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アッレグリ(ミラン監督)「私はいかにしてバルサに勝利し、また、敗れ去ったのか?」

2013.05.27

MILAN, ITALY - FEBRUARY 03: Head coach Massimiliano Allegri of AC Milan gestures during the Serie A match between AC Milan and Udinese Calcio at San Siro Stadium on February 3, 2013 in Milan, Italy. (Photo by Claudio Villa/Getty Images)

ワールドサッカーキング0606号(No.256)掲載
2-0の完勝と、0-4の完敗。久しくサッカー界に君臨するバルセロナを相手に、天国と地獄の両方を見るという貴重な経験を味わった。“史上最強”とも称されるバルセロナ戦における勝因と敗因には、現代サッカーの今後の流れを読み解くヒントが隠されている。

AC Milan v Udinese Calcio - Serie A

インタビュー・文=ジョヴァンニ・バッティスタ・オリヴェーロ、ファビアーナ・デッラ・ヴァッレ 翻訳=小川光生 写真=ゲッティ イメージズ

チャビやイニエスタの危険度をある程度制限することはできる

──チャンピオンズリーグのバルセロナ戦について聞かせてください。“史上最強”とも称される相手でしたが、どんなスカウティングを行ったのですか?

アッレグリ 彼らがどんなサッカーをしてくるかがある程度予想できるからこそ、逆に難しい面があった。分析できる要素も多かったが、逆にバルサには秘密がないというのかな。結局のところ、彼らのパスサッカーを封じ込み、反撃の糸口になるカウンターの起点を作り出すための適切な対策を講じることは容易ではないのだよ。もちろん、彼らのゲームはかなりチェックしたし、そこに昨シーズンの実際の対戦で得た知識を加味しながら、最善の対抗策を模索し続けたがね。

──バルサの秘密のないサッカーとは、つまり、「個々の高いテクニックを武器に細かいパスを多用し、ボールの支配率を高めるサッカー」ということでしょうか?

アッレグリ バルサのポゼッションサッカーを支えているのが、プレーヤーのハイレベルな個人技とチームのサッカー哲学であることは、今さら述べるまでもない。彼らと戦う時、本当に厄介なのは、むしろ個人技の高さや抜群のスピードのほうなんだ。(リオネル)メッシ、チャビ、(アンドレス)イニエスタなどは、キープしているボールを一瞬のうちに危険な縦パスに変える力を持っている。

──最も注意を必要としたのは?

アッレグリ メッシと答えるのは簡単だろう。ただ、バルサは、一人を封じ込めても、あまり意味がないチームの典型だと思う。ボールを巧みに操れる選手ばかりだから、一人でもフリーにすると、それが決定的な痛手につながる。だから、一人を潰すことにではなく、彼らのプレーシステムを狂わせることに神経を注ぐほうが賢明なのだよ。実際、第1戦では、それがうまく機能した。試合前に研究していたものに近い戦い方ができたと自負している。

──第1戦は2─0で、完勝とも言っていい結果でした。彼らのパス回しを阻止するために具体的にはどんな策を講じたのですか?

アッレグリ バルサの特長を消す最善策は、今のところ、彼らのパスコースをできる限り“汚す”ことしかない。実際、パスコースを遮断することにより、彼らに有効なスペース、危険なプレーへのきっかけを与えることを防ぐことができたと思う。

──第1戦の出場選手で最も多くボールに触れたのは151回のチャビで、2位は119回のイニエスタでした。

アッレグリ 2人ともバルサの司令塔だ。バルサのスタイルを考えた時、この2人にボールが集まるのは自然なことだ。問題となるのは彼らに「どれだけ多くボールに触れさせたか」ではなく、「どれだけ多く危険なプレーをさせたか」のほうだ。チャビやイニエスタをバルサのシステムの外にはじき出し、ボールに触れさせないようにすることなど不可能と言っていい。ただ、彼らの危険度をある程度制限することはできる。いや、むしろ「それしかできない」という表現のほうが正しいかもしれないな。

──では、0─4に終わった第2戦の話を。試合前、頭に描いていたプランは?

アッレグリ 基本的には第1戦と同じだよ。少なくとも「2点のアドバンテージを守り抜こう」などという考えはなかった。第1戦同様に敵に有効なスペースを与えないこと、そして、隙を見て強力なカウンターで相手ゴールを脅かすことの2つだった。

──開始早々、メッシに先制点を奪われた時にはどんなことを考えましたか?
アッレグリ そりゃ、もちろん「決めるならもうちょっと後にしてほしい」と思ったよ(苦笑)。冗談はともかく、あれほど素晴らしいゴールを決められたら、正直、どうしようもない……。早い時間帯のゴールで敵が勢いづくことは、もちろん分かっていた。ただ、反撃のチャンスはあると思っていたよ。実際、38分にはポストをたたく(エムバイェ)ニアンの惜しいシュートがあった。メッシの2点目が生まれたのはその直後のことで……。

──第1戦と比べて、メッシは別人のようでしたか?

アッレグリ 別物という観点から言えば、メッシだけでなくバルサ自体が第1戦とは全く違うものになっていたと言うべきだろう。恐らく、我々も第1戦とは違っていたはずだ。ただ、我々の非を責めるより、彼らのパフォーマンスを褒めるべきだと思う。

──敗退したのは運がなかったからだと思いますか? それとも何かが機能しなかったからだと?

アッレグリ 両方だろうね。私個人は、敗戦を運のせいにするのは好きではない。特に0─4の完敗を喫した後に、運のせいにしても仕方がないだろう。いずれにせよ、第2戦で試合の流れをより正確につかんでいたのは、やはりバルサだった。

──最後に、日本サッカーについて質問させてください。今の日本サッカーの著しい躍進については?

アッレグリ アルベルト・ザッケローニに率いられた日本代表の好成績を見れば、その成長ぶりは明白だろう。実力のある選手が続々とヨーロッパにやって来て、しかも結果を残している。今後更なる躍進が期待できるね。

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