2014.07.13

決勝戦のアルゼンチンの最終兵器は神の手?

Argentina Training & Press Conference - 2014 FIFA World Cup
サポーターが扮するローマ教皇【写真=Getty Images】

 今大会ほど、多くのローマ教皇を見た大会はない。あっちにも、こっちにも、そのまた向こうにも。2013年のワールドユースの時の比ではない。どうやらマスク工場が、今ワールドカップにあわせて大量生産したらしい。お面タイプからフルフェイスまで様々だ。けっこうよくできていて、背後から複数で近づいて来られるとギョっとする。客席にも多数いるので、注目してみてほしい。

 どの教皇もみな水色と白の法衣をまとっている。一応にフレンドリーで、どこの国のサポーターとも写真を撮っている。人類みな兄弟だ。しかし、来るべく決勝はそうはいかない。パパ様たちは力を結集して「アルゼンチン代表」のみを応援する。そりゃ当然だ。現ローマ教皇フランシスコさまは、アルゼンチン人なのだから!
 

Netherlands v Argentina: Semi Final - 2014 FIFA World Cup Brazil
スタンドの至る所に教皇【写真=Getty Images】

■法王さまと神の手 

 バチカンのローマ教皇は、アルゼンチン人の大司教だ。コンクラーベを経て決定した時は、パパさまの祖国は大騒ぎだったようだ。就任式には各地でパブリックビューイングが行われたらしい。教皇名に選んだのは「フランシスコ」。アッシジのフランチェスコにあやかったものだという。「どうせならロレンソ1世とかのほうが、よかったんじゃないの?」なんていう意見がある。それは、パパさまが「CAサン・ロレンソ」のインチャ(ファン)だからだ。

Argentina v Switzerland: Round of 16 - 2014 FIFA World Cup Brazil
神様3トップ【写真=Getty Images】

 教皇決定直後の試合で、CAサン・ロレンソはなんとユニフォームの胸の真ん中に、パパさまの写真入りワッペンを付けてしまった。それを着て試合をしたわけだが、チームは退場者を出して10人になりながらも、アウェイで1-0の勝利を手にした。これにより、降格圏内から脱出したのだから、まさに法力である。「代表ユニにもワッペン付けたら、W杯優勝も夢じゃない」なんて、おめでたい話も出たらしいが、本大会では今のところそのようなユニフォームは登場していない。

■サッカーバチカン代表

 バチカンの中にも、サッカーファンの宗教関係者はたくさんいる。バチカン市国には、「バチカン代表チーム」がある。残念なことに、FIFAには加盟していないので、ワールドカップには出場できない。そのかわり、不定期にモナコやサンマリノ、ローマ市の警察官チームや、郵便局チームなどと試合をしている。

 ユニフォームは、バチカンのコーポレートカラーである黄色と白。胸にはちゃんと、交差した金と銀の鍵のエンブレムも付いている。戦績はあまりよくないらしい。それで、ブラジル人司教をもっとバチカンに招こうという話まで出たとか。今後はアルゼンチン人司教やドイツ人司教をスカウトするのではなかろうか。ちなみに、代表監督はジョバンニ・トラパットーニ氏である。

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アイルランド・カトリック新聞のイラスト

■新旧ローマ教皇対決

 現教皇のひとつ前の教皇は、ドイツ人のベネディクト16世だった。お体の具合が悪く、教皇職を辞された。本人たちがどう思っているかは知らないが、世間的には「新旧ローマ教皇対決」と銘打たれた決勝戦になった。バチカン広報からは、「現教皇はともかくとして、前教皇はそんなにサッカーがお好きなわけではないので、戸惑われているのでは……」とのコメントが出ている。でも、さすが世界のバチカン、心の広いバチカンだけあって、あまりぎすぎすした反応はしていない。それどころか、バチカン内にあるバチカン・ラジオ局のSNSは、各国のカトリック新聞に掲載された、お二人を面白おかしく描いたイラストや記事を積極的に紹介している。

 どうやら決勝のレフェリーはイタリアのセットらしい。知っての通り、バチカン市国はイタリアの中にある。敬虔なイタリア人のこと、客席のローマ教皇を見たら、思わずカードの一枚や二枚ひっこめてしまうかもしれない。下馬評ではドイツ有利とされているが、今こそ法力が発揮されるかもしれない。されないかもしれないが(笑)。決戦の時は近い。

文=いとうやまね