NAPLES, ITALY - JULY 29: Dries Mertens of SSC Napoli in action during the pre-season friendly match between SSC Napoli and Galatasaray at Stadio San Paolo on July 29, 2013 in Naples, Italy. (Photo by Paolo Bruno/Getty Images)
[ワールドサッカーキング0905号掲載]
ドリース・メルテンスが新天地に選んだのは大エースを失った“情熱の街”だった。ライバル、ユヴェントスとのスクデット争いやチャンピオンズリーグでの熾烈な戦いを経験する中で、ベルギー代表の点取り屋はいかなる飛翔を遂げるのだろうか──。

インタビュー・文=マヌエル・パルラート Interview and text by Manuel PARLATO
翻訳=高山 港 Translation by Minato TAKAYAMA
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images
地中海を望むナポリの街は今夏、例年にも増して活気に満ちている。2010年以来、絶対的エースとしてナポリの躍進を支えてきたエディンソン・カバーニはパリへと去った。しかし、セリエA得点王の代わりにクラブへ加わったのはゴンサロ・イグアイン、ペペ・レイナ、ホセ・カジェホンといったいずれ劣らぬ実力者たち。そして、彼らと並び大きな期待を背負ってスカイブルーのシャツに袖を通したのが、エールディヴィジで得点を量産してきたドリース・メルテンスだ。
PSV時代の2年間でリーグ戦37得点をマークし、ラファエル・ベニテス監督が獲得を熱望したというベルギー代表アタッカーは「まだセリエAのレベルを体感していないから」と前置きしつつ、「ゴールを決めるのが好きなんだ。2桁得点を記録してチームの勝利に貢献したい」と力強く語る。
王者ユヴェントスの牙城を崩してスクデットを獲得し、チャンピオンズリーグ(CL)で躍進を遂げるという大目標に向けて歩み出すナポリ。「僕のゴールで勝利を得られたなら、これほどうれしいことはない」。そう話すメルテンスが、ナポレターノ(ナポリ市民)を熱狂させる日は近い。
ユヴェントスを苦しめてやりたい
――まずはナポリの印象を聞かせてほしい。
メルテンス すごくいいチームだね。早く環境に溶け込んでチームの力になりたい。今のところ、スクデットの本命はユヴェントスだと言われているけど、彼らを苦しめてやりたいと思っているよ。
――イタリアのサッカーはオランダのサッカーと大きく異なるけど、適応できそう?
メルテンス 確かにイタリアとオランダではスタイルがかなり違う。でも適応するために準備をしてきたし、新しい環境に飛び込むことを恐れてはいないよ。最初は何も分からないし、知り合いもいない。習慣に戸惑うこともあるだろう。でもそういった違いに慣れていけると確信している。新しい文化を学び、刺激を受けることはいいことだしね。環境に適応してセリエAのような難しいリーグでも活躍できることを証明したい。
――イタリア語が話せないことを心配する声もあるけど。
メルテンス 現時点ではイタリア語が大きな問題だとは感じていない。ただ、イタリアでプレーする以上、イタリア語を学ぶのは当然のことだ。一日でも早く話せるように、毎日勉強しているよ。次回、インタビューを受ける時は、少しでもイタリア語で話したいと思っているから、期待していてほしいな!
――楽しみにしているよ。では、君のプレーの特徴を教えてくれるかな?
メルテンス 得点に絡むプレーが僕の持ち味だね。ゴールを決めるのが好きなんだ。得点力があることはPSV時代に示せたと思う。それに、アシスト役に回るのも悪くない。ナポリではゴールゲッターとしてだけでなく、アシスト役としてもチームに貢献したい。
――PSVの話が出たけど、オランダ時代の自身のプレーをどのように評価している?
メルテンス PSVでは2年間プレーして、1年目は21得点16アシスト、昨シーズンは16得点21アシストだった。自分としては満足できる結果を出せたと感じている。セリエAのレベルが高いことは百も承知だけど、昨シーズンに近い成績を残すことができたらいいと思っているよ。
――戦術的な話をしよう。ナポリではワントップにゴンサロ・イグアインが入り、君はその一列後ろでプレーするみたいだけど、左右どちらがやりやすい?
メルテンス 僕のベストポジションは左サイドだ。ただ、右サイドでも問題はないよ。実際、ここに来てからも何度か右サイドで練習したし、左右関係なくチームに貢献できると思っている。
――ナポリの街にはどんな印象を持っている?
メルテンス ナポリは想像していたとおりの素晴らしい街だ。気候は良いし、ナポレターノは陽気だし、もう最高だよ! 街中は少々、混沌としているけど(笑)、それもナポリらしさだと思う。あとは何と言っても料理が最高だね。ピザはもちろん、魚料理や肉料理も美味しくて、太ってしまいそうだよ。
――ナポリのファンの印象は?
メルテンス ここまで熱いファンは他にいないんじゃないかな。誰もがサッカーに情熱を注ぎ、選手に愛情を持っている。道を歩けば、ファンがサインを求めてやってきて、たちまち大騒動さ。2ショットの写真をせがみ、ハグしてくれるファンもいる。まるで自分がアイドルになったような気分だよ。
――ナポリへの移籍を決断した理由を、改めて教えてほしい。
メルテンス ベニテス監督を始め、フロントの全員が僕の獲得を強く望んでくれた。そして、自分の心に素直に従ったというのが一番の理由だ。僕はかなり前からナポリに興味を持っていた。周りにナポリのファンが多かったから、僕も自然にナポリを見るようになったんだ。ナポリの強さの秘訣は団結力にある。攻めるにしても守るにしても、コンパクトなサッカーをして、ピッチにいる全員が連動する。そんなナポリのスタイルが、僕は大好きなんだ。
国際レベルで通用する選手だと証明したい
――イタリアのサッカーについて、周囲からアドバイスは受けた?
メルテンス カリアリにいる(ラジャ)ナインゴランがいろいろ教えくれたよ。実は、ナポリが僕に興味を持っていると教えてくれたのも彼なんだ。僕のようなタイプはセリエAでもやっていけると言ってくれたよ。セリエAに来るようにと、彼が積極的に勧めてくれたのさ。
――ユヴェントスやミラン、インテルなど、セリエAには強豪がひしめいている。戦ってみたいクラブはどこ?
メルテンス すべて偉大なクラブだ。同時に、倒さなくてはならない相手でもある。ただ、僕たちが良いシーズンを送るためには強豪から勝利するだけでなく、中位や下位のチームからも確実に勝ち点を獲得しなければいけない。だから、すべての試合が重要になる。ただ、ファンは別だよね。みんなが僕にユーヴェ戦でゴールを決めてほしいと期待しているのは知っている。ナポリにとって、ユーヴェ戦での勝利は何よりも大事なことだからね。
――セリエAに加えてCLも待ち受けているけど、どんな目標を持っているのだろう?
メルテンス ヨーロッパリーグではプレーしたことがあるけれど、CLは今シーズンが初めてのチャレンジになる。欧州最高峰の舞台でプレーする日が待ち遠しいよ。現実的な目標を言えば、ベスト8には入りたいと思っている。
――君のキャリアにおいて、ナポリは終着点なのかな? それとも出発点?
メルテンス どの地点にいるかなんてまだ分からない。僕が言えるのは、単純に自分の力を試す良い機会だと思っているということさ。国際レベルで通用する選手だと証明したい。同時に、ベルギー代表でのポジションを守ることも重要だ。そのためにナポリで結果を出し、できればタイトルを獲得したい。
――なるほど。ではベニテス監督の印象を教えてもらえるかな。彼はリヴァプールでCL制覇を成し遂げるなど、勝者のメンタリティーを持った指揮官だ。
メルテンス うん、すごく偉大な監督だよ。世界中を見渡しても、現役屈指の指揮官の一人だ。彼については代表でチームメートの(エデン)アザールから「素晴らしい監督だ」と聞いていたし、実際に接してみてその言葉が間違いでないことはすぐに分かったよ。
――ベニテス監督は君に何を求めているんだろう? もう具体的にプレーの指示は受けているのかな?
メルテンス ベニテスは選手との対話を大切にする監督なんだ。何かある度に声を掛けてくれるし、気を使ってくれる。最近言われたのは、「攻撃は今までどおりでいい。守備にはもう少し気を配るように」ということだ。イタリアでは前線の選手でも高い守備意識が求められる。僕も彼に言われて以降、意識して練習に取り組んでいるよ。監督の期待に応えられるよう、ベストを尽くしていきたい。
――チームメートとの関係はどうだろう。最初に仲良くなった選手を教えてもらえるかな。
メルテンス みんながよくしてくれている。その中でも仲が良いのはロレンツォ・インシーニェかな。僕はイタリア語が話せないし、彼は英語が話せないから共通言語はない。でも、お互い身振り手振りのジェスチャーでコミュニケーションを取るうちに、仲が良くなったんだ。
――でも、インシーニェは君とポジションを争うライバルでもある。そこで問題は生まれたりしない?
メルテンス ライバルだなんて思っていないよ。彼は今シーズン、主に右サイドを担当している。僕は左サイドが本職だから、ロレンツォと同時にピッチに上がることだって十分に可能なんだ。問題なんて起こるわけないよ。
ナポリに加入したメルテンスが、退団したカバーニの穴に言及。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング0905号でチェック!