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「奈良劇場総支配人」奈良クラブ岡山一成のJリーグへの道:第十一回

2014.02.07

 奈良クラブの2014シーズンが始まった。関西リーグで優勝して全国社会人大会で上位に入り、地域リーグ決勝大会を勝ち抜かないとJFLに昇格できない。昇格請負人として全力を尽くすから、みんな応援してな。

 今回は奈良クラブのキャプテン、橋垣戸光一が勤務する、スポンサーのまつおかクリニックの院長、松岡先生に話を聞いてきた。

 奈良クラブが立ち上がった当初からスポンサーになってくれている松岡先生。その経緯を紹介するな。

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 午前の診療を終え、休憩時間に時間を作ってもらった。

「病院に勤務している時に奈良クラブの試合を奥さんに誘われて行ったのがきっかけでした」

 アマチュアの試合に心を突き動かされたという。

「もっと同好会的なものかなとイメージしていました。必死にボールを追いかける姿を見て、自分も頑張らないといけないなと思わせてくれたんです」

 当時、先生は悩んでいた。このまま病院に勤務して、安定な道をいくのか、地元・奈良で開業するのかを。

「実は奈良は医療水準が全国と比べて低いんです。奈良出身の医師はみんな大阪や京都に出ていくので、医師不足になってしまって……」

 奈良はサッカー水準が全国で46位だった。そんな中、奈良出身の矢部次郎が地元のサッカー水準を上げるためにJクラブを作ろうと懸命に動いている姿を見て、自分も地元の奈良でやっていこうと決意した。

「だから、奈良クラブは自分にとって良きパートナーであり、ライバルでもあるんです。それぞれの分野で奈良のために頑張ろうと誓い合ったんですね」

 今回、松岡先生に話を伺おうと思った理由が二つある。一つは個人病院でありながら、クラブの大口スポンサーであり、テーピングや医療に関わるほとんどを先生に負担していただいている。その上、アマチュアやのに、勝った時は選手会に気持ちとして心づけしてくれている。お金持ちの道楽なんかじゃない。

「正直、このクリニックもテナントで借りているので自前ではないんです。だからスポンサードするのにも限界はあります。でも、奈良クラブや選手たちに少しでも良い環境でサッカーをしてもらいたいので、自分も頑張ろうと思えるんです。いつかサッカーコート付きの病院を開業するのが夢ですね」

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 祝日以外、毎日勤務している先生に、少しでも恩返しができるようにサッカーを頑張ろうと思った。もう一つ聞きたかったのは、橋垣戸光一が家を建てると聞いたことから。

「ガイト、ローン下りたん?」

「35年です。松岡先生が取り引き銀行に猛烈にプッシュしてくれたんです」

 家を買っちゃえと言われ続けて、いまだに買えていない俺は先生に聞いた。

「サッカー選手はローンが下りにくいんです。選手を引退した後のことを考慮されてしまって。先生はガイト(橋垣戸)が選手じゃなくなっても面倒を見るつもりなんですか?」

「面倒を見るじゃないですよ。Jリーガーになった(ガイトはガンバ大阪と愛媛FCでプレーしていた)ことがどれだけすごいことか。だから最初から幹部候補として、ずっと働いてほしいと言いました。当然、選手をやめた後に、橋垣戸がウチでやりたいと思ってもらえたらですが」

「幹部候補じゃなくてもいいんで僕も」と口にするのを必死に押さえて(笑)先生と握手をして失礼した。

 奈良クラブはこんな素晴らしいスポンサーのおかげでJリーグを目指すことができます。

まつおかクリニック
http://www.matsuoka-clinic.net/s/

岡山一成(おかやま・かずなり)
1978年4月24日生まれ。大阪府出身。
初芝橋本高卒業後、テスト生として横浜Mへ。打点の高いヘディングとガッツ溢れるプレーが評価されてプロ契約を勝ち取ると、デビュー戦から3試合連続ゴールを記録して一気に頭角を現した。大宮、横浜FM、C大阪、川崎F、福岡、柏、仙台と渡り歩く中、川崎F時代に始めた試合後の“岡山劇場”でサポーターの心をつかむ。柏時代には日立台のゴール裏でサポーターともに応援したこともある。09年に移籍した韓国・Kリーグの浦項ではACLを制し、FIFAクラブW杯で3位に入った。11年から昨シーズンまで札幌に在籍し、今夏からアマチュア選手として奈良クラブへ加入。J1通算64試合6得点、J2通算214試合20得点。

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