ATTENTION
2014.02.11

カルチョの国が突きつけた“新10番”本田圭佑の課題

[ワールドサッカーキング1403号掲載]
デビュー戦は悪くなかった。2戦目にして初ゴールも決めた。しかし、10番に対するミラニスタの要求は尽きない。プレー内容だけではなく「目に見える結果」を――。カルチョに挑む本田圭佑に最初の課題が突きつけられた。

本田圭佑

文=小川光生 写真=ゲッティ イメージズ

地元メディアは《センプリチタ》を称賛

「心の中のリトル・ホンダが『ミランに行け!』と言った」、「サムライ・スピリット? サムライにはまだ一度も会ったことがないんで(分からない)」、「自分を信じられない男に10番は背負えない」……。

 1月9日の入団記者会見の席で数々の名言(迷言?)を残し、本田圭佑がミランの背番号10に袖を通した。その表情には、少し遠回りしながらも子供の頃からの夢を達成した“選ばれし者”の誇りと自信が溢れていた。

 2013年の暮れ、本田のミラン加入がほぼ確実となった後、私はミラニスタたちに本田の印象を訪ねて回った。残念ながら、彼のプレーをテレビやYouTubeで見たことがあるというファンは少数派。イタリアのファンにとっての本田は、本田にとってのサムライのように、まだ見たことがない「未知の存在」だったのかもしれない。

 イタリアに到着してから約1週間後の1月12日、本田はサッスオーロとのアウェーゲームで途中出場を果たし、イタリアでの公式戦デビューを飾った。ロビーニョとの交代で65分にピッチに立つと4-3-2-1の「2」の位置でカカーと並んでプレー。初陣は決して悪いものではなかった。シンプルなボールタッチで「チームに酸素を与える存在」となり、積極的にクロスを上げ、右ポストを叩く強烈なシュートも放った。サッカーに「たら・れば」は禁物だが、もしあのシュートが入っていたら、本田の未来はまた違ったものになっていたかもしれない。

 チームはこの試合で格下のプロヴィンチャーレに3-4の逆転負け。マッシミリアーノ・アッレグリが更迭され、コッパイタリアのスペーツィア戦はマウロ・タッソッティが監督代行を務めた。スペーツィア戦での本田はロビーニョとともに4-3-2-1の「2」に入り、1トップのジャンパオロ・パッツィーニの背後でプレー。47分にはGKが弾いたこぼれ球を冷静に押し込み、イタリアでの公式戦初ゴールを記録した。後半途中にベンチへ退いたものの、交代時には観客席から拍手が起こった。

 称賛されたのはプレーの“センプリチタ”(イタリア語でシンプルさの意味)だ。「虚飾をそぎ落としたシンプルかつ実のあるプレーで中盤を制圧した」と各メディアから高い評価を得た。ボールをキープしてタメを作り、味方の上がりを待つ日本代表での彼を見慣れている筆者にとってはやや意外なスタイル。相手がセリエB所属の格下だったとはいえ、「本田はこういうプレーもできるのか」と、適応能力の高さに感心させられたゲームだった。

待望の初アシストも決定機を生かせず

 そして、クラレンス・セードルフ新体制の初陣となった19日のヴェローナ戦、本田は4-2-3-1のトップ下で先発出場を果たす。試合は82分にカカーが倒されて得たPKをマリオ・バロテッリが決めてミランが辛勝。本田はその約20分前にヴァルテル・ビルサとの交代で既にベンチに退いていた。

 本田は序盤こそ精力的に動き回って何度かゴール前に迫る場面もあったが、その後は疲れが見え始め、後半に入ると存在感も希薄になった。『ガッゼッタ・デッロ・スポルト』紙のセバスティアーノ・ヴルナッツァ記者による採点は5・5。寸評も「自分のポジションを無為に探し続け、何本かのシュートも力がなかった」とやや手厳しかった。他の有力紙の採点は5と更に厳しいもの。序盤は悪くなかったと思うが、前半途中から質、量ともにパフォーマンスが落ちた。

 試合後には本人も「コンディションはまだ50パーセント」と認めた。ミラノ入りしてから時差ボケをおして強行日程をこなしてきた疲れが徐々に出てきた感じだった。事実、本田は翌日、翌々日のミラネッロでの練習では別メニューをこなしている。ヴェローナ戦は彼にとって、初めてイタリアメディアの洗礼を受けるゲームとなった。

 ウディネーゼとのコッパイタリア準々決勝で、本田の出場予定はなかったはずだ。しかし、相手に1-2と逆転されたことでやむを得ず途中出場。当然、見せ場は作れず、無理な体勢から放ったボレーも大きく枠を外れた。

 続く26日、敵地でのカリアリ戦。本田は4-2-3-1の右サイドMFで初の先発フル出場を果たした。チームは終盤の87分、89分と立て続けにゴールを奪って2-1の逆転勝利。パッツィーニが決めた技ありの決勝ゴールは本田のCKから生まれた。

 この日の本田はヴェローナ戦とは見違えるようだった。前線でマークを受けても倒れることなくボールをキープ。ロビーニョとのワンツーでゴール前に迫り、マッティア・デ・シーリオからの難しいクロスを頭で合わせた。後半には自らカウンターの基点となり、得意の左足シュートに持ち込んだ。ただし、その3度のチャンスを一度も決め切れなかったのは痛かった。

 イタリア人は結果を重んじる民族だ。勝利に直結するあの種のチャンスを決められないようではなかなか評価は上がってこない。最後にアシストがあったから良かったものの、もしあのままチームが負けていたら戦犯扱いされていた可能性さえある。

 電撃就任から約2週間、セードルフが目指すサッカーの大枠はおぼろげながら見えてきた。敵陣でのポゼッション率を高め、ゲームを支配し、有利な展開の中でチャンスを確実にモノにしていくというサッカーだろう。その中でボールをしっかり保持できる本田はセードルフ・サッカーのキーマンとなり得る。だが、今のミランでは何より結果が優先されることも肝に銘じなければならない。

カリアリ戦で決勝アシストも、3度のチャンスを決めきれなかった本田。結果を重んじるカルチョの国でミラニスタの心をつかむためには……。続きは12日発売のワールドサッカーキング1403月号でチェック!

サイト人気記事ランキング