2014.05.19

<インタビュー>ヴィエリ「本田も長友も素晴らしい選手だ。ようこそイタリアへ! という感じかな」

そのパワフルかつダイナミックなプレースタイルで「重戦車」の異名を取ったクリスティアン・ヴィエリは、イタリアが誇る世界屈指のストライカーとしてゴールを量産した。

インテルやミラン、アトレティコ・マドリーなど実に14ものクラブを渡り歩いた彼は、2008-09シーズン限りで現役を引退。現在はアメリカのマイアミに活動の拠点を置き、サッカー界の第一線から少し離れたところで、さまざまな活動を展開している。白髪を生やした本人は「年を取ったし、太ったよ」と笑うが、185センチの長身とゴツゴツとした骨格、そして醸し出す独特のオーラに変わりはない。

そんな彼のセカンドキャリアの中心にあるのは、ファッションブランドのオーナーとしての活動だ。インテルに在籍していた2004年、彼は少年時代からの親友である元イタリア代表DFパオロ・マルディーニをパートナーとして、『SWEET YEARS』(スウィート・イヤーズ)というファッションブランドを立ち上げた。ハートをあしらったロゴマークは世界中のマーケットに広がり、今や日本でも一定の認知度を得るブランドへと成長を遂げている。

5月11日、東京・原宿にあるイベントスペース「UCESS THE LOUNGE」にヴィエリはいた。来日したのは、「グロリエアッズーレ」(イタリア代表OB)の一員としてピッチに立った昨年6月以来、1年ぶりのこと。230人のファンを集めて行われたトークイベントの直前、10周年を迎えた『SWEET YEARS』における新ライン『SY32』をPRするため世界中を飛び回っている彼に、『SWEET YEARS』や新ライン『SY32』の発足にまつわるエピソード、現役時代の思い、日本人のファッション性や日本人選手の活躍、さらに自身がイメージする未来像に至るまで、幅広く話を聞いた。

インタビュー=細江克弥 写真=岡本 寿、Tomonori OZAWA、Getty Images

ゴールを決めたらユニフォームを脱ぐ。それが最高の宣伝方法だった

――まずは、あなたとパオロ・マルディーニが中心となって展開しているファッションブランド『SEET YEARS』(スウィート・イヤーズ)発足の経緯について教えてください。

ヴィエリ ちょうど10年前、俺とパオロ、それから何人かの友人と一緒に「今までになかったものを作ろう」ということで『SWEET YEARS』が始まったんだ。最初は遊び半分でTシャツを作ってみたんだけど、それをきっかけにみんなのアイデアがどんどん膨らんでいった。そのアイデアを形にしていったら、たくさんのアイテムが生まれたんだ。

――その時に掲げたのが、「愛と自由に満ち溢れた1950年代(=SWEET YEARS)に立ち返る」というコンセプトですよね。

ヴィエリ そう。ただ、俺たちは“売り方”を知らなかった。作ったものを売るためには、まず、知ってもらわなければならない。そこで思いついたのが、俺がユニフォームの下に『SWEET YEARS』のTシャツを着て、ゴールを決めたらユニフォームを脱いでTシャツを見せるというPR方法だった。

――当時だからこそ可能だったPR方法ですね。

ヴィエリ 今じゃルールが変わって、ユニフォームを脱いだらイエローカードを出されてしまうからね(笑)。当時はまだ、そういうルールがなかった。だから、宣伝費用を一切かけることなく、俺たちは『SWEET YEARS』を全世界にPRすることができた。当然だけど、その効果はものすごく大きかったよ。

――そもそも、ヴィエリさんは現役時代からビジネスに興味があったんですか?

ヴィエリ いや、正直、俺たちのアイデアをビジネスにしようなんて考えたこともなかった。「みんなで楽しいことをしようぜ!」という思いで動き始めて、もし、少しでもビジネスになるなら、Tシャツを売って手に入れたお金でバカンスに出かけられれば、それで十分だったんだ。とにかく、俺たちは、今までにないものを作って、今までにないことをやりたかっただけ。それが、10年もの月日が流れた今でもこうして世界中を飛び回りながらブランドをPRしているんだから、自分でも驚いているよ。

――マルディーニさんも同じような考え方だったんですか?

ヴィエリ もちろん。パオロもそうだし、集まった友だちみんなが「サッカーとは違うことでも楽しもうぜ」という“ノリ”だった。

――今から10年前と言えば、ヴィエリさんがインテル、マルディーニさんがミランに在籍していた頃ですよね。ミラノを本拠地とするライバルチームに所属する2人がビジネスパートナーとなることで、トラブルにはなりませんでしたか?

ヴィエリ ハッハ(笑)。もちろん、何も問題ないよ。パオロは今となっては20年以上の付き合いになる親友だし、俺自身、ユース時代にはパオロの親父であるチェーザレにサッカーを教わっていたんだ。『SWEET YEARS』を立ち上げた時、確かに僕たちはインテルとミランというライバルチームでプレーしていた。でも、ピッチを離れれば大の親友さ。何も問題はなかったね。

日本人のファッションセンスはイタリア人よりもイケていると思うね

ヴィエリ

――ブランドの10周年の節目である今年、『SY32』というスポーツラインを立ち上げました。その経緯についても教えてください。

ヴィエリ 俺たちの仲間はみんな、スポーツが好きなんだ。だから、集まれば必ず体を動かしている。そういうバックグラウンドがあって、ブランドの10周年という節目の年にスポーツラインを立ち上げようという話になった。スポーティーさとファッション性を融合させることで、いつでも気楽に楽しめるオシャレを実現したかったんだ。

――ブランド名の由来については?

ヴィエリ 『SWEET YEARS』というブランド名と、現役時代の俺の背番号である「32」を組み合わせたものなんだけど、それを『SY32』としてみたら、スポティーなイメージとシックな雰囲気がうまくハマった。だから迷うことなく、あっさり決まったよ。数字を入れることで、コンセプトであるスポーティーなイメージを印象づけることもできた。

――『SWEET YEARS』は日本でも認知度を高めています。ところで、日本人のファッション性についてはどのように見ていますか?

ヴィエリ すごく特徴的だと思うね。いい意味で。

――日本サッカー界を代表するファッショニスタと言えば、中田英寿さんが有名です。

ヴィエリ ああ、確かにナカタはファッションに強いこだわりを持っていたと思う。ただ、それは日本人全体に言えることじゃないかな。ひょっとしたら、イタリア人よりも日本人のほうがイケてるんじゃないかと思う。そう言えば、さっき、ものすごく個性的な赤いシューズを履いている人がいたんだ。イタリアではなかなか見られない靴だったし、そういうところにも日本人のファッション性を感じるよ。

――日本のファッション市場についてはいかがでしょう? 海外のブランドにとっては非常に難しいマーケットであるということをよく耳にします。

ヴィエリ もちろん、ブランドにとってはものすごく重要なマーケットの一つだね。だからこそ難しいとも言える。日本人は優れたファッション性を持っているから、マーケットの動きも早い。俺自身、日本のマーケットにはものすごく注目しているよ。

――日本と言えば、ヴィエリさんの古巣でもあるミランとインテルには、本田圭佑と長友佑都という2人の日本人選手が所属しています。

ヴィエリ 日本のサッカーにとっては素晴らしいことだろうね。最近、ヨーロッパでプレーする日本人選手が増えているだろ? それは、サッカー界にとって本当にポジティブなことだと思う。有名なクラブで、有名なスタジアムでプレーしている日本人選手がいるということが、日本サッカーの成長を早めてくれるんじゃないかな。ホンダもナガトモも素晴らしいい選手だ。ようこそイタリアへ! という感じかな。

――彼らの活躍が、ミランとインテルがかつての輝きを取り戻すきっかけになればいいのですが。

ヴィエリ それもそうだけど、イタリアは今、不況の真っただ中にあるだろ? だから、2人の活躍を観るためにたくさんの日本人ファンに足を運んでもらって、それからついでに、ショッピングをしてお金を落としてもらいたい。イタリアにとっても、日本にとってもハッピーなことじゃないかな(笑)。

近いうちに指導者ライセンスを取得して本格的に監督業をスタートさせる

――2009年に現役を引退して以来、ヴィエリさんは生活の拠点をアメリカのマイアミに移されたとお聞きしました。現在はサッカーとどのように関わっているんですか?

ヴィエリ 普段から体を動かしているし、もちろんボールも蹴っているよ。サッカー界では、チャリティーを目的とするイベントが世界中で行われている。そういうところに呼ばれれば、俺はすぐにでも駆けつけるよ。2011年には“ミラン・レジェンド”の一員として日本にも来たこともあるし、今年の6月2日には、トリノのユヴェントス・スタジアムで行われる「ユヴェントス・レジェンド対レアル・マドリー・レジェンド」の試合にも出場する。今はマイアミに拠点を置いているんだけど、そこで指導者のライセンスを取得して、近い将来には監督業を本格的にスタートさせたいと思っている。

――昨年は、イタリア代表OBの一員として「Jリーグレジェンドプレーヤーズ」と対戦しました。その試合では、2つのゴールを決めましたね。元日本代表の選手たちは、「ヴィエリがスゴかった」と口をそろえていました。

ヴィエリ ああ、俺が2つのゴールを決めた試合だろ? あの時はかなりコンディションが良くてね。もしかしたら、まだ現役としてプレーできるんじゃないかと自分でも思ったくらいだった。監督としてでも、選手としてでも、日本に俺を呼んでくれるチームがあったら大歓迎。そういうチームがあったら教えてくれ(笑)。

――分かりました(笑)。じゃあ、今でもサッカーとは深く関わっているんですね。

ヴィエリ 現役は退いたけど、サッカーに対する愛情は変わらないよ。

俺は1試合1点、必ずゴールを決めてきたそれだけで、バロテッリとは違う

ヴィエリ

――サッカー界は今、時代の変わり目を迎えている気がします。ヴィエリさんの古巣であるアトレティコ・マドリーの快進撃も、それを象徴する出来事だと思うのですが。

ヴィエリ アトレティコがチャンピオンズリーグのファイナルに進出するなんて、誰も予想していなかっただろうね。ただ、今のアトレティコには力のある選手がたくさんいるし、何よりチームが一丸となって戦えることが強みだ。レアルは苦しむと思う。今回のチャンピオンズリーグで彼らが対戦してきたのは“格下”ばかりだったからね。今シーズンのアトレティコはそういうチームじゃない。今のアトレティコなら、90分間、レアルを苦しめ続けられると思う。

――ヴィエリさんの予想は……やはりアトレティコの勝利ですか?

ヴィエリ もちろん。自分が現役時代に在籍したクラブを応援するのは当然のこと。まして相手がレアルだからね。

――ところで、現役時代と言えば大の“マスコミ嫌い”だったとお聞きしました。

ヴィエリ まあ、間違いじゃないね。マスコミと言っても、中にはサッカーのことを全く知らないヤツもいる。そういうヤツらがサッカーのことを偉そうに語るのが好きじゃなかったんだ。全く分かっていないヤツらに好き勝手に言われれば、誰だっていい気はしない。

――引退後、そういう考え方に変化はありましたか?

ヴィエリ いや、全くない。今も変わらないよ(笑)。

――では、最後の質問です。間もなくワールドカップ・ブラジル大会が幕を開けますが、イタリアはどこまで勝ち上がれるでしょう?

ヴィエリ 正直に言えば、グループリーグを突破するのも難しいかもしれない。イタリアより強いチームが、少なくとも4チームか5チームはあるからね。ただ、イタリアにはその差を覆すほどの強い守備がある。だから、決して優勝を狙えないわけじゃないとも思うよ。

――現在のエースであるマリオ・バロテッリの存在感は、現役時代のヴィエリさんのそれと少し似ている気がします。

ヴィエリ いや、それは違う。イタリア代表のユニフォームを着ていた頃の俺は、少なくとも1試合に1点は必ずゴールを決めてきた。それだけで、バロテッリとは全く違うだろ?(笑) 誰とは言わないけど、今のイタリアには彼よりもいい選手がいると思う。まあ、W杯でどういうパフォーマンスを見せてくれるのか、俺も楽しみにしているよ。

SWEET YEARS

SWEET YEARS(スウィートイヤーズ)は 世界的なサッカー選手でありイタリアの国民的英雄でもある、クリスチャン・ヴィエリとパオロ・マルディーニの2人のアイデアによって誕生したイタリアンカジュアルブランド。
ヴィエリ
写真●岡本 寿 品番(T08):ロゴボーダーTシャツ¥6,500(外税)

SY32 by SWEET YEARS

ヴィエリとマルディーニはスポーツシーンと密接した生活の中で、アクティブウェアのディティールに注目。ブランド10周年と更なる発展の為、新ラインを株式会社ロンヨンジャパンと共同で手掛ける。新ライン「SY32 by SWEET YEARS」(エスワイサーティトゥバイスィートイヤーズ)は、本格的なスポーツアイテムではなく、日常生活を快適に過ごす為に着心地、機能性、ファッション性を追求して作られた新しい型のスポーツカ ジュアルブランド。「SY32」というブランド名は、「SWEET YEARS」の頭文字と、現役時代のヴィエリの背番号32を組み合わせて作られ、 14SSからスタート。

「SY32 by SWEET YEARS」公式サイト