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欧州最高のチーム・バイエルン、東北の子ども達へ夢を届ける

2014.03.31
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 東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島の3県に在住(もしくは、震災当時に住んでいたが現在は他県に在住)する、14~16歳の男子を対象にした「FCバイエルン・ミュンヘン・ユースカップ」の日本代表選考会が、参加者128名、ボランティア68名のもと宮城県七ヶ浜で行われた。

 同カップは欧州サッカーの名門、バイエルンが主催の男子による7人制サッカーの国際大会。昨年は日本を含む7カ国から選手が招待され、バイエルンの本拠地“アリアンツ・アレナ”に東北の子ども達10人が立った。

 選考会は、バイエルンのスポンサーである太陽光発電メーカー「インリー・グリーン・エナジー・ホールディング」(中国)が主催。バイエルンOBの元西ドイツ代表MFパウル・ブライトナー氏らが最終的に10人を選ぶセレクションである。雨というあいにくの天候であったが、選手やスタッフ、ボランティアは皆、手を緩めることなくそれぞれが目的を持って一生懸命だった。特にブライトナー氏は一日中冷たい雨の下、熱い視線をピッチに送り続けていた。

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カガワも私も外国で成功した。最高のプレーをすれば通用する

―――日本人が海外でプレーする時は言葉の壁があるが、サッカー好きの子ども達が国際人としても一流になるためには何が必要か?

 言葉がしゃべれるかどうかということは、海外でのプレーを絶対的に左右するものではありません。確かにサッカー自体が言語と言われるように、言葉ではなくとも意志疎通は図れます。確かに外国語が話せれば有利にはなります。しかし、カガワ(真司)はドイツでドイツ語なしでも素晴らしいプレーをしていたし、私自身もレアル・マドリードでスペイン語を話せずとも成功することが出来ました。いつでも、どこでも同じように自分なりに最高のプレーをすればそれは通用するんです。(元ドイツ代表MFブライトナー氏)

世界との違いは“1試合にかける思い”と“個性の強さ”

―――世界でプレーした中で感じた日本と世界の違いは?

 フィジカルとパワーの差は大きいですが、それより感じたのが1試合にかける思いの大きな差です。去年の大会でロシアが1試合負けただけでこの世の終わりかと思うくらい悔しがっていました。足元の技術は日本人が勝る面が大きいのですが、精神面での差は埋めなければいけないと感じました。もう一つは個性の強さです。日本代表チームに比べ、他国代表チームは個性的な選手が数多くいると感じたので、個性を伸ばす練習をジュニア、ユース世代から行うべきだと思います。(去年ユースカップに出場した阿部貴憲くん)

復興支援の下、子ども達に夢を達成するチャンスを与えたい

―――この大会を開催した趣旨は?

 私と主催者のジュリアンが知り合いで、復興支援としてサッカーを通して子ども達にチャンスを与えたいという思いを共有していたので始めました。本来であれば全国で開催するものであるけれど、そうすると被災の影響で東北の子ども達が得られるチャンスが少なくなってしまいます。そうではなくて、あくまで復興支援というコンセプトの下にサッカーを愛する子ども達に、ドイツへ行くという夢を達成するチャンスを与えたいと思っています。目途として10年を計画しており、あと8年は頑張ろうと思っているので、今対象年齢ではない子ども達にもどんどん夢を叶えてもらいたいと思っています。
(運営事務局NPO High-Five代表 畑中みゆきさん)

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 寒空の下ではあったが、この取材を通じて感じられたものは暖かなものばかりであった。畑中さんは被災地への想い、考えを形に変え、阿部さんは次の子ども達がより大きな希望を手にすべく自分の経験を分け与えようとし、ブライトナー氏を初めとするバイエルンが子ども達の夢を実現させる。

 これからこの試みが単なる支援に留まらず、日本サッカーの発展を促して全国を引っ張っていく。そんな風に続いていくことを期待して、今年のチームが少しでも成長を見せてくれること、そしてどのようにこの試みが続いていくのかを是非、注視して頂きたい。ブライトナー氏が『来年また』と言ってくれるのだから尚更の事だ。

文・取材/猪野秀人
写真/鈴木崇大

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