占したいけど、それはさすがに難しいだろうね。今年もメッシには相当な票が集まるはずだし、W杯制覇に貢献したドイツの選手たちも高い評価を受けるはずだ。となると、トーマス・ミュラーやマヌエル・ノイアー、クロースなどが有力だ。2年連続でバロンドールを取れたら最高だけど、相当難しい展開になると思う(編集部注:12月1日に最終ノミネートの3名が発表され、ロナウド、メッシ、ノイアーに絞られた)。

――レアル・マドリードでいつまでプレーするつもり?

C・ロナウド  契約更新に関しては(フロレンティーノ)ペレス会長と話さなくてはならない。ただ、僕がここでの生活、ここでのプレーに満足しているのは確かだよ。僕の契約はあと4年、少なくともあと4年はここでプレーしたいと思っている。あとは4年後の状況次第かな。もし会長がもっといてほしいと言うのなら、もう2、3年プレーしたいとは思っているよ。

――今のレアルは史上最強のチームだと言える?

C・ロナウド それは現時点では何とも言えない。時が経てばおのずと判断が下されるはずだよ。今言えることは一つ、今のレアルは本当にいいチームだということさ。素晴らしい選手がそろっているし、ヨーロッパを支配するチームが誕生したと思っている。今シーズン、もしCL連覇を成し遂げることができたなら、その時は「史上最強のチームかどうか」の議論がなされてもいいと思うけど。

――最後の質問だ。ポルトガル代表での目標は?

C・ロナウド 何らかのタイトルを手にすることができればいいね。当面の目標は、ユーロ2016の出場権を勝ち取ることだ。予選の初戦でアルバニアに負けたことに不安を抱いている人もいるだろうけど、僕は出場権を勝ち取れると確信している。目標はあくまでも、2年後の本大会でチームを上位に導くことだよ。

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