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バイエルン前監督に感謝するリベリー「俺の成功はハインケスのおかげ」

2013.10.04

[ワールドサッカーキング1017号掲載]

新監督の下で、彼は「とてもハッピーだ」と言う。一方で、かつての指揮官を容赦なく罵倒する。歯に衣着せぬ物言いは相も変わらず。フランク・リベリーの“宣言”を聞け。
リベリー
インタビュー・文=トーマス・ツェー Interview and text by Thomas ZEH
翻訳=阿部 浩 アレクサンダー Translation by Alexander Hiroshi ABE
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

 現代最高とうたわれる名手2人を抑えての受賞。2012-13シーズンの“最高の選手”に選ばれたのはフランク・リベリーだった。

 この受賞がフロックではないことを証明するように、受賞翌日、チェルシーとの大一番でリベリーは躍動する。1点のビハインドで迎えた後半早々に強烈なミドルシュートで同点弾をマークすると、4人目のキッカーとして登場したPK戦でも冷静にネットを揺らし、クラブ史上初となるUEFAスーパーカップ優勝に貢献。マン・オブ・ザ・マッチに選出されたリベリーは試合後、「月の上にいるような気分だ」と独特な言い回しで喜びを表現した。

 やむことのない賛辞の中、ハングリーな“皇帝”は更なる高みを目指す。

子供の頃からの夢がついにかなった

――ちょっと遅くなってしまったけど、まずはUEFA欧州最優秀選手賞の受賞、おめでとう! ブンデスリーガの選手が選ばれたのは1996年のマティアス・ザマー以来のことになるね。

リベリー ありがとう! 本当に光栄に思うよ。受賞を知らされた瞬間は特別な感情がわいてきた。子供の頃からの夢がついにかなったんだと、胸が熱くなった。もっとうまくなりたい、その一心で、これまでどんなハードトレーニングにも耐えてきた。この賞を受賞できたのは、いつも俺を支えてくれた家族と、どんなことがあってもサポートを続けてくれたクラブ、それからファンのおかげだ。

――まるで“シンデレラストーリー”のようだね。

リベリー それは、俺の過去を知っているからだろう? 俺は貧しい街で生まれ育った。親父は家族に飯を食わせるために必死に働いてくれた。朝早くに家を出て、帰ってくるのは俺たちが寝始める頃だった。道路工事はきつい肉体労働だ。子供でもそのくらいは分かっていたよ。それに、俺が育ったブローニュ・シュル・メール(フランス北部のドーバー海峡に面した港町)があるシュマン・ベール地域は、とても荒くれた土地柄でね。ガキどもはそれこそケンカの毎日さ(笑)。絶対に負けたくない、注目を浴びたい、尊敬されたい、俺はそんなことばかり考えていたよ。あの頃に学んだのさ。「人生は諦めちゃダメだ」ってことをね。

――欧州最優秀選手賞の投票で、君は2位のリオメル・メッシの14票に大差を付ける36票を獲得した。クリスチアーノ・ロナウドは3票。断トツでの受賞だったね。

リベリー 今回の結果がどうあれ、あの2人は世界最高の選手だ。俺がどんなに頑張っても、例えば彼らの決定力にはかなわない。俺は相手DFにドリブルで仕掛けて、最後はアシスト役に回るのが得意なタイプだ。その点で、メッシやロナウドとは違っている。自分でシュートを打つよりも味方にアシストをするほうが好きなんだ。豪快にシュートを打つのは確かに快感だけど、相手のDFを惑わせて、最後に味方へ「はい、どうぞ」ってラストパスを出すのも刺激的だからね。

――でも、話は変わるけど、2年前の君は“どん底”だったね。未成年者との買春事件や、南アフリカ・ワールドカップでの「選手対レイモン・ドメネク監督」の抗争騒動があって、君の評価は地に堕ちた。

リベリー 勘弁してくれよ。当時のことについては、もう話したくないんだ。

――すまない、聞き方が悪かったね。ああしたスキャンダルが連発した際にバイエルンが見せた反応について聞きたいんだ。フランス国内で徹底的に糾弾されていた君をウリ・ヘーネス会長は別荘に招き「どんなことになっても君を守るから」とかばってくれたそうだね。

リベリー ああ、会長は最後まで俺を擁護すると言ってくれた。本当にありがたかった。この恩は一生忘れない。

俺の今の成功はハインケスのおかげ

――アナーキー(無秩序)だったフランク・リベリーを、ディスツィプリン(規律)を守るフランク・リベリーに変革させたのはユップ・ハインケス前監督だ。彼のおかげで君は守備の大切さを学んだ。違うかい?

リベリー 俺ももう30歳。世間一般に言えば「一家の主」だ。これまでたくさんのことを経験してきた。今の俺に言えるのは、ハインケスって人は本当にすごい人物だってことさ。豪胆で、とことん信頼できるオヤジさんだ。ハインケスはチーム内の組織を隅から隅まで改善し、攻撃一辺倒のプレーこそがサッカーだと信じていた俺に“守備の意味”を教えてくれたんだ。俺の今の成功はハインケスのおかげでもある。

――ルイ・ファン・ハール元監督とは正反対の評価だね。

リベリー あの監督は確かに“サッカーの専門家”だったかもしれないけど、正直、まったく楽しくなかった。あいつが話すのは、1から10まで「規律とヒエラルキー」だけ。それに、いつも仏頂面で、俺はあいつの笑った顔を一度も見たことがない。選手との会話もゼロ。偉そうにするだけで、すべてが命令口調なんだ。おかげで俺は、サッカーをすることの喜びと楽しさをすっかり失ってしまった。あいつが辞めてくれてホッとしたよ。クビにするのが唯一の解決策だったんだ。

――選手のパフォーマンスは感情面に左右される、そういうことかな?

リベリー そのとおり! 例えば、監督にあいさつされるだけでも違うんだ。褒め言葉一つでも、軽いジョークでもいい。とにかくお互いが信頼感で結ばれていないと、肝心なところで頑張ろうって気にならないからね。

――そういう意味では、「ファン・ハールのために」とは、選手は絶対に思わないのかもしれないね。ところで、劇的な優勝を飾ったUEFAスーパーカップ(PK戦の末にチェルシーに勝利)の試合後、君はゴール裏のスタンドへと一直線に走り出し、ファンのマイクを借りて大騒ぎしたね。音頭を取って、サポーターのハートを更に熱くした。あんな光景は久しぶりに見たよ。

リベリー これまで俺を応援してくれたことへのお礼だよ。あの試合はプラハで開催されたのに、まるでバイエルンのホームゲームのようだった。チェルシーのメンバーも面食らったんじゃないかな。最後の最後までファンは俺たちを信じてくれた。だからこそ、ロスタイムに同点に追い付けたんだと思うし、PK戦に持ち込んでタイトルを勝ち取ることができた。すべて彼らの応援のおかげだ。

――同点弾に加えて、君はPKも成功させた。気持ちが高ぶったのはどっちだい?

リベリー 答えは「どちらでもない」だ。あの勝利は俺じゃなく、(ジョゼップ)グアルディオラ監督のものだからね。3冠達成後に就任したペップ(グアルディオラの愛称)にはプレッシャーもあったと思うけど、あの優勝でバイエルンでの初タイトルを獲得した。そういう意味でも、とても重要な試合だったんだ。同点弾を決めた後にピッチを半分も走り抜けたのは、ペップに「やったぜ、監督!」と伝えたかったからさ。彼は実に素晴らしい指導者だよ。

新監督に就任したグアルディオラの下、タイトル獲得に意気込むリベリー。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング1017号でチェック!

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