2013.01.21

ランパード「2002年のW杯に出場できなかったことが大きな転機になった」

ワールドサッカーキング』2007年08号より一部再掲
「インタビュー・ライブラリー」では、過去にワールドサッカーキングやカルチョ2002などで掲載した選手や監督のインタビューを改めて紹介。懐かしい写真とともに、お楽しみ下さい。
ランパード

ユース時代の転機は、17歳の時にスウォンジーというチームにレンタル移籍したことかな

まずは、あなたがサッカーを始めたきっかけを教えてください。

ランパード 僕にとって、サッカーは小さい頃からすごく身近な存在だった。なぜって、父のフランク・シニアはウェストハムでプロ選手として活躍していたし、叔父のハリー・レドナップもいとこのジェイミー・レドナップもプロ選手だったからね。当然のように家の中にはいつもボールが転がっていたし、近所の広場や練習場で毎日のようにボールを蹴っていたよ。サッカーを始めたのは自然の成り行きだった、という感じだね。

現役のプロ選手に囲まれた環境にあって、最も影響を受けた人物は?

ランパード やっぱり父だね。僕にとっては教科書みたいな存在だよ。

ということは、当然、お父さんが在籍していたウェストハムのファンだった?

ランパード そうだね。ウェストハムを応援していたよ。特にFWのトニー・コティーが好きだった。それと、ポール・ガスコインのプレーが大好きだった。テレビで見るだけですごく興奮したし、何度もまねしたことを覚えている。もちろん、僕にはガッザ(ガスコインの愛称)ほどのテクニックはなかったんだけど(笑)。

ウェストハムの下部組織に入ったのもごく自然の流れだったんですね。

ランパード そのとおり。1994年に練習生として契約を結んだんだ。まあ、ウェストハムは以前から僕のことを知り尽くしていたし、何も問題はなかったよ。それから1年くらいたってからプロ契約を結んだんだ。

ユース時代、サッカーと勉強の両立はできましたか?

ランパード 大変だったけど、両方ともちゃんとやっていたよ。父が“教育パパ”で、「勉強も手を抜かないように」っていつも言われていたしね。僕はGCSE試験(編集部注:16歳の時に受ける全国統一試験。この試験を受けると義務教育が終了する)でも結構良い成績を残したんだ。やっぱり、サッカーで成功できる人なんてほんの一握りだし、いくらサッカーが大好きでも、勉強も頑張って続けるべきだと思うよ。

ユース時代の一番の思い出は?

ランパード 当時はサッカーのことしか頭になかった。思い出とは違うけど、サッカーを通じて生涯の友人ができたことはすごく幸せなことだと思う。同じ目標を持つチームメートとともに戦ったり、時には選手同士でふざけ合ったりすることは、他では味わえない貴重な経験だと思うんだ。

ウェストハムユースは育成システムが有名ですね。

ランパード ウェストハムの育成システムは本当に素晴らしい。実際、多くの一流選手を輩出しているだろう? 僕がいた頃は、今マンチェスター・ユナイテッドに所属しているリオ・ファーディナンドやチェルシーでプレーしているジョー・コールがいたんだ。

ユース時代に心掛けていたことは?

ランパード 向上心を失わないように、常に高い目標を設定していたよ。だから、自分自身にもすごく厳しく接したね。周囲の人は気づかなかったかもしれないけど、僕は自分がプロになること、それも一流の選手になることを一度も疑ったことはない。実際、ウェストハムのユース時代から今までずっと、僕は一歩一歩着実に前進してきたんだ。もちろん、今でも自分の可能性をもっと広げられると信じているよ。

プロになる前、子供の頃に挫折を味わったことはありますか?

ランパード 実は子供の頃にぜん息を患っていたんだ。だから、試合中に呼吸が乱れて途中交代することも多かった。つらかったけど、今の健康な僕を見て、サッカー少年たちに勇気を与えられたらうれしいね。

ユース時代に転機になったことは?

ランパード 17歳の時にスウォンジーというチームにレンタル移籍したことかな。とにかく学ぶことが多かったね。わずか2カ月間で、僕は全く別人に成長したと思う。簡単に言えば、サッカーの本質を知ったんだ。

具体的には?

ランパード スウォンジーは3部の最下位に低迷していて、すべての試合が残留を懸けた重要なゲームだった。観客は常に2000人くらいで、いつも雨風が強くてすごく寒かった記憶がある。僕にとっては毎日が驚きの連続だったよ。僕はあそこで、サッカーの難しさや一つひとつのプレーの重要性を学んだんだ。

その2カ月間が、今のあなたを形成しているんですね。

ランパード そのとおり。僕はあの移籍で大きく成長した。だから、若手選手がレンタル移籍することには大賛成だよ。もし、若手でレンタル移籍をためらっている選手がいたら、とにかく試してみるようにアドバイスしたい。チェルシーでは今シーズンも多くの選手がレンタル移籍から戻ってきたけど、実際みんなたくましくなって帰ってきているよ。

ウェストハムでプロデビューを果たした時は、どんな気持ちでしたか?

ランパード 物心付いた頃からプロになることが夢だったから、もちろん最高の気分だったよ。サッカーは僕の人生そのものだし、それを職業にできることを本当に幸運に思う。デビュー戦の相手はコヴェントリー・シティー。確か初得点を記録した時の相手はバーンズリーで、今思うと恥ずかしいんだけど、得点後にリオ・ファーディナンドとダンスを踊っちゃったんだ(笑)。

トップレベルのMFになりたいのなら、攻撃でも守備でもスペシャリストを目指すべきだ

プロになってから影響された選手は?

ランパード ジネディーヌ・ジダンのプレーにはいつも目を奪われたよ。チェルシーに加入したばかりの頃は、ジャンフランコ・ゾラのテクニックをずっと観察していたこともあった。彼のプレーにはすごく大きな刺激を受けたね。

プロになってからの挫折は?

ランパード もちろんあったよ。キャリアをスタートさせたばかりの頃に骨折して、すごくつらい思いをしたね。それから、当時、僕はウェストハムのサポーターから非難されていた。僕が試合に出ていたのは、父がアシスタントコーチで、叔父のハリー・レドナップが監督だからだと思われていたんだ。味方であるはずのサポーターからブーイングを受けたことで、正直かなり傷付いたね。でも、僕は自分を信じてプレーし続けることで、その挫折を乗り越えたんだ。

スウォンジーへのレンタル移籍を経て、ウェストハムで6シーズンプレーした後は01年にチェルシーへの移籍を果たしました。その後の活躍は誰もが知るところだと思います。世界トップレベルのMFとして、最近のサッカーをどう分析していますか?

ランパード 最も分かりやすい特徴は、攻めていない時に得点が生まれることがある、ということだね。優れた選手は、ボールを奪取してから、相手が守備の組織を整える前に決定的なパスでチャンスを演出することができるんだ。だから、攻めているチームが突然ボールを失って、攻めていなかったはずのチームが得点するケースがある。現代のサッカー選手にとって、パス精度の高さは絶対条件だよ。それに、その能力を生かすためには、試合の流れを読む賢さも必要だと思う。ボールを受ける前に周囲の状況をすべて把握しておかないと、簡単にボールを奪われてしまうんだ。

イングランド代表について聞かせてください。招集され始めた頃は、なかなかレギュラーに定着できない日々が続きました。

ランパード 確かに、最初は代表チームのレギュラーの座がすごく遠く感じたよ。何しろ、初招集から次に招集されるまで、1年くらいのブランクがあったからね。当時は、自分が監督の気まぐれで招集された選手になってしまうんじゃないかと心配したよ。それに、当時のレギュラーはポール・スコールズやデイヴィッド・ベッカム、スティーヴン・ジェラードといったそうそうたるメンバーだった。そこに割って入るためには、かなりの実力が必要だからね。

代表デビュー戦は相当緊張したのでは?

ランパード いや、そうでもなかったよ。サンダーランドの本拠地で開催されたベルギー戦だったかな。とても誇らしい気分だった。やっぱり、代表チームでプレーすることは、すべてのサッカー選手にとって夢だと思うんだ。これ以上最高な気分はないよ。

レギュラー定着のきっかけとなったのは?

ランパード 今思うと、2002年のワールドカップに出場できなかったことが大きな転機になったと思う。代表から外れて二度と味わいたくないほどつらい思いをしたけど、W杯期間中にバカンスに出掛けて、そこで自分を見つめ直したんだ。代表落選を肯定的に受け止めた、と言うべきかな。そこで、決して卑屈にならず、必死に練習して、絶対に代表でレギュラーになってやるという強い気持ちを持つことができた。そして、W杯終了後にその夢が叶ったんだ。

では最後に。あなたのようなプロ選手を目指す子供たちにアドバイスを。

ランパード とにかく、練習、練習、練習だよ。もしトップレベルのMFになりたいのなら、攻撃でも守備でもスペシャリストを目指すべきだと思う。現代のサッカー界で生き残るためには、片方だけじゃダメなんだ。パトリック・ヴィエラやロイ・キーン、それにジェラードを見て分かるとおり、中盤で活躍する選手は、ピッチのどこにいても最大限の能力を発揮するものなんだよ。

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