［Jリーグサッカーキング5月号 掲載］
その一方で、本来中核となるべき20代半ばの選手が全く在籍していないという現状もある。だが、大きな世代間ギャップを抱えるチームにおいて、期待の若手選手が台頭してきている点は見逃せない。彼らの成長がギャップを埋め、チームをさらなる高みに押し上げる。今シーズンの開幕スタメンを飾った田口泰士と牟田雄祐、さらに急成長株と称される田鍋陵太のトリオに今シーズンに懸ける思いを語り合ってもらった。
インタビュー・文＝宮崎厚志（中日スポーツ） 写真＝兼子愼一郎
まず、それぞれのチーム内でのキャラクターについて聞きましょうか。
田鍋 いじられキャラっすね。年上の人にはよくいじられますけど……まあ全般にいじられてますね。
田口 僕もいじられキャラっすよ。ね？
牟田＆田鍋 え!?
牟田 僕はまじめキャラで売っていこうかと。
田口 こいつ、まじめぶってるんすよ。確かにサッカーに対してはまじめなんだけど。こないだもトゥさん（田中マルクス闘莉王）に言われたことを、練習が終わってすぐにメモってた。大事だよね。俺らはそういうことはしてないけど。
田鍋 メモはしないですね。
田口 お前は文字、書けないもんな。
田鍋 書けますって！
牟田 その時はビルドアップのコツとかを教えてもらったんで、とにかくすぐに紙をもらって、メモをして……。
サッカーノートも作ってるんですか？
牟田 作ってはいないですね。でもいろいろ気になったことは書いてますよ。
田口 まじめだね!!
では、二人から見た田口選手は？
田鍋 僕にとっては、すごくいじってくる先輩です。
田口 それだけ!?
田鍋 プライベートではご飯に連れていってくれますね。サッカーでもいろいろアドバイスしてくれることもあるし、最近一緒にいることが多いかも。
田口 よく面倒見てますよ（笑）。
牟田 コイツ、年齢はタメなのに、上から目線なんですよね。むしろ俺のほうが先に生まれてるんですよ。早生まれだから。それが気にくわないっす。
田口 俺とイソ（磯村亮太）と本多（勇喜）が同い年の早生まれ組なんで、コイツをちょっと仲間外れにしてて。なぜか偉そうに口をきいてます。
牟田 俺のほうが早く生まれてるのに。
田口 そうだけど、人数で言ったらこっちのほうが上だから（笑）。
牟田 そういう数で勝負みたいなところが子供なんですよ、91年生まれは……。
かなり狭いところで世代間闘争をしてますね（笑）。ちなみに今回の取材は世代間の差がテーマの一つなんですが、チームの年齢構成で気付いていることはありますか？
田鍋 若手とベテランの間が結構空いていますよね。
正解です。
田口 それ、俺は去年あたりから気付いてました。
ここで年齢分布図を見てみましょうか。
牟田 ヤキモフスキーって学年は1つ上じゃないですか？ 早生まれですよね？
田口 ダニルソンがいなかったら、俺たちのすぐ上はズミさん（小川佳純）たちなんだよ。
田鍋 すごいなー。
このデータから思うことはありますか？
牟田 22歳から上がすごく空いているんで、自分は新加入ですけど……。
田口 うん。
牟田 そういう間に入って……。
田口 うん。
牟田 まだそういうところまではできてないですけど……。
田口 うん。
牟田 自分自身も……っていうか、うんうん言うなよ！
田口 聞こえてた？
牟田 むっちゃ聞こえてたわ！ 話を戻しますけど、そういうつなぎ役にならないといけないとは思いますね。
田口 牟田が言ったとおりですね。俺たちの世代が間を詰めるような役割を果たして、もっと下の陵太たちの世代もしっかりやるようになって、積極的に絡めるようになればいいとは思います。
日頃から年上の人と絡もうと意識をしていますか？
田口 どうですかね。今は全然意識してないですけど、昨シーズンの始めくらいはちょっと意識してましたね。クラブの人からも「そういうのが大事だよ」って言われてましたし。
上の年代の方々たちからはどんな影響を受けていますか？
田口 僕は（中村）直志さんに言われたことが心に残ってますね。練習でうまくいかなかった時に「それを振り返っても意味ないし、今日は今日で、明日は明日で練習あるし、あまり気にするな」と。何気ない一言かもしれないですけど、僕にとっては大きかった。以前は結構気にしてたんで、直志さんに言われて前向きになれました。
牟田 僕は練習や試合で「こうしたほうがいい」と言われる毎日です。大学では縦パスを入れたらそれだけでほめられてたんですけど、トゥさんには「もっと空いた時に入れろ」と言われて、プロは違うなと思いました。
田鍋 最近、試合や紅白戦でズミさんに守備のやり方とか、（田中）隼磨さんとの連携の取り方とかについて、よく言われるんですよ。他にもいろいろな人にアドバイスをもらって、昨シーズンより考えてプレーできるようになっているとは思います。
今年はチャンスだと感じていますか？
田鍋 それは感じていますね。キャンプでもアピールできたと思ってますし。
牟田 僕は開幕戦でチャンスをもらったのに、硬くなっていいプレーが出せなかった。でも、開幕戦で終わりじゃないんで、これからが勝負だと思います。
昨シーズンの後半にチャンスをつかんだ田口選手は監督からの信頼も増していますね。
田口 自分で強い気持ちと責任感を持ってやらないと、試合に出られなくなると思っています。自分が中心というくらいの気持ちを持ってやっていけば、それがプレーに表れると思いますから。
今年から若手だけの２部練習も始まりました。世代間というより若手同士のほうが競争意識が激しいのでしょうか？
田鍋 うちらの世代は必死ですよ、ホント。ほとんど試合に出られないまま３年目になるって、ギリギリのラインだと思うんです。２年目のうちにしっかりアピールしておかないと。だから、若手だけの２部練が始まるのは、すごくいいことだと思います。
田口 試合に出てない頃の練習量が足りないなと思ってた部分はありますね。でも、試合に出るようになって感じたのは、出てる人にとってはちょうどいい量だってこと。前までは練習試合も少なかったけど、公式戦に出ている人にとっては問題ないと思う。
牟田 大学時代と比べたら、走りの量は全然違いますね。特に福岡大はかなり走るんで。グランパスは練習時間が短いから、しっかり集中して緊張感を持ってやることが必要だし、それでうまくなれると思いました。
若手世代から一緒に突き上げていこうという動きはありますか？
田鍋 やっぱりベテランっていうか、試合に出ている人たちには負けないようにしたいと思っていますよ。
田口 お前ら、いろいろやったりしてるよな。オフ期間の自主トレとか。
牟田 本当に間が空いているんで、自覚を持ってやらなきゃいけない世代だっていう気持ちはどうしても出てきますね。
田口 早生まれだけど、学年的には23歳の年だからね。普通に考えたらバリバリやってないとおかしい。
牟田選手は大卒の新加入ですが、同年代の高卒やユース昇格組との差は感じていますか？
牟田 大学で４年間やったことは遠回りじゃないとはよく言われますけど、実際に泰士とはプロでの経験が４年も違う。今は大卒で活躍してる選手も多いですけど、自分はそこは大きな差かなと感じますね。プロで長くやる分、慣れもありますし、普段の練習からレベルが全然違うんで。
田口 慣れは絶対あるよね。でも、仮に俺が大学へ４年間通って、今年グランパスに入って、開幕スタメンを取れるとは思えない。そう考えると牟田は本当にすごいと思うし、プロで１年やったら普通に中心で出られるようになると思う。
２年目の田鍋選手は１年目との違いをどう感じていますか？
田鍋 全然違いますね。１年目は戦術を理解するのに戸惑っていた時期もありましたし、なかなか自分を出せなかったので。２年目になって、言われることも分かるようになりました。まだマックス慣れたわけじゃないけど、徐々に慣れてきましたね。
田口＆牟田 マックスって（笑）。
田口 でも、２年目でこれだけできたらすごいと思うよ。自分の２年目はメンバーに入るスキがなくて、ケガ人や出場停止が出て、ようやく入れるくらいだったから。そういう意味ではチャンスをもらえるだけのプレーはしていると思う。
３人はピッチ外でも一緒にいますか？
田口 田鍋とはよく二人でいますよ。牟田は週イチくらいかな。
田鍋 牟田君とは寮で絡んでるというか会ってます。でも、寮ではみんな自分の部屋で何かやってるんですよね。ご飯の時間も特に合わせたりしないし……。
田口 夜、何してんの、今？
田鍋 寝てる？ いつも気になってるんだよね。牟田くんのプライベート。
牟田 サッカーのＤＶＤを見て……。
田口 うそつけ！
牟田 でも（望月）嶺臣とＪリーグ版のウイイレをやったりしてるかな。昨日は陵太と（田中）輝希を使ったよ。
ピッチの中では、今年のそれぞれのプレーをどう見ていますか？
田鍋 泰士くんは安定っす。守備も攻撃も、すべて安定してます。
牟田 本当に堂々とやっていますよ。自信がプレーに出ていると思いますし、開幕戦でも助けられたりしました。練習でもアドバイスをもらって。開幕戦の前に「楽しもうな」って二人で話してたんですけど……
田口 全然楽しめてなかったね（笑）。
牟田 ようやく楽しめるようになってきたなって思ったところで「ピピーッ！」って笛が鳴ったら、第４審判の交代ボードに「３」って出てて……。
田口 個人的には波がなくなってきたって言われるのはうれしいですけど、自分のポジションにはそういうプレーが求められていると思うし、そこでやらなければ意味がないんで。
牟田 陵太はキャンプから一緒にやってて思ったんだけど、パスを出したら仕掛けるし、クロスも上げてくれるよね。
田口 積極性が増したんじゃない？ 自分でボールを持って仕掛けていくし、シュートも打つようになった。練習試合でも「全部一人で行け！」って言ってたんですよ。行けるから言ってるのに、仕掛けない時がある。自信を持っていけばいいんだよ！ それなのに行かない。全部仕掛ければいいのにって思いますよ。足の速さは自分にはないものだから、うらやましい。ボールを持ったら全部仕掛けるつもりでいてほしい。
田鍋 いやあ……時と場合っすよ……。
田口・牟田 うわ、ひよった！（笑）
田口 縦を警戒されたら、中に切り込んでシュート打てるでしょ。
田鍋 確かに仕掛けられるなと思った時でも、たまに仕掛けないことがあるんですよ。迷っちゃって……。前で取られてもそんなにリスクはないんですけどね。これからはもっと積極的に行きます！
では、牟田選手には？
田口・田鍋 ……。
牟田 ん？ 何もない？
田口 ちょっと待って！ 今、考えてるから（笑）。
田鍋 （笑）。牟田くんは積極性がありますよね。１年目なのにしっかり指示を出して、後ろからの声でみんなを動かしてる。そういうことは１年目の僕にはなかったんで。
田口 確かに積極性はあるよね。それは本当に思ってた。ちゃんと後ろから声を出すし。開幕戦にスタメンで試合に出られてることが本当にすごいと思うし、試合でも練習でも自分の意見をちゃんと言うことができてるから。
最後に、今シーズンの目標を。
田鍋 まずはスタメンで出ることが一番の目標です。それで、もっとどん欲になって、公式戦で点を取りたいです。
牟田 自分もスタメンで試合に出ることが目標ですし、本当にチームメートから信頼される選手になりたいです。何か二人に言いたいことは？
田鍋 試合や練習はもちろんですけど、もうすぐ二十歳なんで、プライベートもよろしくお願いします。
田口 任せてください（笑）。
では、田口選手の目標をお願いします。
田口 今年は昨シーズンの経験を生かして、プレーの波がないようにしたい。リーグ戦全試合に出場したいし、やっぱりチームの優勝が一番の目標なので、チームのためにっていう気持ちでプレーしたいと思っています。
若手の活躍がカギになると思います。
田口 まじめな話になりますけど、本当に俺たちの世代がしっかりやっていかないとダメですよね。牟田とか本多とか同い年が入ってきてうれしいし、もっと一緒に頑張ろうって思う。同級生と一緒にプレーしたいって気持ちもあるし。自分もしっかり出られるように頑張るし、牟田も試合に出続けられる実力の持ち主なんで。陵太とも一緒にＪのピッチでやりたい。自分もいつ試合に出られなくなるか分からないけど、俺たちでチームの世代ギャップを埋める活躍をできるように、みんなで頑張っていかないと。
牟田 バッチリじゃん……。
田鍋 完璧ですね。
田口 もうプロ５年目だからね！（笑）