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ペップはなぜバルセロナを去ったのか。メッシやモウリーニョとの真実は読み応え満点

2014.08.11

知られざるペップ・グアルディオラ サッカーを進化させた若き名将の肖像
著者:グイレム・バラゲ
監訳:田邊雅之
出版社:朝日新聞出版
定価:本体1,800円+税

「バルサ退団はメッシが要因の一つだった」という衝撃的な惹句をまとう本書は、500ページを超すボリュームながら、サッカーファンの知りたい真実が順番に出てくる構成で、最初のページから一気に引き込まれる。「ペップはなぜバルサを去らねばならなかったのか」という問いに始まり、2008年からチームを率いた栄光の4年間、そして電撃的なバイエルン移籍までの軌跡が、多数の証言と丁寧に事実関係を拾い上げていく手法で語られていく。数あるグアルディオラ本の中でも内容凝縮という意味ではまさに圧巻の一冊と言える。

 とりわけアレックス・ファーガソンとジョゼ・モウリーニョ両監督との激闘を論じた章は本書の読みどころの一つであろう。敵将ファーガソン率いるマンチェスター・ユナイテッドと2度のチャンピオンズリーグ決勝を交える中で、ペップ戦術の進化の過程が鮮明に浮かび上がってくる。その頂点となる2011年ウェンブリーでの決勝レビューは両者の戦術の駆け引きも相まって読み応え満点。また宿敵モウリーニョとの度重なる激闘も、ペップ・バルサ=善、モウリーニョ・レアル=悪といった単純な構図を超えた高度な心理戦の模様が克明に記録されている。数ある名勝負を通じて、改めて監督としての彼の比類なき手腕を知ることができる。

 そして本書のクライマックスと言えるのが、メッシとの本当の関係に迫った記述だろう。著者はこう記す。

怪物は怪物であるがゆえにこそ、やがては誰も制御できなくなっていく。その意味でメッシありきのチーム作りは、カミソリの刃の上で綱渡りを続ける行為に等しかった。

 ペップは誰よりもチームのバランスを重視し、選手に全力でプレーすることを求めた。そうした彼の哲学とは裏腹に、チームはメッシ依存症の度合いを強めていく。4年間であらゆるタイトルを独占し、負けず嫌いのファーガソンをして「現代で最も完成されたチーム」と言わしめたクラブはどこへ向かうのか? ペップは自身とクラブの行く末を案じた。そして決断した。

 本書『知られざるペップ・グアルディオラ』は、栄光と葛藤に満ちたチームの真実の日々が忠実に描き出されている。サッカーを美しく進化させた若き名将の肖像は、見る者にどのような印象を与えるだろうか? その答えは、ペップが4年間に費やした彼の顔の変化を見れば想像できるはずだ。バルセロナの進化と苦悩のすべてが、そこに深く刻まれている。

三竹大吉(みたけ・だいきち)
(株)紀伊國屋書店 本社ホールセール部勤務
ジョホールバルの歓喜、フランス・ワールドカップ、シドニー・オリンピック、ドイツ・ワールドカップをそれぞれ現地で観戦。その後は、欧州クラブ・チームを中心に週末録画した試合の中から名勝負に出会えるのを楽しみにしている中年サッカーファン。週1回フットサルで汗を流すのが目標。書籍をお探しの際は、紀伊國屋書店ウエブストアより全国店舗の在庫がご覧いただけます。詳しくは、http://www.kinokuniya.co.jp/よりご確認ください。

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